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バトコンベの大武闘大会 その4

 翌朝
 いつものように夜明け直後に目を覚ますと、産まれたまんまの姿のスア。

 昨夜はお楽しみでしたので、まぁ、仕方ないわけですが
 朝、異常に弱いスアをこのまま放置して、朝の弁当作成に向かうと、隣の部屋で寝ているパラナミオが乱入してきた時に、びっくりすることになってしまうので、眠ったままのスアにいつものパジャマを着せていく僕。
 
 で
 
 スアの体も、もうよく覚えているようで、
 スア、寝息をたてながら、手足を動かしてパジャマに手足を通してくれます、はい。

 で
 そんな奥さんの寝顔に、ちょっとドキッとしたりしながら……いいでしょ!?まだ新婚なんだしさ!
 スアに服を着せ終え、僕も服を着終わったところで

「パパ~……ママ~……どこですか~……」
 って、寝ぼけ眼のパラナミオが、枕片手に部屋に入ってきたわけで……

 まさに、間一髪

 僕は、パラナミオを
「ほら、パパはここだよ」
 って言いながら抱きしめたんだけど
 パラナミオ、すっごく嬉しそうな笑顔を浮かべながら
「パパだ~、パパの匂いだ~」
 って、相変わらず寝ぼけたまんまで、僕の胸に顔を埋めました。

 実の親子じゃないけど
 なんか、実の親子以上のものを感じちゃうわけです、はい。

 僕は、相変わらずベッドで寝ているスアの横にパラナミオを寝かせ
「いいかい? パパはこれから一仕事してくるから、ママと一緒に待ってるんだよ?」
 そう言うと、パラナミオは
「パパ、わかりました。パラナミオはママと一緒にまって……」
 スアに抱きついて、そこまで言ったところで、夢の中へ旅立っていったんだけど
 そんなパラナミオの頭を、寝ぼけたまんまのスアが、なんかなでなでしながら、寝息をたててます。

 あ~

 2人揃って抱きしめたい!

 それしたら、確実に弁当作成作業が間に合わなくなるので、
 僕は心を鬼にして、コンビニおもてなしの調理場へ移動。

 そこには、すでに、蛙人ヤルメキスと猿人4人娘が入っていて

 ヤルメキスは、得意のカップケーキを大量に
 猿人4人娘は、いつものように、まずはパン生地の作成から作業を開始していました。

「あ、おはようございますでごじゃりまする」
「「「おはようございます、店長」」」
 僕が来たことに気づいた5人は、一斉に僕に挨拶をしてくれた。
 いつものことなんだけど、この5人はいつもこうして元気に挨拶をしてくれるので本当に気持ちいい。

 今日は昨日と違い、休日ではない。
 そのため、この本店を営業しながらバトコンベの出店を運営しなければなりません。

 なので、
 この朝の段階での弁当やパン作成の時点でかなり多めに作っておいて、向こうに持って行かないといけません。
 昨日の時点ですでにかなりの人気だったし、今日もそれなりの来客は見込んでおかないと、と思うわけです。

 本店の総指揮は、自称スアの弟子こと、ブリリアンに今回も任せ、
 ヤルメキスと猿人3人娘にフォローで、接客を任せることに。

 猿人3人娘達は、すごく覚えがよくてなんでもそつなくこなせるようになっているので本当に助かっています。
 ヤルメキスは、相変わらずすぐテンパるもんだから
「も、も、も、申し訳ごじゃりませぬぅぅぅぅぅぅ」
 って、いきなり土下座始めちゃって、周囲がびっくりしちゃうんだけど
「おぉ、ごじゃるの姉ちゃんの土下座が出たぞ」
 ってな具合で、最近では常連さんには見慣れた光景になっているらしく……ってそれもどうなんだろうか?

