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第二十八話 早速憂鬱

 今後の方針……か。何か緊張するな。

「すまないが、ここまで君を駆り立てといて悪いけど、まだ君が俺たちの組織に入ることは正確には決まってないんだよ」

「へ?」

 俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。

「え? どういうことですか?」

「ちょっと言い方が悪かったかな。君だけじゃなくて、他に俺たち教官が推薦したやつらすべてがまだ正確に入れるとは決まってないんだよ」

 俺はこの言葉を聞いて、それが何を意味しているのかすぐにわかった。

「何かテストみたいなものがあるんですね」

 それを聞いて、シンさんは小さくうなずいた。

「そゆこと。このテストの合格ラインを越え、総督が認めれば晴れて俺たちの仲間入りだ」

「テストってどんなことするんですか?」

「んー……詳しくは教えられないんだけど、まあだいたい基礎体力テストと戦闘テストだと思うよ。これは総督とAIによって考えられるから、俺たちもあんまし知らないんだよね」

「そうですか」

「じゃ、話し戻すけど、このテスト、例年500人ほど受けるんだけど、毎年20人ぐらいしか通らないんだよね。少ない時はもっと少ないし、0人のときとかもあったかな」

 え? やばいじゃん。この組織入るのって確か、武術や剣術の達人の人たちなんだよね。

「あのー……俺って受かるんですか?」

 すると、爽やかな笑顔でこう返された。

「まったく受からないよ。ていうかそもそも今の君の実力じゃビリ確実だよ」

 俺は普通にショックを受けた。いや、まあ俺もそんな達人たちの中、そんな上じゃないと思ってたけど、こんなに清々しく言われると、逆にへこむわ。

 シンさんはそんな俺を見て、ハッキリと言い放つ。

「でも、大丈夫。俺が必ず君を強くする。そして必ず、テストに合格させる。必ずだ」

 その言葉には少し信念みたいな、強い気持ちを感じた。

「君がこのテストを受けるのは2年後の4~5月頃になる。そして受ける人数はまだ未定だが、年齢は全て17~18歳となる。毎年このテストを開くから、年齢はこの年で固定しているんだ」

 なるほど。てことは高校卒業後ってことになるのか。

「そして、君にはこの2年でテストに合格するほどの実力を身に着けてもらう。覚悟するように」

 そう言って、シンさんはにっこり笑った。

「はい!! というか、他にこのテストを受ける人たちも何か訓練とか教官に着けてもらうんですか?」

「いや、特にないよ。君みたいにテストの概要は話すけど。それだけかな」

「え? 俺だけこんなに良くしてもらっていいんですか? シンさんの仕事の邪魔とかしてないですか?」

「いいのいいの。総督からも許可を得ているしね」

「へー」

 俺って意外とすごいやつなのかも。

 顔には出していなかったが、焔は内心すごく嬉しかった。

「じゃ、早速明日からビシバシ鍛えていくからね」

「はい!! よろしくお願いします!!……ってどんなことをするんですか?」

「あ、そういや言ってなかったね。ごめんごめん」

 シンさんは笑いながら、頭を掻いた。

「まずやらなきゃならないのは、筋力アップだろうね。焔君は脳のリミッターがなんか外れっぱなしだから、自分が思った以上の力が出せるようになったけど、その分、筋肉を酷使してしまうからね」

「へー。あれって脳のリミッターが外れてたからなんだ。なるほどねー……ってなんでシンさんがそのこと知ってるんですか!?」

「あ、言ってなかったけ? 体育の時見てたからね」

 はあー……油断も隙もないな、この人たちは。

「そして、AIに君のことを調べてもらったら、どうやら君はある一定以上の力を出したときに、脳のリミッターが外れるようになっちゃったみたいだね。いやー、レッドアイ様様だよ。感謝しときなよ」

 またこの人は……そういや、レッドアイって……

「あのー。もしかして、レッドアイも宇宙人だったんですか?」

「え? 違うよ……あー、なるほどね。俺たちがあの場にいたから、レッドアイも宇宙人だと思ったのか」

 うなずく焔。

「たまにあるんだよね。あまりにも解決されない事件だと行かされるんだよ。総督も人が荒いよね」

 へー。さっきから聞いてたけど、総督って良い人なのかもな。

「じゃ、明日、学校が終わったら、天満山に動ける格好で来るように」

「え? 何をするんですか?」

「山で動ける格好と言えば……やることは一つしかないでしょ」

 そう言って、シンさんはニヤニヤ笑った。その後、シンさんは俺より一足先に帰った。

 はあ。初っ端から、きつそうだな……

 俺はまだ残っていたカフェラテを一気に飲み干した。

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