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コンビニおもてなしの忘年会 その2

 各店の店長達に連絡を回し、どうにか全店員の予定を確認しました。

 基本的にコンビニおもてなしは週末の休日はお休みなんですが、

・曜日や時間などお構いなしで来店してくる魔法使い達を相手にしている3号店は年中無休の24時間中
・休日だからこそ客で賑わう温泉街にある4号店は休日営業翌日休み

 この2店舗だけは独自のシステムで営業しているため、そこはシフトを上手く組んでもらい、時間差交代することで全員が忘年会に参加出来るように配慮してもらうことにしています。

 そんなわけで、忘年会の朝が来ました。
 忘年会そのものは昼から開始なのですが、せっかく年中泳げるティーケー海岸に行くわけですので、朝一から出発する組は、海水浴か海釣りを満喫出来ることになっています。

 で、我が家は当然全員朝一出発です。

 店の厨房脇の壁にズラッと並んでいる転移ドアの中に、おもてなし商会ティーケー海岸店への扉がありますので、そこをくぐって出発になります。
 後からやってきた参加者のみんなが迷わないように、転移ドアのところにはスアのアナザーボディを案内係としておいています。
 スアの分身とも言えるこのアナザーボディ達ですが、言葉を発する事が出来ませんが店の商品補充や混雑した際のお客様の誘導などでいつも活躍してくれています。

 朝一参加組は、タクラ一家以外にも、

 2号店のシャルンエッセンスと元メイド達
 3号店のエレをはじめとした木人形達の大半
 ルア工房全員
 ペリクド工房全員

 と、昨日の今日だったにもかかわらずすごく多かったんですよね。
 本店からも、おもてなし酒場を未明まで営業していたイエロとセーテンをはじめ、4号店のクローコさんもやってきています。

 その4号店ですが、ララデンテさんが居残り組です。
「あたしゃ一応この土地の思念体だからさ、あんまり遠くに行くのはよくないんだよな」
 ……これは僕が元いた世界で言うところの地縛霊ってことでしょか?
 まぁ、そんなわけで、今日のララデンテさんは朝から元気に温泉饅頭を実演販売しながらレジ係もしてくれているわけです。
 
「まぁまぁ、ほんに大きいですねぇ」
 4号店からの参加組であるクマンコさんは、子供達をみんな引き連れての参加なのですが、その子供達ってば
「パラナミオお姉ちゃん、遊ぼうぜ!」
「私も一緒に!」
 と、まぁ、以前のウルムナギ騒動の際にすっかり仲良くなったパラナミオの側へと駆け寄っています。

 で、そのパラナミオはと言いますと、
「パパ、この水着似合ってますか? せくしぃですか?」
 そう言いながら僕の目の前でクルクル回っています。
 僕が選んであげた水着がよっぽど嬉しかったらしく、そうやって何度もお披露目してくれているんですよね。
 で、その水着ですが、せっかくなので、と、ビキニを選んでいたのですが……ちょっと予想外デースな出来事が発生していました。
 最近、脱皮を繰り返すごとに急速に成長し始めているパラナミオなのですが、その成長っぷりがかなりのものでして……ビキニ姿が本人自己申告通りなかなかにセクシーといいますか、海をバックにしたパラナミオってば、まさに今の君はピカピカに光って状態なんですよ……あ、パラナミオはスレンダーで、出るべきところが急速に成長中なわけなんですけどね。
「うん、パラナミオ、可愛いよ。よく似合ってる」
 僕が素直にそう言うと、パラナミオは嬉しそうに微笑みながら僕の右腕に抱きついて来ました。
 で、その後方にはクマンコさんの子供達がズラッと並んでついて来ています。
 なんか、これだけ見れば、僕パパとパラナミオママが子供達を引率中みたいな感じになっているんですよね。
 ……で、そんなことを考えていると、僕の左腕にスアが抱きついて来ました。
 腕をグイグイと自分の方に引っ張ってきます。
「……当ててるの、よ」
 そう言いながら僕を見つめているスア。
 うん、スアのハイパースレンダーボディの感触はしっかりありますが、胸の膨らみの感触は……おっとスアの視線がジト目に変わり始めたので、この話題はここまでにして……
 で、僕はパラナミオとスアに抱きつかれ、クマンコさんの子供達と、いつの間にかその後方に合流していたペリクドさんの子供達も一緒に引き連れて海へ向かっていきました……何気にペリクドさん家も子だくさんなんですよね。

