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コンビニおもてなし3号店と、魔女集落 その1

 休みを終えた翌日。

 いつものように本店の営業を終えた僕は、店の片付けをブリリアン・ヤルメキス・猿人4人娘にお願いし、スアの転移魔法でコンビニおもてなし3号店へ移動した。


 ちなみに、この日、イエロ・セーテン組は、山へ魔獣狩りに行ってます。
 以前は、イエロが、女騎士ゴルアとメルアの修行を兼ねて行ってたんだけど
 今は、息のあったコンビとして行っているため、収穫量がパナいです。
 店のチカにある大型冷凍庫もすでにパンパンなので、商店街の食堂や飲み屋に卸売りしてるんだけど、
「いやぁタクラちゃん、助かるわぁ。いつもいい肉ありがとねぇ」
 ってな具合で、すっごく喜んでもらえてて、なんかこっちも嬉しくなってます。

 というのも
 このあたりの魔獣は辺境ってのもあってか、すごく強いのが蔓延ってます。
 そういった魔獣から街を守るために、街の周囲グルリが高い城壁で囲まれてて、日の入りから日の出までの間は門が閉ざされ出入り出来なくなるほど、しっかり管理されてるほどです。

 で、その魔獣共ですが
 昨日、イエロとセーテンが狩ってきたタテガミライオンあたりですと
 上級の冒険者が10人がかりでようやく1頭倒せるかどうか、といった具合なんだけど
 それをイエロとセーテンは2人だけで、12頭狩って来たわけで……
 

 話を戻します。

 コンビニおもてなし3号店は
 以前、暗黒大魔道士ダマリナッセを討伐した恩賞として賜った屋敷で営業しています。

 屋敷の元応接室などの1階部分をフル活用して
 書店エリアと、コンビニエリアの2形態営業しています。
 
 この書店エリアは、魔女魔法出版と提携していて
 魔女魔法出版の倉庫に残っている過去の不良在庫を毎月一定量ずつ仕入させて貰う代わりに、毎月定額を支払う約束になっています。
 
 ただ、ウチの店の書店コーナーのお客さんってのが、まぁ、扱ってる書籍の99%が魔法書なのもあって、中級以下の魔法使いさん達なんだけど
 まぁ、金もってないせいか、立ち読みがすっごく多い。
 その対策として、1時間で一度退出・店内入場者数制限などのルールを設けているんだけど
 魔法使いのみんなは
「こうして本を見せてもらえるだけでもありがたいです!」
 と言って、ルールをしっかり守ってくれてます。
 で、まぁ、無理ない程度で本も買ってくれてるみたいだし、まぁいいんじゃないかな、と思ってます。

 で
 そのとなりにあるコンビニコーナーでは
 本店で多めに作った弁当やパンを持ってきて販売してるんだけど
 書店コーナーの順番待ちをしてる人達がすっごく喜んでくれたんだけど
 ここでご飯も買えるとわかったもんだからか、魔女達がどんどんこの近辺に移住してきてたんですけど……


「おいおいおい……」
 僕は屋敷の2階から周囲を眺めて唖然としました。

 いや
 唖然ともするでしょ……

 僕らがやって来た直後のこの屋敷の周辺って、荒れ地しかなかったわけです。
 それが、
 今、僕が見下ろしている辺り一面は、鬱蒼とした森林が広がっています。
 
 ですが皆さん、騙されてはいけません。
 この一見森林に見える木々なんですけど

 そのほとんど全てが魔法使いの「家」なんです。

 いえね
 プラントって魔法があるんですけど、
 この魔法をかけられた巨木って、木の枝葉の部分で植物をコピーしたり出来るんですけど
 プラントかけられた巨木って、その中に住むことが出来るようになる上に
 その巨木ごと移動も出来るようになるんですよ
 根っこの部分が4分割してえっちらおっちら歩いて移動するわけです。
 
