暗殺を逃れた姫と被誘拐者の危険な宇宙亡命記

matsurikage

 アウリウス・ネムは、十四歳の誕生日に父と共に、中世ヨーロッパの街並み等を模したテーマパーク型コロニー『エルドリアス』に旅行に来ていた。
 その帰り、宇宙港のトイレで彼女は、「お前は命を狙われている。助かりたければ、俺と来い」と謎の清掃員に声を掛けられる。
 変質者だろう、早く父のところに戻ろうと思い、ネムは無視して通路に出る。
 そこをボウガンで女に襲われるが、清掃員に助けてもらう。
 清掃員はネムを連れて逃げようとするが、彼女はそれならお父様も一緒に――
 と清掃員の制止を振り切り、父の元へ行こうとする。
 だが通路の陰から、父が見知らぬ女に、顔に液体をかけられ倒れるところを見てしまい、その場にくずおれる。
 ネムは気付くと、宇宙服を着せられ、コロニーの外壁近くを漂っていた。
 もう一人そこには宇宙服を着る人物がいて、ネムはその人物とワイヤーで繋がり、引っ張られていた。
 その人物は、先ほどの清掃員でユウシン・カガという名前らしい。
 彼は事件現場からコロニーの外に一旦逃れ、別の離れたところから再度コロニー内に戻ろうとしていたらしい。
 しかしハッキングで扉を開閉するのに手間取り、そこを一人の敵に襲撃されネムは負傷する。
 ユウシンは追手を撃退し、ネムは彼らの艦内で手当てを受けた。
 彼女達を狙ったのは、独裁軍事惑星国家アウリウスの総主席である彼女の叔父だった。
 叔父が祖父の後を継ぎ、政権の座についてから五年、自分以外に後継者がいることと、敵性の文化に染まっている彼女の父とその娘のネムを疎ましく思い、とうとう殺しに動いたようだ。
 艦は、かつて彼らを侵略した日の本の帝国主義の国、ゼフェリオンに向かっているという。
 ネムは家に帰りたかったが、国に戻っても殺されるだけなので、母の身を案じ、愛犬まで殺されないか心配し、ユウシンを信用してついて行っていいのかと不安でいっぱいだった。
 一方ユウシンは、十五歳のときゼフェリオンからアウリウスに拉致された被害者だった。
 彼は成り上がるためなら、同じ拉致被害者の脱走した少年を殺したり、海賊など何でもやり、今では軍用人型兵器アルファナイトの実験機のテストパイロットだったが、体は薬漬けで長くもたないだろうと感じていた。

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