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土地とお屋敷と木人形と蜥蜴もどき その6

 数日たったある日
 ゴルアが、駐屯地の買い物を兼ねてコンビニおもてなしに姿を見せた。

「店長殿、いかがですか、あの恩賞の地は?」
 僕の顔を見るなり、そう言いながら、カラカラち笑うゴルア。

……おいおい、あんなすごい土地を僕にあてがっておいて、よく言うな
 これは一言言わしてもらわねば、そう思っている僕に、ゴルアは

「あそこは良いでしょう。火山の脇とはいえ湖に面しており、船遊びも満喫出来ますし」

……はい? 湖? 船遊び?
 面してっていうけど、あの周辺って周囲全てが山・山・山、でしたけど?

「小さいながらも、食堂を兼ねた雑貨屋も近くにありますし、なかなか便利でありましょう?」

……は? 食堂? 雑貨屋?
 あの山の中にそんな物があったのか?……ってか、そんなことエレも全然言ってなかったけどなぁ……

「近くに街道もありますし、交通の便もよい場所ですしな」

……は? 街道?
 道なき道をかきわけて、片道徒歩3時間はかかりますけど?

 ゴルアの言葉に
 ことごとく首をかしげながら、言葉を返していく僕

 そんな僕に、ゴルアもまた首をかしげながら

「……あの……店長殿は、いったいどこ土地の話をされているのですか?」
 そう聞いてくるので
「そりゃ、ゴルアがこないだ話を持って来てくれた恩賞の土地のことに決まってるだろ」
 そう言い返す僕

 そんな僕の言葉に、ゴルアはきょとんとしながら
「は?……あの……片道徒歩3時間? ……ですか? 周囲が山だけ……? え?」
 そう言いながら。腕組みし、考え混み始めた。

 しばし考え込んだゴルアは
「……おかしいな……あのあたりは、山鼠が群生している以外は特に問題ない土地のはずなんだが……」
 そう、ボソッと呟いた。

……チョットまて
 ゴルア、今なんか怪しい言葉を口にしなかったか?

 そんな僕の前に、スアのアナザーボディが近寄って来て、1枚の紙を手渡した。

『山鼠
 山間部に群生する害獣
 野菜や果物を食い荒らし、食料となり得る物が無くなるまでその地に居座り
 食べる物がなくなったと判断したら他の土地へ移住していく。

 時に、人間の家に中にまで入り込む。

 ドブや下水も徘徊するため、病原菌の運び屋となることも多く、忌み嫌われている存在である』

……ちょっと待て
 こんなのが群生している土地を、僕にくれようとしてたってのか?

「い、いやいや、違うのだ店長殿
 決してだな、我々辺境駐屯地に相談が持ち込まれたものの、相手が小動物なため手に負えなかった案件を、店長殿とスア殿になんとかしてもらおうとか思ってなぞ、決して!? 微塵も! これっぽっち思っていなかったわけでだな……」

 ……おいおい
 ゴルアさんや、おもいっきり本音が駄々漏れてないか? おい?

 で

 まぁ、それは置いといて
 
 お互いの話がまったくかみ合わないため
 僕は、ここでゴルアから渡されてた恩賞地の地図を手渡した。

「その地図どおりの場所に行ったんだよ。
 ほら、その地図のどこにも湖なんてのってないだろ? 街道ものってないしさ……」
 そう説明する僕の目の前で

 なんかゴルア
 真っ青になってます。

 しばし地図を凝視し
 プルプルとその肩を振るわせてたゴルア。

「……て、店長殿……すまないが、少し時間をくれないか?」
 そう言うが早いか、ゴルアは血相を変えて店を飛び出すと、乗ってきた馬を走らせて駐屯地へと戻っていった。

 ……一体なんだったんだ?

 もう、呆れるしかない僕を残して消えたゴルア。

 で

 そんなゴルアが、改めてコンビニおもてなしを尋ねてきたのは4日後

「本当に申し訳ありませんでしたぁ」
 なんかゴルア
 来店するなり、土下座した。

 困惑する僕のことなどお構いなしに土下座を続けているゴルアは
「どうか許して欲しい……全ては私の監督不行き届きが原因だ」
 そう言いながら、頭を下げ続けている。

 ……あの……ゴルアさん
 せめて事情くらいは話してもらえませんかね?
 僕にはさ、なぜ君が土下座しているのか、さっぱり検討が……いや、うすうすはわかってるんだけどね?

