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コンビニと魔女の家 その1

 上級魔法使い達をコンビニおもてなし3号店から追い出して数日後

 例の上級魔法使いのお茶会倶楽部から、何やら封書が届いた
 妙にゴテゴテしいそれを開けてみると、中には便せんが1枚


『絶縁状

 コンビニおもてなし様には、ろくに魔法を介していない輩が多数出入りしておられますゆえ
 我ら上級魔法使いのお茶会倶楽部は、貴店と絶縁することをここに宣言し、以後、全ての上級魔法使いが貴店へ出入りすることを禁止することを合わせて、ここに宣言します。

 なお

 ど~しても、この宣言を撤回してほしいと、
 我ら上級魔法使いのお茶会倶楽部と仲良くしたいと、心の底から望むのであれば、
 先日の非を伏して詫び、中級以下の汚らわしい魔法使い達をその店から排除するならば、こちらとしても、絶縁を撤回することもやぶさかではありません』

 と、まぁ
 絶縁部分よりも、仲良くしてほしいってな部分の方が若干長い
 不思議な絶縁状だったわけなんだけど

 裏をかえせば
 これで、上級魔法使いは、ウチの店にはこないってことだよね?

 そう言う僕に、
 スアもにっこり頷いた。

 僕は、この絶縁状を、店に来ていた中級以下の魔法使い達に見せた。

 すると
 魔法使い達は、一様に動揺した。

 どうやら僕が上級魔法使いのお茶会倶楽部と仲良くするために
 自分達を排除するのでは、って思ったらしい。

 逆、逆
 僕は、あんな上級魔法使いのお茶会倶楽部となんて手なんか組まないよ。
 これからも、君たち中級以下の魔法使いを相手に店をやっていくからよろしくね。

 そう言うと

 店内にいた魔法使い達、大歓声!

 皆、声を上げて喜んで
 中には、涙を流しながら抱き合ってる魔法使い達もいる

 なんか、すごい感動ぶりだなぁって思ったら
「その絶縁状を叩きつけられて……それを平然と受け流した方は……この世界初ですよ、間違いなく!」
 魔法使いの1人が、涙流しながらそう教えてくれた。

 僕は、そんな魔法使いにハンカチを渡してあげた。
 すると、その魔法使い、
 そのまま鼻までかんでから僕に返してきた……おい

 で、まぁ
 これからも君らを相手に商売するんだから、たまには本も買ってくれよな

 って
 なんでそこでみんなそっぽ向くかなぁ


 とまぁ
 一悶着を乗り越えて、コンビニおもてなし3号店はどうにかこうにか起動にのっていきました。

 相変わらず
 本を買ってくれる客よりも、立ち読み客の方が何十倍も多いのが難点だけど
 
 ここで、商品販売コーナーが思わぬ活躍を見せています。

 最初は
 本を読む待ち時間の腹ごしらえとして、弁当やパンを買っていた魔法使い達

 それが
「……この弁当って、街の食堂のご飯よりおいしくない?」
「このパンも……こんなにふっくらで柔らかなパンなんて見たことないよ」
 と徐々に魔法使い達の中でも話題になっていき

 いつしか
 本よりも、この弁当やパン目当ての魔法使い達が殺到し始めたわけです。

 本は、安い物でも、1冊約1万円くらいからしちゃくけど
 弁当やパンは、数百円なもんだから、魔法使い達、こっちでの財布の紐はゆるゆるだったわけで。

 で

 そんなある日
 僕は、コンビニおもてなし3号店の外に、なんか見知らぬ巨木が立ってるのに気がついた。
「今朝、いきなりここにあったのですよ」
 と、木人形メイドのエレも、すごく不思議そうな声をしている。
 で、僕、
 その巨木を眺めながら、思わず目を見開いた。

 ……ちょっと待て……これ、見覚えあるぞ

 そう思って僕が駆け寄ると
 案の定、それ、スアが住んでる巨木の家、プラント魔法がかけられた巨木と同じ種類の巨木だったわけです。

 案の定
 その木の根元には扉がついていた。

 ノックしてみると、その中には、中級と初級の魔法使いの姉妹がいたわけで
 ノックされて、おずおずって感じで出てきた。

 2人は、僕がここの店長だっていうのがわかったらしく
 2人揃って頭を下げると
「……こ、ここに住んじゃえば、美味しい弁当やパンも食べられるし、本もたくさん読めると思ってものですから……勝手に来ちゃってごめんなさい」