 で

 本店の営業はそれでいいとして

 バトコンベの出店である。
 昨日は本店がお休みの日だったので、猿人3人娘達に接客を頼んだんだけど
 今日はそうはいかないわけで

 で
 今日はスアのアナザーボディに頑張ってもらうことに

 スアが魔法で作り出す光の分体
 最高で4体まで同時に出現させ、別々に動かすことが出来るこのアナザーボディと、僕の5人体勢で頑張ろうってことになったんだけど
「パパ! パラナミオもお手伝いします!」
 って、起き出して来たパラナミオがすごいやる気満々の様子でコンビニおもてなしの調理場に顔を出して来たんだけど

 ダメだよパラナミオ
 君は今日は学校があるでしょう?

 そう言うと、パラナミオ
 なんか、世界が今終わりました……的にず~んと落ち込んで、その場で固まって……

 ……いや、パラナミオ?
 学校は大事なんだよ?
 手伝いたい気持ちはわからないでもないし、嬉しいんだけどさ……

 でもね、学校で勉強するのも……

「それでも、パパのお手伝いがじだいんでず~」

 僕の説得をすべて放り投げた、パラナミオの魂の叫び、鼻水と号泣付き
 
 即座に僕
 スアに思念波で、学校のシングリラン先生に欠席連絡をいれてもらいました。

「パパ、パラナミオすごく頑張りますから!」
 まだ涙の後残ってる顔で、笑顔作りながら、パラナミオは僕に抱きついてきた。

 僕も大概甘いなぁ
 でもまぁ、休んだ分、しっかり学校の補習というか、プリントはやるんだよ?
「はい! わかりました」
 って、パラナミオ、今度はすごくいい返事だったわけです。

◇◇

 その後、
 調理を終えた僕らは、スアの転移魔法でバトコンベへ
 スアの転移魔法で
 店の調理室の一角をバトコンベに置きっ放しにしてある出店のすぐ後ろの空間とつなげて貰い
 僕は、弁当の束を抱えて出店の裏から顔を出したんだけど

「おぉ! コンビニおもてなしの店員さんが来たぞ」
「弁当だ! 昨日のあの弁当が届いたぞ」
 って、僕が姿を見せるのと同時に、出店の前から大歓声が

 って、何!? この行列!?

 僕が来たのは、試合開始のまだ3時間は前だっていうのに、
 コンビニおもてなしの出店の前にはすでに長蛇の列が出来てて……よく見たらこの列、観客席にまでなだれこんで、相当なものになってるわけで……

「昨日食ったら、すっごいうまかったんだよな、ここの弁当」
「おい、10個買うぞ! 早く売ってくれ」
「おいおい、買い占めは辞めてくれ、俺は昨日買えなかったんだぞ」
 
 僕が弁当の第一便を持って来たもんだから
 その待ってる皆さん、売ってくれの大合唱が始まったわけで……

 その以上に気がついたスア
 すぐにバトコンベ側に来てくれたんだけど

 その超絶人だかりを見て即座にUターン、って、おい!?
 ……まぁしょうが無い、ただでさえ超絶対人恐怖症で、店員であるヤルメキスや、猿人らとも最近になってようやく打ち解けてきたくらいなんだし……

 ズリズリ……

 なんて思ってたら
 なんか足下に動く木箱が出現

 それと同時に、転移用魔法陣の向こうからスアのアナザーボディ4体が出現し、出店用に準備していた弁当やパンなんかをどんどん運び始めました。

 うん、スア
 対人恐怖症ゆえに、その木箱の中からアナザーボディを操作しているらしい。
 視界は、各アナザーボディの見えているものを脳内にとりこでいるとのことだったので、本人は視界がなくても操作可能って、言ってたもんな。
 本当に、頼りになる奥さんです。

 って思ったら
 なんか木箱がごたごた動いた……
 これ、スアが照れて体をくねらせたな?

