バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

一章 異世界転生の解(一話)

一章 異世界転生の解

部室の鍵を返して門を出ようとしていた。すると、
「おーい谷野ー。」
女子が少し小走りで向かって来た。

城山 奈穂
谷野のクラスメイトで小学校の頃から遊んでいる仲。周りは幼なじみと言っているが、本人達は何故か認めない。谷野よりも成績が上で、友達も多い。好きな食べ物は葡萄だ。

「おーい、聞いてるー?」
「あっ、ごめん。」
「なんか今日、ボーとしていること多いな。」
「まあ、たまにはこういう時もあるだろ。」
「だね。」
城山はそう言ってにやけた。
「そういえば最近、急に寒くなったな。城山、暖かくしているか?」
「ありがと。まあ家に炬燵あるし、大丈夫だ!」
「炬燵って人ダメにするよな。」
「それな。でもわかってても入っちゃうのだよ。」
「まあな。ところで本当に寒いな。」
「薄着な・・・。谷・・野・・・。」
「な、なあ、どうした。」
「ナ、イフが・・・。
「・・・はっきり言ってくれ。」
【背中に、ナイフが刺さってる・・・。】
「ははっそんなわけ・・・。」
背中を触った谷野・・・。その手には。
「赤い・・・。」
後ろを見ると、赤い液体が点々と・・・。そして、横にいる城山を見て。・・・そこで倒れた。
(俺、死ぬのかな・・・。)
「谷野、しっかりして!」
しかし、応答はなかったーーー。





明かりが・・・。眩しい・・・。・・・。
「起きてください!」
その呼び掛けで起きた。
「・・・。おい、ここどこだ。」
谷野は目をしっかり開けた。すると、女の人が肩を掴んでいた。おそらく揺さぶって起こしたのだろう。
「起きたー!よかった!」
「ん?」
女の人は立ち上がって。
「・・・コホン、ようこそ転生の間へ。」
「転生・・・、えっ!?」
谷野は唖然した。
「死んでるのか?」
「残念ながら。」
「死んだならなぜ動けるのか?」
「んー、簡単に言えばこれからあなたは、転生できる特別の人、ということです。」
特別?谷野は更に困惑した。しかし、これだけは聞いておきたい。
「なぜ死んだんだ?」
「えっ、覚えてないんですか!?」
「覚えてないって?」
「・・・。」
「どうした?」
女の人は少し悲しそうな顔をして言った。
「実は余計なことは基本的に 言ってはいけないという規則があって。」
「規則だからといって、あまりに酷いと思うが。」
「規則なので。」
女の人の顔がどんどん暗くなる。・・・悪気はなそうだ。
「ごめん、言い過ぎた。規則がなければ、言っているはずだからな。」
「すみません・・・。」
「いいよ。」
女の人の顔に明るさが戻った。谷野はふと言った。
「ところであなたの名前は?」
女の人は明るい声で答えた。
「私はローナド・トラヤラです!気軽にヤラと呼んでください!」
谷野は右手を首にやって言った。
「まあ、よろしくなヤラ。」
ヤラは優しい笑顔で言った。
「案内だけですが、よろしくお願いいたします。」

俺とヤラは挨拶の後、階段をひたすら登っていた。
「ところで、この階段はどこに繋がってるのか?」
「この世界の神の所です。」
ふと疑問になった。
「この世界って、どんな世界なんだ?」
「あなたから見たら、『異世界』です。」
異世界?というか死んだ理由もわからない、どんな状況かよくわからない。どうするんだこれから・・・。

続く

しおり