「師匠の水着姿……」
 ブリリアンは浜辺に設営したテントの中から、スアの水着姿を眺めながら頬を赤く染めています。
「お兄様……ではなくて、店長様の水着姿……」
 シャルンエッセンスは、同じテントの中から、僕の水着姿を眺めながら頬を赤く染めています。

 ブリリアンの師匠愛と、僕の事を兄と慕ってくれているシャルンエッセンスの愛情表現がどこか違うというか、行き過ぎてないか?と思ったりしないでもないのですが、今のところ実害が生じることはないので流れに任せている次第です。

 そんな海水浴組とは別に、釣り組はアルリズドグさんが準備してくれた釣り船で少し沖合に出発していきました。
 向かったのは、クローコさんとスアとセーテンのおもてなし酒場本店組の3人と、ルアとオデン六世さんに足すことのビニーといった面々です。
「主殿、見ていてくだされ!超大物を釣り上げてまいるでござる」
「ダーリン、期待して待ってるキ」
 と、船上から僕に手を振ってくるイエロとセーテンなのですが……
 この海で大物と言えば、つい先日リヴァイアサン化したファラさんが体長50mもあるエビランを捕縛して来たのを目の当たりにしたばかりですので、果たしてそれ以上の大物を釣れるのかなぁ……などと思ったりしながら、とりあえず船に向かって手を振っておきました。

 そんな中、我が家の長男リョータですが、波打ち際に立って嬉しそうにしています。
 砂の感触と、海水の感触が気持ちいいらしく、水を足で蹴り飛ばしながらキャッキャと嬉しそうに声をあげています。
 そんなリョータの側には、常に僕とスアの姿があるわけでして……で、リョータは事あるごとに僕達の方へ視線を向けては手を振ってきます。
 で、それに笑顔で手を振り返していく僕とスア。
 なんかいいですね、こういう家族団らんの構図っていうのも。

 そんなことを思っていると、海岸にタルトス爺が姿を現しました。
「スア様、スア様の旦那様、今日は我ら使い魔の森の者達までをもお招きくださり本当にありがとうですじゃ」
 タルトス爺はそう言いながら何度も頭を下げていきました。
 そんなタルトス爺に、僕は
「いえいえ、いつもコンビニおもてなしで販売する商品作成で頑張ってもらっているんですから、これぐらいさせてくださいよ」
 そう言って笑いかけました。

 で、スアの使い魔の森の面々は、中にすごく巨大な使い魔もいますので、スアが特別製の転移ドアを展開しました。
 使い魔の森とこの海岸を直接結んだこの臨時転移ドアは、縦横10mずつはありそうな巨大な物です。
 で、その扉を開けてですね、一角サイクロプスとか、巨体の龍族などが続々と海岸にやって来始めました。
 そのままここで酒盛りを始めてしまうと目立ってしまいますので、この使い魔の森のみんなが集まっている海岸の一角にはスアが魔法をかけていまして、周囲からはそこにいる人達の姿が見えないようになっています。
 これで使い魔の森のみんなも、今日は心置きなく忘年会を楽しんでもらえるんじゃないかな、と思っています、はい。

 気がつけば、スアの使い魔の森の面々は、到着するやいなや自分達が持って来たスアビールをどんどん飲み始めています。

 こんな感じで、コンビニおもてなしの忘年会が始まったわけです、はい。

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