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天下への階段10

 軍師の件は長老に文で知らせた。恐らく秀長の耳に入るだろう。それと黒田の屋敷で最近雇われたものを調べるように伝えた。宗矩が浜松を出て1月になる。宗矩が戻ってきて家康の次男・於義丸(結城秀康)を秀吉の養子として送られることとなった。これは長老から文で知らせてきた。
 狗もようやく徳川の兵力をまとめあげて長老に送った。この調査で年寄り1人とくノ一1人を失った。家康のいうようにこの兵力では秀吉との全面戦争はない。この頃は天海は輿に乗って浜松城に家康に会いに行くことが多くなった。輿には柳生の侍が10人ほどつく。狗も何度か追ったが浜松城には服部が潜んでいては入れない。
 茶屋の2階に戻ると狐の顔があった。
「どうした?」
「筒井順慶を訪ねた。最近は病床に伏すことが多くなった。昔ほどの元気がなかったわ」
「そうか」
 順慶は元々の主だ。光秀の後大和を牛耳っていたが。
「今日は?」
「追加の下忍を補充に来た。秀長殿から徳川監視の手を増やすようにと言われたのよ」
 徳川の兵力調査が付いたようだ。
「それで筒井が使っていた商家を丸ごと譲り受けることになった。これは順慶殿から秀長殿への送り状で決まった。順慶殿は自分の後を心配して秀長殿を頼ったのよ」
 狐は商家の地図を開く。浜松城下にある。思ったより大きい。本家は奈良にある。表向きは知られていないが筒井の遠縁に当たる。
「ここには15人がいるけど、7人は引き継ぐ。残りは奈良に戻る。今回下忍を5人とくノ一2人、年寄りを2人連れてきた。私は本家の娘として入る」
「でも山の屋敷はいいのか?」
「一人しっかりした下忍に任した。秀長殿は家康の戦いは長くなると」


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