―――――多くの物語には話の順序というものがある。例え、それが虚構だったとしてもかわらない。この世界にも竜王が現れた。それと同時に神に選ばれた勇者もまた現れる。そこまでは数多の伝説、物語と同じ流れだった。そこまでは……。
勇者と竜王の最終決戦。
大陸全土から集められた帝国軍総勢百万の兵士が勇者に率いられ、竜王の居城を総攻撃した。戦は熾烈を極め、多くの兵士が志半ばで倒れてゆく。それでも、勇者は卓越した勇気と強靭な意志で、戦いを続ける。遂に竜王の目の前まで迫った勇者はここで最終的に竜王を倒して、はい、めでたしめでたし――――となるはずだった。
勇者が竜王に瞬殺されるなんて、誰が考えたのか? 神か? それとも……。勇者は消し炭となって、灰も残さずあっさりと死んだ。絶望に暮れるムスタシア帝国の女帝二ブラスは膝から崩れ落ち、敗北を宣言する。待つのは世界の破滅だけ……誰もが終焉の時を待っていた。
だが、ある日のこと、一人の黒髪少年が軽い足取りでやって来ると女帝の前に跪いて、答えた。
「あのさ、竜王を倒したんだけど?」と。騒然とする皇帝の間、そして、かつて、語られたことのない物語が今、始まろうとしている!
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