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秘密11

 弾正が兵を2千連れて京に出発した。信長も上洛すると言う話だ。筒井は織田に弾正との争いをやめるように釘を刺されている。今回は京之助を大和の城下町に迎える。念のために彼には揚羽も会わさず年寄りも使わず狗自身が迎えた。弾正自身が城を空けているので町はひっそりしている。旅籠も別の宿を取った。
「お一人ですか?」
「一人と言えば一人だが、私の周りには柳生の忍者が付いている。破門されたと言っているが順慶さまもご存じだが柳生の密偵だ」
「柳生にも忍者がいるのですか?」
「ああ、柳生も強国に挟まれて生きるのが大変なのだ。一時松永についていた頃もあった。だが弾正は信じられない。それで順慶さまに乗り換えた」
 話をしながら城周りを歩く。
「弾正は織田を裏切るだろうな」
「なぜ?」
「私は一時弾正の元にいた。恐ろしい男だ」
「天守閣に入ったことは?」
「ない。まだその頃は今の城はなかった。だが彼の周りには白髪の老人がいる」
 それがあの修験者の頭領だ。急に笛が鳴った。木の上から忍者が降ってきた。京之助が鮮やかに一人を切り倒す。狗は転がって刃を躱す。7人だ。そのうち2人は修験者だ。木の陰にいるのはあの胡蝶だ。体が痺れてくる。
「狗別方向に逃げるのだ。あの巫女は恐ろしい」
というなり京之助は脱兎のように駆け出す。狗も反対方向に駈け出す。藪の中から鼠の合図が聞こえる。

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