 そう言う僕に
 ゴルアは頭を上げると

「本当に申し訳ない……あの恩賞地の手配をした文官が、どうやら間違った場所を登記してしまっていたようなのだ……」
 そう言い再度土下座するゴルア。

 うん?
 待ってよ

 つまりさ……あの土地は、本来僕の物ではないってこと?

「……まぁ、そうなるな」
 僕の言葉に、腕組みしながら応えるゴルア

 ……いや、あのさ……
 そんな冷静に返答されてもさ……

 すでにあの土地で、僕らあれこれやってんだよ?
 エレにもあれこれ作業してもらってるし、プラントの苗木も植えまくってるしさ……

 そう言う僕に、ゴルアは困惑しながら

「……しかし、あの土地は、実際問題として他の所有者がいる土地なので……」
 そう言い、腕組みしながら考え込んでいく。

 その言葉を聞いた僕は
 ふと、エレが言っていた言葉を思い出した

「ゴルア、あのさ……あの土地ってさ、所有してる貴族が当分訪れてないらしいんだ」
「え? そ、そうなのですか?」
「うん、屋敷にいた木人形が言ってた。
……で、物は相談なんだけど……所有者の貴族に、あの土地と、僕の恩賞地を取り替えてもらうよう交渉……とか、してもらったりは出来ないかな?」
 そう申し出た僕に、ゴルアはびっくりしたような表情。

「店長殿……あ、あの辺鄙な火山地の土地をがほしいと言われるので?」

 いや、欲しくはないよ。正直言えば。
 でもさ、もうあれこれ手を加えた訳だし
 それに、短期間とはいえ、木人形のエレともあれこれ交流しててさ
 なんかもう愛着もあるわけだし……

「わかりました、早速その方向で話をしてみましょう」

 そう言って駐屯地に戻っていったゴルア

 待つこと1週間

 間に、1度、屋敷を訪れた。
 土地問題のことはあえて忘れて、
 プラントの木の成長具合を確かめ、エレの料理を食べて帰宅した僕たち。

 そんな僕らの前に、
 ゴルアは満面の笑みでやってきた。

「店長殿、お喜びください!
 なんと、あの土地を所有していた貴族なのですが、収賄の容疑で逮捕されており、すでに貴族の権利を剥奪されておりました!」

 ……すまない、ゴルア
 それ、どう喜んでいいいんだ?

 困惑する僕を前に、ゴルアは

「それでですな、あの土地もすでに所有権が貴族から放棄されており、台帳上『所有者無』の空き物件扱いになっていたのですよ……それで、早速駐屯地として取得手続きを行っており、後日正式に店長殿へ譲渡出来る運びになりそうです」
 そう言い、笑うゴルア。

 まぁなんだ……剥奪云々と、笑うに笑えない話も含んではいるものの
 とりあえず、こちらの希望通りに話が進みそうで何よりだよ……

 あ、でも
「掛かった費用は支払うよ……こっちが我が儘言ったんだしさ」
 そう言う僕に、
「いえいえ。これはもうこちらの手続き上のミスでありますので、そこはご心配くださるな」 
 そう言うゴルアなんだけど

「……今回の罰金として、すべて我らの給料から天引きして支払われますゆえ」
 最後にボソッと呟いたゴルアの一言が気になったんだけど

 まぁ無視しますがね。

 で、まぁ

 こうしてあの土地が間違いなく僕の物になったわけです、はい。

 ……もっとも、今まで僕の物じゃなかったっていう方がびっくりなんですけどね

 そう言い、苦笑する僕に、ゴルアは
「……ところで店長殿、スア様のお力をぜひお借りしたい案件がございまして……」
 そう、おずおずと話してきたので

 僕は
「なんだい? 山鼠の件以外なら相談にのるよ」
 そう、満面の笑みで応えてやった。

 ゴルアが、12分36秒、無言で固まったのは、まぁ、言うまでも無かったわけです、はい。

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