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ジワジワくるコンビニおもてなし その3

 コンビニおもてなしにおいて一番の売れ筋なのは弁当やパンなのですが、売上高で言えばダントツの商品が存在します。

 スアの魔法薬品です。

 スアの魔法薬は、疲労回復薬から超回復薬まで多岐にわたって商品が存在しています。
 そのどれもがスアが長年研究を重ねて完成させた薬です。
 この魔法薬というのは、新しい薬をゼロから作り上げようとすると膨大な時間と研究を必要とするそうです。
 そのため、悪質な魔法使いの中には、市販されている薬の成分を解析しそれに似た薬を作って安く販売して金を稼ごうとする輩が少なくないそうです。
 解析したのに何故似た薬? となるわけですが、解析魔法を使用したからといってその薬の成分を完璧に解析出来るわけではないからです。
 中には、高価な材料があったりもします。
 そのため、その解析出来なかった部分を、悪質な魔法使いは適当な成分で埋めるわけです。
 また、高価な材料を粗悪品で代替えしたりするわけです。
 そうやって出来上がった粗悪薬品を使用すると、場合によっては副作用がひどかったり、場合によってはほとんど効果がなかったり……なんてこともあるわけです。
 昔、隣の町で治療院を経営していたブリリアンが、コンビニおもてなしで安い薬が売られていると聞いて怒鳴り込んで来たことがあったのですが、これも
『悪質な魔法使いが悪質な手法で悪質な魔法薬を作って売っているに違いない』
 そう思い込んだからだったんですよね。

 コンビニおもてなしで販売しているスアの薬って、相場から言えばかなり安めの値段設定にされているそうなんですけど、スア的には
「別に、これくらいで十分、よ」
 そう言って笑います。
 これは、スアが伝説の魔法使いと言われるほど大量の魔力を有しているため、魔法薬をいくらでも加工・生産出来るからこそ言える台詞でもあるわけです。
 魔法薬を生成するために必要な薬草なども、スアはわざわざ採取にいかなくても、必要な物はすべて使い魔の森で自生させていまして、必要になれば使い魔達に取って来てもらっているので、ホントにお手軽に魔法薬の精製が出来ているわけです。
 ……まぁ、異空間に自分の使い魔達を住まわせるための空間を所有している魔法使いなんて、スア以外にはいないでしょうから、これもスアならではってことになるんでしょうけどね。

 で、そんな中でも高額設定になっているのが
『蘇生薬』
 なわけです。
 これは、文字通り死んでしまった人を蘇らせる薬です。
 例えば地下迷宮に入ってですねトラップやモンスター相手に死亡してしまった人に使用すればその場で即座に生き返らせることが出来る薬です。
 非常に便利なだけあって、それなりに高価なんですが、この薬はスアが作れば作っただけ売れていきます。
 と、いいますのも、このガタコンベ周辺はド田舎だけあって未開の地下迷宮や、タテガミライオンのように1頭倒せば結構な金になる害獣も多いため、一攫千金を夢見た冒険者が結構やってくるのですが、そういった方々が保険として買って行くわけです。
 また、ブラコンベやララコンベの商店街組合が組合員から集めている会費で買ったりもしています。
 何しろ都市から都市へ移動している途中で害獣に襲われて……なんてことが日常茶飯事ですからね、このあたりは。
 また、月に一度仕入にやってくるドンタコスゥコ商会も、この蘇生薬に関しては約束している個数以外にも店の棚に並んでいれば根こそぎ購入していきます。
 だいたいの品に関しては値切り交渉をしてくるドンタコスゥコですが、そんな彼女が一切文句を言わないで店売り定価のまま購入していくほどなんですが……ドンタコスゥコってば、これを他の都市ではいくらで販売してるんでしょうかねぇ……

 もっとも、この蘇生薬も万能ではありません。
 
 老衰で亡くなった方には効果がないそうです。
 老衰の場合、受け入れ側の肉体がすでに許容範囲を超えているため、薬を使用しても無理なんだとか。
 また、肉体が跡形もなく消滅しているケースでも無理なわけです。
 薬を飲ませようにも、その肉体が消滅しているわけですから、当然といえば当然なわけです。
 この場合、別料金でスアが蘇生魔法を使用してあげることになるんですけどね。

