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月末恒例ドンタコスゥコ商会ですねぇ その2

 結局この日の夜、おもてなし酒場においてヴィヴィランテスを囲んでの大宴会を開催していったドンタコスゥコ商会の皆さん。
「と、いうわけでですねぇ、そのブーケの花束を是非ともお譲り頂きたく」
「だめよぉ、これはアタシが手に入れた物なんだからぁ」
「まぁそう言わずに、ささ、もう一杯」
「お酒はもらうけど、アタシってばザルだからぁ、酔いつぶれさせようたって無駄よぉ」
「ザルっぷりなら負ける気はないんですけどねぇ……とにかく、酔いつぶれたらその首のブーケを置いていってもらうんですからねぇ」
 昨夜、僕が接待を兼ねて飲み会に参加していた時には、そんな感じで勝つ気満々だったドンタコスゥコなんですけど……

 夜半前には会場を離れ、寝室でスアとピーしてピーしたあと熟睡した僕は、いつものように夜明前に目を覚ましてコンビニおもてなしの厨房へと移動していきました。
 で、まぁ、おもてなし酒場の様子が少し気になったので覗きにいってみたのですが、

 ……え~……酒場の中央にですね、なんかイスがピラミッドか?ってくらい高く積み上げられていまして、その頂点にあるイスの上に、完全に酔いつぶれているドンタコスゥコが座らされていました。
 で、そのイスのピラミッドの周囲には、ドンタコスゥコ商会の皆さんが死屍累々といった感じで折り重なるようにして酔いつぶれています。
「何よぉ、『ザルっぷりなら負けない』とか言っときながらぁ、ちょっと情けないんじゃなぁい?」
 そんな一行を、ヴィヴィランテスは樽に入れたスアビールを飲み干しながら見つめていました。
 ……見たところ、まったく酔った感じはありません。
 で、そんなヴィヴィランテスは、僕がおもてなし酒場を覗きに来たのに気がつくと、
「売り上げに貢献しておいたわよぉ。アタシの酒代はドンちゃんが払ってくれるから」
 そう言いながらイスのピラミッドの頂点で完全に意識を失っているドンタコスゥコを見つめていました。
「……ま、最後まで諦めずに挑んできたその気概だけは褒めてあげるわぁ」
 ヴィヴィランテスは、そう言いながら笑っていました。
 ……この光景を見た僕は、何があってもヴィヴィランテスとは飲み比べはしないぞ、と心に固く誓いました。

◇◇

 その後、厨房に戻った僕は、すでに出勤して作業に取りかかっていた魔王ビナスさん、テンテンコウ♂らとともにいつものお弁当作成作業に入っていきました。
 今日から、僕が元いた世界で言うところのおせち料理にあたるオネの弁当の予約分の引き渡しも始まりますので、その準備もしておかないといけません。

 で、それ加えてパルマ聖祭ケーキの人気がいまだにすごいんですよね。
 すでにパルマ聖祭が終わったというのに、
「あのケーキはもう販売しないのか?」
「あのケーキをまた買いたいんだけど」
 そういった要望がコンビニおもてなし全店に寄せられ続けている次第です。
 で、それを受けてコンビニおもてなしでは、パルマ聖祭ケーキの名前をパルマケーキに改めて、毎日各店舗個数限定で販売することにしています。
 毎日本店で作成可能な個数しか販売しないようにしていますので、オトの街のラテスさん達に手伝ってもらわなくても問題ありません。

