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秘密7

 今回のことで筒井から思いがけない銭が出た。その後順慶の部屋に呼ばれた。
「秀吉に今回はまんまとやられたわ。弾正は高価な茶釜を送ったそうだ。京と大和を押える弾正が近畿の統括を任された。筒井は後塵を張ることになる」
「少しお尋ねしてもいいですか?」
 部屋は二人きりだ。
「ああ」
「松永弾正の素性は?」
「こちらも調べさせた。弾正は捨て子で坊主だったと言う噂もある。だがいつの間にか三好の番頭として力を発揮していた。将軍を殺したのも弾正だ。それに今は三好の生き残りを次々と毒殺しているわ。これは4姉妹の長女と言われるくノ一の仕業だ。3女は狗が殺したそうな?」
「はい。今回は2女の揚羽があの豪族を襲いました」
「2女が揚羽か?それと百地の忍者が度々修験者の襲われている。どこに棲みかがあるのか湧いて出てくる。百地では調べきれんようだが狗の方も探してくれ。これからの戦いで厄介な相手になるとみている。それと一人紹介しておこう」
 その声に合わせて襖が開いて背の高い侍が入ってきた。
「師範代の京之助だ。柳生の高弟より真剣では強いと言われている。だが破門にされている」
「一度手合わせをしたいな?」
 京之助は今にも剣を抜きそうな気配だ。
「剣だけの勝負ではかなわないです」
 順慶は今度の弾正の戦いでは彼を使うのだ。それで面透視した。それ程弾正は目の前の敵なのだ。
 半刻の密談の後急いで洞窟裏の屋敷に戻る。狗が部屋に戻ると待っていたように天井から鼠が降りてくる。
「猿は定期的にあの子捨て小屋に出向いています。どうも置手紙があったようです。その後抜け忍のくノ一が入ってきました」
「どう言う説明があった?」
「猿の捨て子時代の仲間だと言うことです」
「危険なことをするな?」
 それほど狗が邪魔になってきたのだ。きっと揚羽だ。






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