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土地とお屋敷と木人形と蜥蜴もどき その4

 パラナミオが我が家にやってきてから1週間がたった。

 どうも山賊達にこき使われていた記憶がまざまざと残っているためか
 とにかく何か手伝おうとしてきます。

 そんなパラナミオ、
 先日、狩りに行こうとするイエロに
「お手伝いします!」
 っていつもの調子で駆け寄って言ったことがあったんだけど、
 何を思ったのか、イエロ、
「おぉ! 勇ましいでござるな、では一緒に参ろうぞ」
 って、これを了承しちゃったのですが……

 どうもイエロ
 パラナミオが、子供とは言え、サラマンダーなんだからそれなりに戦えると思ったらしく……

 で

 そんなパラナミオは、
 出くわしたタテガミライオンに追いかけられて、木の上に逃げ込んで大泣き。
 その声を敏感に察知したスアが、転移魔法で駆けつけて、その一体に巨大なクレーターを作り上げたのは……あ、すいません、今の部分、カットでお願いします……組合でも、ちょっと問題になってる案件なんで……

 で、大泣きしたままのパラナミオを抱きかかえながら戻ったスアは

 イエロを正座させて、コンコンとお説教。

 なんか、
 あの対人恐怖症のスアが、イエロにコンコンと説教してる姿って
 なんか新鮮というか、貴重と言うか……

「ご主人殿……見てないで取りなしてほしいでござる」
 って、僕に助けを求めてきたイエロなんだけど

 イエロさん

 パラナミオを危険な目に遭わせたことについては、
 ボクもスア並みに怒ってるんだけど、参戦して良いのかい? 答えは聞いてないけどさ

 で

 この日、2人がかりでしこたま絞られたイエロなわけで


 でもまぁ
 うかつに手伝うって言ってしまうパラナミオにも問題はあるわけなので

 とりあえずパラナミオには、お手伝いは、僕とスアの許可をとってからにするよう、しっかり言い聞かせ

 僕から、店の掃除の手伝いをお願いすることにしました。

 外の窓拭きと、周囲の掃き掃除

 まずはこれだけをやってもらったところ、
 パラナミオ、すっごい張り切って頑張ってくれました。

 こと掃除に関しては、筋もいいし……って
 あぁ、そっか……奴隷扱いされてたときもやらされてたのか……そう思ってしまうと、掃除をやらせるのもどうかな、って思ってしまうんだけど
「私、この仕事ならお役に立てます! 私、……の、役に立ちたいです」
 そう言いながら、良い笑顔で笑ってくれる姿って、なんかこっちまでうれしくなっちゃうんだよね

……ただ、パラナミオ
 なんかときどき、よく聞こえない言葉を発するんだよね。
 さっきの会話で言えば

『 私、……の、役に 』の、……の部分とか

 よくよく気をつけて聞いていると
 ボクとスアを呼ぶときに、その、よく聞き取れない言葉を発しているのがわかった。

 この日は、
 エレがいるお屋敷に行く日だったので、その向かう途中に、その事について聞いて見た。

「パラナミオ」
「はい! なんですか?」
「パラナミオってさ、ボクとスアを呼ぶとき、なんか小さな声で言ってるよね? よかったら何を言ってるのか教えてくれないか?」
 そうボクが言うと、パラナミオは、なんか恥ずかしそうにうつむいて。
「ご、ごめんなさい……あの、ご主人様のことを……『パパ』って、こっそり呼んでました……」
 そう言うと、今度はその視線をスアに向けて
「奥方様の事は……その……『ママ』って……」
 そう言うと、真っ赤になってうつむいていった。

 なんなのよ、この、スアの次に可愛い生き物は!

 思わずボクはパラナミオを抱きしめた。
 そのパラナミオを、スアも抱きしめていく。
「呼びたかったら、堂々とそう呼んで良いから」
 ボクがそう言うと、パラナミオは、その目から涙をボロボロこぼしながら
「ホントに……ホントにいいんですか? 私みたいな奴隷が、ご主人様をパパって呼んでも……」

 あ~もう!
 だからパラナミオ、君はもう奴隷じゃないんだから! 
 そう言いながら、ボクはもう一回パラナミオを抱きしめた。

 ボクとスアに抱きしめられながら
 パラナミオは、ボクの頭に抱きつきながら、ワンワン泣いていった。

 ひとしきり泣いて、ようやく落ちついたパラナミオと手を繋ぎ
 僕たちは、先週来たばかりの火山の麓の屋敷へ到着。

 今回は
 前回と違い、おもてなし1号で行くことが出来る限界のあたりで、スアの転移魔法を使用。
 おかげで、片道3時間はかかった道のりを一瞬で短縮出来、あっという間に屋敷に到着しました。

 で

 1週間ぶりにやってきてびっくりしたんだけど

 1週間前には
 はげ山の裾野にぽつんと屋敷が建っていただけのあの一帯なんだけど

 今は
 屋敷の周囲が緑で覆われてまして……え?