 そんなわけで、今日のコンビニおもてなし本店前にも行列が出来ているのですが、大半はこの個数限定販売のパルマケーキ目当ての皆さんなんですよね。
 で、あまりお待たせするのもあれなので、完成したパルマケーキから随時販売していっています。
 販売は、ルービアスに任せているのですが、パルマ聖祭以後、この作業に従事しているルービアスは
「おはようございます皆様。では今日のパルマケーキの販売を開始いたしますですよ」
 と、まぁ、すっかり手慣れた様子で販売を開始していました。
 中には
「あ、私はオネの弁当も予約してたんだけど……」
 そう言う方もやはりおられるわけでして……で、そういう方のためにルービアスの隣にブリリアンが立っていてですね、
「あ、オネの弁当はこちらでお渡ししますよ」
 そう言って自分の方へお客さんを誘導して、そこで手渡している次第です。
 2人とも、商品は腰に付けている魔法袋の中に保管していますので、2人の周囲がパルマケーキとオネの弁当で山積みなんてことにはなっていないんですよね。
 ほんと、この魔法袋って便利です。
 中に相当量入れることが出来て、しかも中に入れている間は時間が停止していて、腐ったり痛んだりもしないんですからね。
 そんな便利な魔法袋ですけど、当然作成するのには魔法使役者がですね、相当な魔力を消費しながら作成する必要があるわけです。
 上級魔法使いでも魔法袋を1個作成するだけで、2,3日は他の魔法が使用出来なくなるくらい体内魔力を消費してしまうらしいんですよね。
 ですので、当然この魔法袋って、すごく高価なんですよ……普通は。

 ですが、その魔法袋をコンビニおもてなしで作成しているのはスアです。
 伝説の魔法使いと言われているスアです。
 僕の最愛の妻であるスアです。
 いつも愛らしくて可愛くて、夜の顔はちょっと違う……
「……あの……嬉しいけど……は、恥ずかしい、の」
「え?まだ褒めたりないんだけど?」
 え~、まだスアを賞賛する言葉が全然足りていませんが、本人がわざわざ転移してきてスアストップを入れてきましたので、それはここまでにしておいて……
 まぁ、とにかくスアはこの魔法袋を、本人曰く
「……一日100個つくっても大丈夫、よ」
 そう言って笑っているんですよね。
 実際、以前ドンタコスゥコに200個の魔法袋の作成を頼まれた事があったんですけど、それをわずか1時間で作り上げたスアは、その後涼しい顔をして魔法薬を調合していましたからね……同時に、店内にアナザーボディを展開して店の商品補充作業を手伝ってくれながら……

 そんなわけで、販売分は、他の魔法使いの販売価格に合わせて、値段その物は高めに設定してある魔法袋ですけど、店で使用する分はふんだんに準備出来ているわけです。
 なんか、この魔法袋があるのを当たり前に感じてしまう事があるんですけど、ホントスアへの感謝は忘れてはいけないわけです、はい。

 で、そんな魔法袋を駆使しつつルービアスとブリリアンが頑張ってくれたおかげで、今日も開店までに店の前に出来ていた行列はすべて解消されました。
 2号店にも、すでにシャルンエッセンス達が向かっていましたので、同じように行列を解消させている頃合いだと思います。
 3号店と4号店にもそれなりに行列は出来ますけど、どちらも本店と2号店ほどではないのでレジで十分対処可能です。

 そんなわけで、開店前に一仕事終えたルービアスとブリリアンに、僕は
「お疲れ様、おかげで今日も助かったよ」
 そう言いながら熱い紅茶を煎れて上げました。
 そんな僕に、2人は
「いえいえいえ、これもお仕事ですもの。おまかせあれですよ」
「店長補佐として、スア様の弟子としてこれくらい当然です」
 そんな言葉を返してくれながら、紅茶を美味しそうに飲んでいました。

 で、そんな店内に、ドンタコスゥコがやってきました。
「ふ……あのお馬さん……なかなかの猛者でしたですね、今回の所は紙一重で、このドンタコスゥコが負けたことにしておいてやるですよ……」
 と、強がっていますが、その顔面蒼白でひどい二日酔いなのは誰の目にも明らかです。

 で

 そんなドンタコスゥコの前に、おもてなし商会のファラさんが立ちはだかりました。
 転移ドアをくぐって、ちょうどティーケー海岸店からやってきたとこなんですよね……ドンタコスゥコ商会と卸売りの値段交渉をするために。
「あら、ドンタコスゥコさん。そんな状態で私に勝てるとでもお思いで?」
「ふふふ……ラスト5秒の逆転ファイターを舐めてもらっては困るのですよ」
 なんか、そんな会話を交わしながら早くも火花を散らしている2人。

 さ、月末恒例ファラさんVSドンタコスゥコの卸売り値段交渉時間無制限一本勝負の幕が切って落とされようとしています、はい。

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