 と、まぁ、
 こうしてなし崩し的にバトコンベでの出店の営業開始となり
 開始と同時にクライマックス突入だったわけです。

 ここで、スアのアナザーボディが大活躍。
 客からの荷物の受け取りと、包装
 不足品の補充
 客の列の整理整頓と
 声は出せないものの、その身振り手振りを駆使しながらめまぐるしく動き回ってくれています。

 で
 僕の横では、
「ありがとうございます、これが商品になります!」
 パラナミオが、僕がお金の計算が終わった商品をアナザーボディ達と一緒に袋詰めしながら、
 お客に手渡し、何度もお礼を言っています。

 ちなみに、
 その服装は、昨日スアとおそろいで買ってあげた白いワンピース。

 ……っと
 いかんいかん、昨夜同じワンピース姿で僕の夜の相手をしてくれたスアのことをつい思い出して
 あだだだだ!?
 す、スアさん、木箱ごと足に激突してくるのは辞めてくれませんかね!?

 で、まぁ、
 そうやって僕の横で頑張ってるパラナミオの姿を見て、
「娘さん、いい笑顔で頑張ってるねぇ」
「お父さんも、嬉しいんじゃないか? 娘に手伝ってもらえて?」
 といった具合に、お客さんからも冷やかしの声多数で

 僕、そんな声をかけられる度にデレンデレンなわけで……
 ……えぇ、親ばかですが、何か?


 しばらくしていると、
「なんじゃ、これはすごい人気じゃな!?」
 と、どっかで見た娘さんが……

 って、ああ!?
 昨日ヤルメキスのカップケーキを最初にまとめ買いしてくれた人だ

「なんと、覚えててくれたか? それは光栄じゃな。
 何、昨日のケーキが好評じゃったで、また買いにこさせてもらったのじゃ……
 決して、昨日、皆の土産用にと買った分までわらわが食べてしまったから、改めて買いに来たのではないからな」
 って、念を押すこのお嬢さん。

 はいはい、今日はカップケーキもしっかり準備してるから
 今度はつまみ食いし過ぎないで、みんなにも配ってあげてね

「だから、違うと言っておろう!」
 そのお嬢さん、顔を真っ赤にして反論。

 結局、自分の番が来たら
「土産用に30個と……別の袋に10個いれてほしいのじゃ」
 って、お嬢さん

 はいはい、ご自分用に10個ってことだね。
 
 パラナミオが、一生懸命数えて袋詰めしてくれてたんだけど
 その10個の袋の方に、僕はそっと1個追加
「……お、おい、いいのか?」
 って、それに気づいたお嬢さん。

 僕は、にっこり笑って
「昨日もたくさん買ってくれましたしね」
 パラナミオに品物を渡してもらった。

 そのお嬢さん
 それに笑顔で応えてくれて
「コンビニおもてなし、しかと覚えておこう。今度店にも寄らせてもらうぞ」
 右手を振りながら帰って行ったんだけど

 ウチの店
 このバトコンベからすっごい遠いんだけどね。

「パパ、次のお客さんが待ってます!」
 そのお嬢さんを見送ってたら、パラナミオが慌てた様子で僕の裾を引っ張りまして
 で
 目の前には、相変わらずの人だかり……

 僕は、
「はい、お待たせしましたぁ」
 って、営業スマイル全開で接客を再開。

 
 ……しかし
 元いた世界で営業していた頃は、いつも閑古鳥が鳴いていた店内で、一人寂しくレジで頬杖付いていたあの頃……

 うん
 そんな感傷に浸るのはこのお客の山を捌いてからだ。

 僕は、パラナミオと一緒に接客を続け
 その周囲を、スアのアナザーボディがせわしなく動き回って

 そんな出店の外では
 お日様が、そろそろ高くなり、会場からは今日の予選開始の合図が聞こえてきたわけです

 で

「どなたか……どなたか……お助け願えませんかぁ!?」
 なんか会場の方から、女性の声が響いているような、いないような……はて?

しおり