バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

夏の元気なご挨拶 その1

 今日からパラナミオの通っている学校が夏休みに入ります。
 その夜のパラナミオさん、
「明日からママのお手伝いをめいっぱいします!」
 と、気合い十分満々です。

 何しろ、スアのお腹の中に自分の妹か弟か、ひょっとしたらその両方がいるかもしれないというのがわかって以降、もう毎日ずっとそわそわ状態のパラナミオなもんですから、夏休みと同時に、ママにべったりしたくてしょうがないわけです、はい。
 あ、パパは、双子がいいなぁ、と思ってます。

 そんな翌朝。

 いつもねぼすけと言いますか、とにかく朝が弱いスアが、いつものようにぬぼ~っとベッドから上半身を起こしますと、パラナミオがすかさずかけよります。
「ママ、何しましょうか!」













「ママ?」
 パラナミオ、朝、起きてすぐのママに多くを期待してはいけません。
 頭の中が動き出すまでに、だいたい20分はかかるんですから。

 そんな中、スア両手を伸ばしました。
 おもむろにパラナミオを抱きしめていきます。
「……ママ」
 パラナミオ、すごく嬉しそうなんですが、


 スアさん、そのままパラナミオともども横になって二度寝スタート……って、うぉい!?

 気がつけば、パラナミオもなんかトロ~ンとなってるし、
 たまたま見てたからあれでしたけど、このままでしたら2人して朝ご飯食べずに昼までぐっすりコースだったよ、もう……

 最近はちょっと朝のお店が忙しいのもあって、スアが覚醒するのを待てない状態なんですよね。
 無理矢理起こすのも母体にどうかとおもっちゃうし、ボクが起きるときに一緒に起こすとなると、日の出とともにって、さすがにそれはねぇ……
 なので、今日からパラナミオに、適当な時間にスアを起こして一緒に朝ご飯を食べてねってお願いしていた、その第一歩というか、初っぱなが、これだったわけです、はい。

 で、まぁ、どうにかポテポテ起き出したスアですが
「……だっこ」
 って、ボクに甘えまくってきます……って、まぁ、いつものことではあるんですけどね……ただ今日はその後方でパラナミオが、出番はまだかと、目をランランと輝かしているわけです、はい。

 で、まぁ

 さすがにボクの方も店の方にいかなきゃならないので、覚醒し始めたスアとパラナミオにまかせてですね
「……も少し、だっこ」
 は、はいはいわかった、わかったから行く手をアナザーボディでふさがない!

◇◇

 んで、夜

 なんか、パラナミオさん……ず~んってなってるんですけど……

 んで、
 親がサインすることになっている今日の絵日記を見て見ますと

『今日はママのお手伝いをしようと思いました。
 ママは、机に座っていました』

 ……え? 終わり?


 ただ、よくよく考えたら、そりゃこうなるか……とも思った訳です。

 え~、スアの1日と言いますと、

 まずボクに甘えまくりながら起きると、執筆作業にはいります。
 んで、執筆しながら気になった事があると、執筆しながらアナザーボディを研究室に発生させて代わりに作業させます。プラントで作業が必要な場合は、アナザーボディをプラントに向かわせます。
 んで、店が混み始めたなと思うと、さらにアナザーボディを発生させ、店に直接送り込んでくれます。

 途中眠くなったら、執筆姿勢のまま寝ています。
 寝ていながらも手だけは動いているため、寝判別が難しいです。


 とまぁ、そんな具合で
 スアは基本、1日机に座っています。

 そんなスアのお手伝いを、と、なると、やっぱねぇ。
 パラナミオ的には、お腹に赤ちゃんのいるスアのお手伝いをしたいんだろうけど、さてさてどうしたもんか……


 と、まぁ、ここでボク、
 ひとつ思い浮かびました。
「パラナミオ、明日はママの絵を描いてくれないか?」
「ママの絵ですか?」
「うん。パパとママの役に立つことに使いたいんだ」
「は、はい! 絶対にがんばります!」
 このボクのお願いで、パラナミオ、やっと元気になってくれました。

 んで翌日

 覚醒し、いつものように執筆を始めたスア。
 その横にパラナミオ。

 パラナミオ、真剣この上ない表情でスアの横顔を見ながら絵を描いています。

 で、スア
 一見すると普通な様子なのですが、

 ボクにはわかります。
 スア、めっちゃ緊張しています。
 当社比300倍くらい。

 んで、
 ボクの色鉛筆を使って色もついたスアの絵が、夕方には完成しました。

「パパ、ママ、見てください!」
 夕飯後、パラナミオがうれしそうにママの絵を見せてくれました。

 横からみていたため、当然のように横顔ですが、スアの顔です。
 とても頑張って、とてもよく描けています。
 うん、色塗りもいいし、これは将来は絵描きになるのもいいかもしれないな……
 と、よくある親ばかを発揮しながらも、ボク、この絵を持って、とある場所へ