 よくよく話を聞いてみると、この2人、
 なんでもかなり北方の森から、わざわざここまで引っ越してきたらしい。

 数日前
 このコンビニおもてなし3号店の書店コーナーの噂を聞いて
 2人とも、いてもたってもいられなくなって、とりあえずやって来てみたところ
 その本の数と、何より、上級魔法使いのお茶会倶楽部がのさばっていないことに感動し
 今までずっと、ここに居座っていたらしい。

 で

 いっそ引っ越してしまえ、って、思っちゃったのかな?
「……本当にごめんなさい……あの、すぐ元の森に戻りますので」
 2人は、シュンとしながら巨木の家の中へ戻っていく。

 っていうか、待ちなさいって、

「「え?」」
 とりあえず、2人を呼び止めた僕は、エレを呼んだ。
「エレ、このあたりってさ、たとえば移住してこようとした場合、何か手続きとかいるのかい?」
 そう僕が聞くと、
 エレ、なんか困惑したような表情を浮かべ
「この一体はご主人様の土地ですので……それはご主人様がお好きなようにお決めになればよろしいのでは?」
 って、言ったわけです。

 あぁそうか
 この一体が、何にも無い火山地帯なもんだからすっかり忘れてたけど
 お屋敷周辺だけじゃなくって、
 この火山一体が僕の土地だたね、そういえば

 というわけで
 僕は、2人を前にして
「ここに住むことを許可するよ。
 ただし、タダってわけにはいかない」
 そう言うと、すごく不安そうな顔をする2人。
「あ、あの……私達、すごく貧乏なので……お金はあんまり」
 そういう2人の僕は、移住代として100円/僕の世界の通貨換算を請求させてもらい、
「あとは、なんか儲かった時にでもさ、気持ちでいいから、いくらかでも支払ってくれればそれでいいよ」
 そう2人へと告げていった。

 すると2人
 顔をぱぁっと輝かせて
「すぐ取ってきます!」
 って家の奥に走って行った。

 待つこと少し
「じ、じゃあ、これで」
 そう言いながら、姉らしい中級魔法使いの女の子が
 満面の笑みで僕の手に硬貨を1枚。

 それを確認した僕は、
「じゃ、これからよろしくね」
 そう言ってニッコリ笑った。

 トントン

 ん?

 トントン
 トントン
 トントン

 なんだなんだ?
 僕の肩を、なんか一斉に叩くの、やめてくれないかな
 そう言いながら振り向くと

 僕の後ろには十人近い魔法使い達の姿があった。

 で

 よく見るとその魔法使い達
 全員、その手に僕の世界の100円に相当する硬貨を持って、にっこり笑ってる。

 で

 更によく見ると、その魔法使い達一同の後ろには、
 魔法使い一同の数だけの巨木がすでにその場に鎮座してまして……って、おい!?

 しかも、なんだぁ!?
 更にその向こうの方をよくよく見たら
 なんか、森の一部が、なんかこっちに向かって移動してきてる……ていうか……
 まさかあれ全部、ここに引っ越してこようとしてる魔法使いの巨木の家達なのか、おい?

 僕は、思わず背中に嫌な汗が流れるのを感じたわけで……

◇◇

 数日後

 えぇ

 すごいことになってますよ
 コンビニおもてなし3号店の周囲。

 あの後
 結局30戸近い巨木の家が、コンビニおもてなし3号店が入っている屋敷を中心に
 その周囲をずらっと取り囲むようにして、その場に根を張っています。

 そのおかげで
 それまで、屋敷と、プラントの苗木による緑がその周囲にあったくらいの
 殺風景だったはずの、この屋敷の一帯が、まるでちょっとした街のようになっているわけです、はい。

 で、まぁ
 そこに住んでる魔法使いがしている事って言えば、
 コンビニおもてなし3号店の書店コーナーで立ち読みなんですけどね。

 まぁ、以前から、夜中だろうがお構いなしに列を作ってる魔法使い達が
 森に住んでいる魔獣達に襲われたら……とも思っていたので、こうして店のすぐ側に家があれば、そんな心配もしなくていいか、とか思っていたら、

「……みんな、転移魔法使ってるし……ここの周囲は……私が結界貼ってる、から安心だ、よ?」
 と、スア。

 ……そりゃそうだよな
 いくら本が読みたいからって、森の中をかき分けて歩いてくる魔法使いなんているわけが
「……8人くらい、かな?」

……いるのかよ!?

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