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陰謀8

 洞窟の屋敷を出て街道に出る森で狗は足を止めた。確かにつけられている。狗は飛び上がると枝に乗った。忍びが10人後から走ってくる。これは服部だ。先頭の下忍が足を止めて地面に耳を付ける。次の瞬間全員が伏せる。するとその下忍が見えているように手裏剣を投げる。
 狗はもう次の木に移っている。そこに目がけて鋭い短刀が突き刺さる。正面の木にいるのは揚羽だ。どうしてここに揚羽がいる。
「もう逃げれないよ」
「服部と組んだ?」
 宗矩と光秀の密約が早くも弾正に伝わったのだ。と言うことは狗達は八方塞がりと言うことになる。京之助を使わずに服部を使ったのだ。それでまず狗を消そうとしている。木を伝うが揚羽はきっちり追いかけてくる。服部も手裏剣を投げてくる。このままでは崖まで追い詰められる。
 思い切って地面に降りて服部の2人を切る。それからがむしゃらに走り出す。狗の足に敵う者はいないはずだ。だが森の中の道の前に服部が網を仕掛けているのが見える。これは罠を仕掛けられたのだ。煙玉を投げて崖に転がる。揚羽の一撃が髪をかすった。
「もう逃げれないよ」
 それが最後の声だった。
 狗が目を覚ましたのは2日が経っていた。覚えているのは揚羽の次の一撃を受ける前に自分から崖に転がったのだ。そのまま川の流れに乗った。それから狗の記憶がない。
 狗が次に目を開けたとき目の前にはたき火が燃えていた。洞窟の中のようである。
「目が覚めましたか?」
 前にいるのは蝙蝠だ。
「襲われているところを見つけたのですが、そのまま川に飛びこんでしまったのです。それで川に下りて一緒に流れました。服部が山の上から追っていました。1刻流されてようやく引き上げて川から離れたここに」


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