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反逆2

 狗は一度屋敷を出て下忍を逃げ道に配置した。それから潜ませている女中に変化があれば年寄りに調べるように指示した。それから鼠に揚羽が動くか調べるように伝えた。女中から夕方弾正が出かけるようだと報告があった。それで下忍を出入りを見張らせる。何か変化があったのだ。念のため京之助にも逃げ道に応援を頼んだ。
 陽が落ちた頃籠に乗った弾正が30人の侍を連ねて色町に入った。もちろんその周辺に弾正の下忍が10人ほど張り付いている。料亭に入ると天井裏や庭に甲賀の気配がする。勝手口から鼠の合図があった。鼠は物置から隣の部屋に連れて行く。ここは荷物が積まれていて空き部屋になっているようだ。
「揚羽の部屋に弾正が入りました」
 鼠も意外だったようだ。鼠が天井の下にある穴を指した。彼女が空けたようだ。
「今まで弾正との接触はなかったと思います。先ほど弾正の侍が初めて揚羽に文を渡したようです」
 ちょうど頭巾をかぶった侍が入ってきた。弾正の生気は戻っている。
「まさか家老自身がお目見えとは?」
「お家の一大事ですからな」
と言いながら頭巾を脱いで布に包まれた手紙を出す。弾正は黙ってそれを見る。
「近江をお望みか?それはいい。だがなぜ時間がかかる?」
「まだ周辺豪族をまとめきれていない。何しろ同盟相手が弾正殿ですからね?今のところ2千を京に送れるが?」
「こちらは3千だ。織田の奉行は2千がいいところだろう。信長はしばらく岐阜から動けないだろう」
「弾正殿は実質近畿を任されているのになぜそこまでする?」
「信長はいつ使い捨てるか分からん。それに儂は自分の思い描く世界がある」
 話が終わると揚羽が入ってくる。お膳と飲み物が運ばれてくる。天井裏に甲賀が10人ほど潜んでいる。廊下、庭には弾正の下忍が5人いる。やはり弾正は2度目の反逆を起こす気だ。


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