 ちなみに、このプラントの魔法に関する知識というか、解説書的な書物って
 以前は上級魔法使い達が独占してたもんだから、中級以下の魔法使いの中にはほとんど使用出来る人がいなかったそうなんです。
 そんな中、ウチの店が、そんな中級以下の魔法使い達に魔法書を一斉解放したもんだから、
 皆、こぞってこの魔法を勉強・練習し、めぼしい巨木をプラント化してですね、そこを住居にし、そして書物がたんまり読めるこのコンビニおもてなし3号店近隣へと転居してきてるわけです、はい。

 ただ、まぁ、
 この中級以下の魔法使い達が良心的なのが
 このプラント魔法を使用する際には、必ず本を買ってから実行してるってこと。

 なんでも、自発的に
「このプラント巨木の人、ちゃんと本を買っただろうね?」
 って、お互いに言葉を掛け合ってくれているらしい。

 まぁ、あれです。
 ここでしっかり勉強して、立派な魔法使いになってほしいものです。


 ところで、僕的に1つ気になったことがあります。
 
 今、僕の眼前に引っ越ししてきている魔法使い達って、何をやってお金を稼いでいるんだろう……と

 このコンビニおもてなし3号店の近隣には街はない。
 とはいえ、移動距離に差こそあれ、皆転移魔法は使用出来るはずだし、皆、本を読んでいる以外の時間は、どこかへ仕事に行ってるんだよね?

 ……そう思ってたんだけどね

 なんか、木の家の並木を歩いていると
 あちこちにいるんですよ……
 
 なんか、疲れ切った使い魔達が……

 その中の1匹、小鬼のステラルースさんのお話
「あのですね……私のご主人様は、いつもコンビニもてなしの書店ブースにこもりっきりになっておりますの……
 それでですね、私が3日に1回、一番近い街まで出稼ぎに行ってですね……」

 と、まぁ、
 このようなお話を散々聞いたわけです、はい。

 一緒に歩いているスアによれば
「使い魔の使い方は……魔法使いに任されてる、し……」
 そう言いながらも、やっぱ、ちょっと複雑そうな表情をしています。

 う~ん……
 魔法使い相手の商売なら少々辺鄙な場所でも、成り立つって言われて始めた手前、
 ちょっと責任も感じてるんですよね……

 で、スアに相談してみたところ
「……じゃあ、薬作ってもらおう、か?」
 って
 
 スアが言うには、
 簡単な回復薬や、解毒薬、状態異常回復薬なんかを魔法使い達に作ってもらい、それを買い取りしたらどうかとのことで。

 確かに
 スアが毎日大量に作成している薬品類は、毎日完売している人気商品なんだよね。

 で、まぁ、
 スアとあれこれ相談のうえ、

・薬品は店の売値の3割で買い取る。
・買い取る際には、スアがすべて検品する。
・買い取りは毎夕方、日暮れから1時間

 と、まぁ、こんなところで、とりあえずやってみた。

 んで、
 この張り紙をして、この日は本店へ帰宅したわけです。


 家に戻ると
「パパ、ママ、おかえりなさい!」
 って、僕らがいない間、店の片付けを手伝ってくれていたパラナミオが満面の笑顔で出迎えてくれました。
 ちなみに、その横にはヤルメキスが一緒にいて
「お、お、お、お邪魔しているでごじゃりまするぅ」
 って、なんかまたその場で土下座しはじめたわけで。

 ヤルメキスとパラナミオは、水遊びを一緒にして以降、
 すっごく仲良しになってて、こうして一緒に遊ぶことが多くなってます。

 お菓子作りの修行も欠かしていないというか
 一緒に作ったりもしているらしく

「今日は、ヤルメキスちゃんとケーキを作ったんですよ!」
 って、すっごく嬉しそうにカップケーキを手渡してくれました。

 僕とスア、満面の笑みでそれを受け取り
「じゃあ、みんなで一緒に食べようか」
 って、言いながら、家の中へ
 リビングで一緒に食べたんだけど……うん、確かに美味しい
「ほんとですか!」
 その言葉に、パラナミオ、すっごく嬉しそうに笑ってます。
「よかったでおじゃりまするなぁ」
 って、その横でヤルメキスが、なんかうれし泣きしてて、おいおい、ヤルメキスが教えてくれたんでしょ?
「で、で、で、ですが、頑張られたのはパラナミオ様でごじゃりまするので」
 って、なんか、いまだにうれし泣き継続中なわけです。

