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No.16 好きとさようなら

「これは……??」

次の日、僕、フレイはまたアメリアの所に訪れていた。
やはり、昨日と同じようにティナが部屋の前で待っていた。
どこか悲し気な表情で。
昨日と違うのはそのティナが手紙のようなものを持っていたことだった。
僕が来たことに気づいたティナはその手紙をこちらに手渡す。

「それはアメリア様からのお手紙です。フレイ様にと」

ティナは手紙を渡すと、すぐにその場を去った。
1人ポツンと部屋の前に残された僕は手紙をそっと開く。
便箋の中には1枚の折りたたまれた紙が入っていた。
何の変哲もない紙だった。


フレイ様へ

お元気ですか?フレイ様のことだから、きっと元気ですよね。私はというとお聞きしたとおりです。
さて、私がこのような状態になったことで婚約を解消しようとなったわけですが、私の意見としては陛下がおっしゃったとおりです。
フレイ様の幸せのためなら、私は婚約破棄を望みます。
私はいつか帰らぬ人となります。その時、フレイ様との婚約が続いていれば、新たな婚約者となる方を見つけるのが遅れ、フレイ様ご自身の将来ももちろん、ウィンフィールド国の将来に支障をきたしてしまうのではないかと心配しております。
ですから、私のことは忘れ、どうか新たな人と人生を歩んでいただきたいのです。
それが私の最後の願いです。
どうか婚約破棄をお願いします。
また、どこかでお会いいたしましょ。
さようなら。お元気で。

                トッカータ王国第7王女 アメリア・C・トッカータ



「…………」

読み終わるとそっと手紙を閉じた。
そして、アメリアがいるであろうその部屋の扉に触れる。

「アメリア、それでいいの??」

話しかけたが、当然ながらアメリアからの返答はなかった。
静かなままだった。

「また、会おうって……」

僕の声は震えていた。
自分が今にも泣き出しそうなのが分かり、一旦深呼吸をし息を整える。

「君の願いというのなら……僕は婚約を……解消するけど……」

部屋からは何も音が聞こえない。
聞こえるのは小鳥のさえずりだけ。

「僕は君のことが好きだから、それだけは忘れないし、忘れないでくれ」

一時、待ったが、やはりアメリアの声は聞こえなかった。

「じゃあね。さようなら」

僕は心の中に寂しさを残しながらその場を去っていった。



★★★★★★★★★★



ずっと扉のそばにいた。
フレイが手紙を読んでいるときも。
フレイが好きといった時も。
正直、うちはあんなに悲しまれるとは思ってもいなかった。
心の中に罪悪感が生まれていたが、自分のしたいことを考えた。
うちは5年間我慢したんだから。
うち、アメリアは12歳を迎えたばかり。
ウィンフィールド国の学校の入学はもうすぐ。
どっちにしろ、あっちでフレイにも会うんだから。
別人としてではあるけど。
心の中には少し寂しさのようなものがどこかあった。
ぽっかりと空いた穴みたいな。
この時は想像もできなかったが、学園に行ってからの方がめんどくさいことが待ち受けていた。

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