 それと、この蘇生薬は、高価なだけあって粗悪品も多いそうです。

 と、いいますのがですね、
 例えば毒に犯されて死んだ人がいるとします。
 スアの蘇生薬を使用すれば、蘇生する前に死体の体内に残っている毒を解毒してくれ、軽微な怪我まで治療してから蘇生作用が働き、体力や魔力もきっちり回復させてくれます。
 スア曰く
「……これが普通の蘇生薬、よ」
 とのことなのですが、高価なためおいそれと試験することが出来ないことを隠れ蓑にして、
・解毒作用がない
・治療効果がない
・体力回復効果がない
・魔力回復効果がない
 と、まぁNAINAINAI状態のくせに、蘇生薬を名乗って販売されている薬も少なくないんだとか。
 解毒作用がなければ、蘇生と同時に体内に残っている毒素で即死なわけですし、他のケースでも即戦力として復帰出来ないため、うっかり地下迷宮の奥深くで蘇生させちゃった日には、もう目も当てられないわけです。
 蘇生薬に限らず、魔法薬に関しては怪しい店で購入すればそれだけリスクも高いわけです。
 だからこそ、コンビニおもてなしで販売しているスア製の魔法薬は、
『あの伝説の魔法使いが自ら作っていること間違いなし』
 ってなわけで、飛ぶように売れているわけです。
 ちなみに、コンビニおもてなしでスアの魔法薬の販売を初めて以降、ブラコンベにあった魔法薬の店が6件すべて廃業したんですけど、なんでですかねぇ……まさか、揃いも揃って粗悪魔法薬を販売していたとか……まさかねぇ(棒読み

 まぁ、そんなわけで、スアの薬はコンビニおもてなし全店において大ヒットしている商品なわけです、はい。

 コンビニおもてなし3号店で売れまくっている魔女魔法出版の書籍ってのもありますが、売上高で言えばスアの魔法薬が圧倒しています。
 まぁ、3号店の場合、購入される以上に立ち読み……いや、座り読みが横行してますからね。
 魔法使いの方々に仕事を斡旋してあげているもんですから、以前に比べれば購入してもらえる率も高くはなっているのですが、まぁコレに関しては魔法使いの皆さんの勉強のためっていう側面もあるわけですし、長い目で見ようと思っています。

 あと、ジワジワ売れ続けているのが、ルア工房製の台所用品です。
 取って付きの寸胴とか、片手鍋とか、僕が元いた世界では普通に存在した台所用品を、ルアに商品化してもらっているのですが、
「何これ、すっごく使いやすいわ!」
「これ便利ねぇ」
 と、主婦の皆様に大好評となっていまして、毎月一定数売れています。
 高いけど長持ちすること間違いなしな品物よりも、安いけどそれなりにいい品なのでそこそこ持ちますよ的な品物がよく売れているもんですから、ある程度経つと買い換えにこられるわけです。
 
◇◇

 そんなわけで、魔女魔法出版から出版した本の影響で、ジワジワと訪れる人々の数が増加しているガタコンベなわけですが、同時にララコンベの温泉も話題になり始めています。
 本の巻末に『ガタコンベ近隣マップ』みたいなのをおまけでつけたんですけど、その中に『ララコンベ温泉郷』って書き入れておいたところ、
「こんなとこに温泉かぁ」
「帰りに寄ってみるか」
 ってな具合で、ララコンベを経由してからお帰りになられるお客さんもジワジワ増えている次第です。
 ……まぁ、あそこにもコンビニおもてなし4号店がありますので、ぶっちゃけララコンベに直接行っちゃえば、コンビニおもてなしで買い物も出来て、その上温泉も満喫出来るんですけどね……ははは。

 で、最近4号店の店長補佐のダークエルフのクローコさんが、仕事が終わるとしょっちゅう遊びに来るようになりました。
 いえね、本命はテンテンコウ♀なんですよ。
 以前、お化粧の話ですっごく盛り上がって以降親友になったらしくて、仕事が終わると遊びにやってきては、テンテンコウ♀と楽しくおしゃべりするのが日課になってるみたいなんです。
 ただ、テンテンコウ♀は、本店の業務終了後は、ブラコンベにありますコンビニおもてなし食堂エンテン亭でのお仕事がありますので、それが終わるまでおしゃべりはお預けなわけです。

 で、クローコさんがその待っている時間の話し相手に選んだのがヤルメキスとパラナミオなわけです。
「ヤルっちってさぁ、元が可愛いんだからさ、もっとこんなお洒落したら?旦那っちも絶対喜ぶってば」
「ふ、ふ、ふわぁ!? な、な、な、なんか目の周りが紫でごじゃりまするぅ」
「うわぁ、ヤルメキスさん、すごく綺麗です!」
 とまぁ、巨木の家のリビングで楽しそうに話をしている3人の姿が最近よく見受けられます。

 そのうちクローコさんに影響されたパラナミオがヤマンバメイクをして舌出し横ピースをし始めたらどうしようと思いつつも、パラナミオならそんな姿も可愛いのかもしれない……いや、むしろ一度見て見たいかも、と、妙な考えをもったりもしている、どーも僕です。

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