 で、

 たどり着いたのはスアの使い魔の森です。

「ほう、これを?」
 酒の妖精バルンカッスにパラナミオの絵を見せてかくかくしかじか。
「なるほど、それはよろしいな! わかりもうした、後は、このバルンカッスにおまかせくだされ」
 そう言って、胸をドンと叩いてくれました。

 んで、翌朝

 定例行事のように、ボクに甘えてくるスアの応対をしていると

 朝の納品でやってきた、ハニワ馬のヴィヴィランテス……って、もうお前元の姿に戻る気ないだろ?
 が、まぁ、山のようにスアビールとタクラ酒の詰まった木箱を持って来てくれたんですが、今朝はバルンカッスも一緒です。
「ばっちりできてますぜ」
 と、バルンカッスが手渡してくれたスアビールの木樽には、スアビールのラベルが貼られているんですが、昨日まで『スアビール』って文字がでかでかと書かれていた場所に、昨日のパラナミオが描いたスアの絵がど~んと表示されています。

「はわわぁ!? ぱ、パパ、こ、これってぇ!?」
 パラナミオ、その木樽をみながら真っ赤になってました。
 そんなパラナミオにボクは
「スアビールの夏限定ラベルだよ」
 とニッコリ。
 んで、ボクに抱きついて、ボク成分を存分に吸収中だったスアも、その木樽を嬉しそうに眺めた後、パラナミオをぎゅってしていきます。
 んで、ボクもそんな2人を横から抱きしめて……

 我が家恒例の、ハグ重ねが完成していきます。

 で
 この日のパラナミオには、スアビールの販売促進員をお店でして貰いました。
 パラナミオが描いたスアの絵を使った大きなワッペンをして、飲み物売り場の前に立ってもらい
「スアビールどうですか! ママのビールです」
 って、元気に声を出してくれます。
 未成年にビールの販売促進ってのも……とは思ったんですけど、まぁ、飲んでるわけじゃないし、試飲を配ってるわけでもないし……ねぇ。
 で、
 スアビールが売れる度に、ボク
「このラベルの絵、そこにいるボクの娘が描いたんですよ」
 と、購入客に漏れなく紹介。

 で、お客さんも

「ほう、お嬢ちゃん、これは良く描けているねぇ。どれ、もう1本買っちゃおうかな」
 って言ってくれる人が続出なんですけど……すいませんお客さん、購入制限もういっぱい買われたのでは?

 なんて、話もあったりする中
 今日のパラナミオは、1日笑顔で頑張りました。

 さすがに1日頑張ったせいか、この日はお風呂中からお眠状態だったパラナミオ。
 一緒に入っていたボクは、慌てて髪と体を洗ってやって、湯船に気持ちつけてから脱衣所へ。
 んで、
 こっからはスアがアナザーボディを駆使しながら、パラナミオをベッドまで輸送してくれました。

 ベッドで、満面の笑みで眠っているパラナミオ。

 なんていいますか、ホント、天使のような笑顔です、はい。
 先に、スアにベッドに入ってもらい、ボクは少し書きもの仕事を……

 というのも、
 最近、スアビールを卸売りしてくれないかって話があちこちから来てるんですよね。
 先日の夏祭りで、目をとめてくれた近隣の街の酒場や食堂が大半なんだけど……このリバティって街、一体どこにあったっけ? なんか聞いた覚えが無きにしもあらずなんだけどなぁ……なんだっけ、バトコンベの大武闘会に行ったときに聞いたんだっけか?

 まぁ、とりあえず、この日は内容確認にとどめ、
 各申し出が、どれくらいの量なのかっていうのと、店での売れ具合などを加味して考え、どこにどれくらい卸せるかの試算までして、今日は終わりにしました。
 あとは明日、バルンカッスの所に行って、スアビールの増産も含めて、この卸売りの相談をしにいってみようと思っています。

 で

 ベッドに戻ると、
 爆睡状態だったパラナミオの横で、スアも気持ちよさそうに寝ています。

 なんか、2人の笑顔を見ているだけでこっちまで癒やされます。
 ボクは、2人の寝顔を肴にタクラ酒で晩酌してから、2人の隣で横になりました。

 明日は、今日以上に元気に頑張れそうです。


ーつづく 

しおり