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Q2.好きな人っていますか?? A.ちび助(犬)です。(レン)

私の名前は阿由葉 怜。
よくファーストネームを「れい」と読み間違えられることが多いけれど、怜と書いて「レン」と読むの。
……告白しに来た子によく説明しているわ。
私は幼い頃から様々な人から好かれ、たまに女の子からも告白されることがよくあった。
好かれること自体は別に嫌いじゃない。
でも、「好き」というのが恋愛(・・)感情なら別。
恋愛なんて得意じゃないし、第一に嫌い。
私は恋愛なんてしていると面倒事に巻き込まれる確率の方が高い。
それに自分の心の中にあるはずの恋愛的好意というものが分からない。
見つからない。

「あ、レン。新しい恋愛小説が来たみたいだよ」
「え、本当??」

いつも通り昼休み、図書室に足を運んだ私はミカとともに今日配達された段ボール箱を開封していた。
ガムテープをはがし、段ボール箱を開けるとそこには先月頼んでいた書籍がたくさん入っていた。
できるだけどのジャンルも入荷できるようにと多種多様な本を頼んでいた。
それを隣で静かに取り出すミカ。
そして、私の正面でウキウキしながら段ボールの中身をじっと見つめる羽川さん。

「羽川さん、なんだか楽しそうね」
「はい!! 私がずっと追っていた本があったので!!」

羽川さんの目の前にある段ボールの箱をちらりと見ると、そこには大量のノベル本があった。
一般的なライトノベルからマイナーなものまで、図書室を利用する生徒の貸出記録から判断して買ったものである。

「へぇ。羽川さん、こういう系統が好きなのね……意外だわ」

羽川さんはポップでどこかパリピ感を感じる子だった。
人は見た目で判断するもんじゃないわね。

「意外ですか?? 私、結構オタクオタクしてますよー」
「そうなの……??」

本当に意外。

「はい。推しのためならどんな手段を使ってでもグッズとかに容赦なくお金を注ぎ込む身です。三次元には基本的に興味はありませんよ」
「じゃあ、この前のは……??」

先日、羽川さんは大勢のギャラリーがいる中で身の程を知らない男子生徒から告白を受けていた。
羽川さんは可愛い。
告白したいと思うのかもしれない。
でも、あんな場所で告白するなんて酷い。
かわいそう。
助けてあげたい。
と思った私は静かに図書室(この教室)から様子を見ていたけれど、我慢できなくて声を上げてしまった。
結局彼の告白を邪魔する形となったのだけれど。

「ああ。この前の昼休みの件ですか?? あれはもともと断る予定でいましたので」
「そうだったの」
「レンさんが声を掛けてくださったので、返事をせずに済みました!! あの時はありがとうございます!!」
「いいえ……。それなら良かったわ」

羽川さんは満面の笑みで感謝の言葉を私に向ける。
私、感謝されるような大したことはしていないのだけれど……。
まぁ、もしも、羽川さんが彼に「Yes」と返事するのなら申し訳ない事をしたなと思っていたけれど、「No」だったのなら結果オーライね。
良かったわ。

「それはそうと、レン。その結果、今日の放課後の予定はどうなったんですか??」

皮肉めいた口調で彼が話しかけてきた。
本人(ミカ)は昨日のことできっと私の予定のことくらい予想できているのにも関わらず。

「3人の男子の方に呼び出されましたよ。誰かさんのせいでね」
「それはご愁傷様。自業自得だけど」
「誰が自業自得よ。背中を押さえられなかったら、すぐに窓を閉めていたのに」
「え、レンさん。呼び出されたんですか?! わぁ~!!」

羽川さんはまたもや楽しそうにこちらを見つめてくる。
そんな楽しいもんじゃないわよ……。
全部断るつもりでいるのだから。

「そんな楽しそうな羽川さんに私の代わりとしてぜひとも彼らのところに行ってほしいわ」
「いやいやいやいや。私なんが行っても、罵倒されるだけですよ。『なんでお前なんだよ!!』『お前の出番ねーよ』って。『お前が告白される?? そんなのあるわけねーじゃん』って寺〇心風に言われるんですよ」

凄い想像ね。
昨日、告白されていたのに。

「だいたいなんでレンさんモテるのが嫌なんですか?? 私みたいにオタクオタクしていて2次元に恋しているわけでも3次元の俳優さんがめっちゃ好きってわけでもなさそうなのに」
「確かに私は世間でいうオタクオタクしているわけでもないし、追っかけするほどの好きな俳優さんがいるわけでもない。単に疲れたのよ」
「モテることにですか??」
「そうよ」

すると、黙々と作業をしていたミカもJK感溢れ出る「わかる~」という言葉を棒読みで呟いた。
全く、話に興味あるのかないのか。
羽川さんはというと不満げに「えー??」と言って、口をとがらせている。

「それ、モテない人からしたら贅沢な悩みじゃないですかー。ホントもったいなーい」
「もったいないと言われても……」
「ということはレンさんもミカ先輩も彼氏、彼女いないんですか??」
「「いない」」
「えーっ!! じゃあじゃあ、一度もカレカノ作ったことないんですか??」
「ないよ」

全て書籍を出し終えたミカは段ボールをたたみながら、冷静に答えた。
ウソをつくべきか、つかないべきか。

「レンさんは……??」
『ピンポンパンポーン』

私が答えようとしたその瞬間、セルフのチャイム音が聞こえてきた。
よく聞く声だった。

『阿由葉 怜~。今すぐ職員室の穹のところまで来てくれ~』

予想通りだわ。

『来ないとお前の秘密を全校にバラすぞぉ……って校長せんせっ。アハハ。いやぁ……冗談に決まってるじゃないですかぁ。あ、マイク切ってなかっ』

穹せんせ、絶対今やらかしましたね。
運悪くあの校長先生に捕まっているパターンだわ。

「ちょっと、2人でやってて。私、穹先生のところに行ってくるわ」
「はーい。いってらっしゃいませー」「気をつけて」

羽川さんは可愛く手を振り、ミカはちらりと見て微笑んだ。
私はテキパキと仕事をこなす2人を図書室に残し、職員室に向かう。
すれ違う生徒から視線を感じるが、気にせず廊下を歩いた。
ミカにも言っていない秘密を先生は知ってる。
その秘密をミカに言うべきか言わないべきかずっと考えていたのだけれど、大したこともないし言うべきかなと最近思う。
それにアイツがやってきたことだし。

私は穹先生のお話を予測しながら、渡り廊下を歩いて行った。

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