 その後は、いつものように、店の2階の社員寮で暮らしてる
 イエロ・猿人4人娘に加えて、店の裏に小屋を建てて暮らしてるヤルメキス・セーテン
 いつものメンバーを加えて、皆で夕食を食べました。

 以前は、皆の料理を僕が1人で作ってたんだけど
 今は、猿人4人娘達が交代で作ってくれてるので、僕は楽をさせてもらってます。

 店の2階
 元僕の部屋で、現皆の休憩室兼リビングで、いつもの夕飯。
「あぁ、ご主人殿、今日の獲物、血抜きして解体しておいたのですが、レイトーコとやらが満杯だったのですが……」
 と、イエロ。
 おいおい、今朝、居酒屋に結構卸して隙間をあけておいたはずなんだけどな……
 するとセーテンが
「群れを2つ壊滅させたキ、全部で24頭はいたキ」

 ……おいおい……お前ら2人、どんだけ超人なんだよ……

 
 夕食を終えた僕が地下に降りると
 イエロが言ったように、業務用大型冷凍庫が、すでに完全に満杯状態で
 その前に、結構な量の肉が置かれています。

 こんだけ多いと
 宴会して消費するのはもったいないし……そもそも、今日はもう晩ご飯食べちゃったしね……


 そこで僕は、電気自動車おもてなし1号に、この肉を詰め込むと
 そのまま夜のドライブとばかりに街の中へと出ていきました。
 当然、助手席にはスアとパラナミオ。
 2人とも小柄だから、2人で座れちゃうんだよね
「パパ、このクルマという乗り物、すごいです! 全然振動しないし、吠えません!」
 パラナミオは、この車がたいそう気に入ったみたいで、乗るといつも満面の笑みです。

 で、
 僕はそのまま、街道の中にある居酒屋の裏へ
「おぉ、タクラじゃないか? どうしたんだこんな時間に」
 ちょうど店の裏に荷物を取りに出てきた顔なじみの主人とばったり出くわしたので
「実は、イエロとセーテンが肉を狩りすぎましてね……よかったら買い取ってもらえないかと思って……」
 そう僕が告げると
「何!? 肉を売ってくれるのか、どれどれ……ってか、これ、タテガミライオンの肉じゃないか!
 買う! 全部買わせてくれ! 値段はお前さんの言い値でいいぞ!」
 なんかもう、1件目でこの大反響ぶりだったわけです。

 大量に上質な肉を、良心的な値段で卸した僕に、
「お前さんにはいつも世話になってるんだ、せめて酒でも飲んでってくれ!」
 って、強く誘われたんだけど
「すいません、今僕、車なんで……」
 って、断りを入れたわけです。

 まぁ、この世界で、飲酒運転の取り締まりなんてないわけなんで、そこまで気にしなくてもいいかな、とは思うんだけど

 飲酒運転・ダメ・絶対

 うん、マジ、運転しててどっか突っ込んだり、誰か怪我させたりしたら問題だしね。

 店主には、また飲みに来るよ、と告げて、僕はすっかり軽くなったおもてなし1号で店に帰りました。

 で、
 お風呂を済ませた僕らは、そのまま就寝。
「パパ、ママ、お休みなさい」
 そう、面々の笑みで言って、僕とスアの間で眠り始めるパラナミオ。

 で
 パラナミオが寝息を立て始めると、
 僕とスアはちょっと別室へ

 パラナミオもほら、1人っ子じゃかわいそうでしょ?

◇◇

 さて、明日は、薬のチラシの効果を確認にいかないとな……

 僕はそんな事を思いながら、僕の腕枕で気持ちよさそうに眠っているスアの頭を撫でていました。
 えぇ、
 事後ですが、何か?

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