 びっくりしながらよく見てみると、その緑って
 先週、スアがここを去る前に植えた、プラントの苗木達だったわけです。

 まだ幼いとはいえ、すでに5m近くまで大きくなっている苗木達。

 エレは、僕たちの横で
「しっかりお世話しておりました」
 そう言いながら、ペコリと頭をさげていった……エレ、なんかすごいな……

 とにかく
 こうしてプラントの苗木が育つのならば、この一帯にも利用価値が出てくるわけです、はい。

 今、大きくなり始めている苗木がしっかり成長したら、早速ここで新しい野菜や果物の増殖や、売れ行きが好調な、高級紅茶葉の増産を行って行こう、と、いまからあれこれ考え始めてるわけです。

 こうして、プラントの苗木の状況を確認してから
 僕らは屋敷の中へと移動した。

 すると、屋敷の中は、先週来た時よりもかなり綺麗になっていた。

 エレは
「新しい主様がお見えになったものですから、つい頑張りすぎました」
 そう言いながら後頭部に右手をあてがっていった。
 おそらく、人間だったらここで照れ笑いでもしているところなんだろうけど
 木人形のエレは、表情がほとんど無いため、そのあたりは想像するしかないわけで……

 で、そんなエレが
「ちょっとご確認いただきたいのですが」
 そう言いながら、僕たちを連れて行った先に

 温泉がありました。

 先週、水たまりみたいにわき出していた屋敷裏の温泉の源泉を使い
 その周囲を木枠で囲み、小さな小屋状にしつらえてあり、水たまり状だった温泉の周囲は、火山の脇に転がっていた岩をうまく使って湯船っぽくしてありました。
 その一帯は、ちょっとした岩風呂っぽい感じになってて、見た目もなかなかいい感じです。
「この木の板はどうしたんだい?」
 そう僕が尋ねると、エレは
「先週退治しました盗賊達が根城としていました洞窟を発見しましたので、そこにありました見張り櫓に使用されていた板を流用いたしました」
 そう言って、ペコリと頭をさげた。

 っていうか、この1週間でここまでやっちゃうなんて、エレってすごいな
 そう、つくづく感心した僕だったわけです。

 で

 せっかくなので、僕とスア、それにパラナミオの3人でさっそく温泉に。
 
 僕たち以外に人がいないので、混浴といいますか、家族風呂の様相で3人で湯船に。
 岩の湯船は3人で一緒にはいっても全然余裕で、まだ5人くらいは楽に入れそうだ。

 硫黄の匂いがすごいため、それを抜くための換気扇もしっかりつけてあり、常時稼働している。

 硫黄の結晶なんかがあちこちにあるんだけど……
 僕に知識があれば、これらを使って火薬だのなんだのを作ってあれこれ出来るんだろうけど

 何しろ、チートっぽい能力は皆無な僕にそんな事など出来るはずもなく
 僕は、ひたすら、スアとパラナミオと一緒に温泉を満喫したわけです、はい。

 お風呂から上がると、
 エレがその入り口のところで、待っていて
「お食事の準備が出来ています」
 って

……え? マジ?

 先週は何も材料がなかったせいで、料理は一切出来なかったはずなんだけど……

「今回は、主様が1週間後にお見えになることが確定しておりましたので、あれこれ材料を集めておきました」
 そう言い、再び頭をさげるエレ。

 なんつうか、やっぱすごいなエレ。

 で
 そんなエレに案内されたリビングの机に上には

 でっかいお肉を焼いてスライスした物
 山で自生していたらしい野菜のサラダ
 その野菜を使ったスープ

 そんな料理が人数分並んでいました。

 見た目はかなり大雑把な作りに見えた料理達ですけど
 味はどれもなかなかな物で、味付けもしっかりしてあり、すごく良い感じです。

「パパ、ママ、これすごくおいしいれふ、おいしいれふ」
 パラナミオも、すぐに気に入ったらしく、
 家で僕のご飯を食べる際と同じように、バクバク食べていきます。

 パラナミオの食べ方は
 以前の手づかみから、フォークを使用するように改善されてはいますが
 基本はかき込みです。

 でも

 そのかき込み方が、見ててすごく気持ちいいといいますか、
 バクバク口にかき込み、頬まで膨らむほどにかき込んでから、モグモグかみ砕きつつ、嬉しそうに微笑む姿は、見てるこっちまでぽややん♪とした気分になれるんです、はい。

 まだ2回目だけど
 このお屋敷に遊びに来るのも、案外悪くないな、って
 そう思え始めた今日この頃なわけです、はい。

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