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秘密6

 北伊賀の豪族の屋敷の天井裏に潜る。2日目の未明に人の気配を感じた。狗はその間天井裏に死んだように眠っていた。不思議なことに廊下に薄明かりが灯った。廊下には寝ずの番が不用意に眠ってしまっている。その横を年配の男が近づいて襖の向こうを見ている。狗はしっかりその男の顔を覚えた。この男が手引きしたのだ。
 ゆっくりと襖が開く。黒装束が2人忍び込む。実は頭領には昼には密かに会って筒井の家老の文を見せている。黒装束の後からもう一人入ってくる。これが揚羽だろう。狗は煙幕に火をつけた。揚羽が剣を抜いた。ほとんど同時に狗が煙幕とともに飛び降りた。すでに揚羽の剣が深々と布団を貫いている。
 降りると揚羽に一撃を見舞うが剣に弾かれた。
「謀ったな!狗」
 狗は無言で切りかかって来る下忍の一人を切り払う。揚羽は剣の腕前もなかなかのものだ。白煙の中を鋭い突きを入れてくる。襖が開いてもう一人黒装束が逃げ道を開く。やはり3人がいた。鈴が鳴った。押入れに合図の鈴のひもを頭領が引いたようだ。黒装束が入口に立ちふさがる。
 揚羽が庭先から無念の気合で手裏剣を投げ込んでくる。狗は黒装束に重なるように切り抜ける。もう庭には明松がともされた。豪族の下忍が5人飛び出してくる。すでに揚羽と下忍が塀を乗り越えている。いつの間にか頭領が剣を手に部屋から出てくる。今度は狗が豪族の下忍に囲まれた。
「この男は筒井のもので味方だ」
 その声に下忍が剣を下げる。すでに廊下にも下忍が頭領を守るように出てきている。
「弾正の忍者です。だが手引きをしたのは柘植です」
「やはり柘植か?」
「それとこの男が手引きをしました」
 狗は庭の木戸に立っている男を指した。
「小頭を取り押さえろ」
 逃げ出す小頭が取り押さえられた。どこにも裏切り者がいるものだ。狗は猿のことを考えた。


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