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 人は人を憎み
 人は人を恨み
 人は人を殺す
 繰り返される悲劇が悲劇を呼び
 止めようのない怒りが怒りを呼ぶ


 人は安穏とした日々を送っていた。
 確かにそんなときもあったはずだった。
 何が原因なのか。
 何が理由だったのか。
 何故こうなったのか。
 知る者も居ないまま、戦の日々は続いていた。

 数百年、数千年と絶え間ない時が流れても、それは消えず血が大地に染みこんでいった。



 いや、『わけ』を知ってる者がひとり。


 何故?と聞かれれば人のエゴだと答えるだろう。
 この戦の発端はたわいもないことだった。
 子供同士ならただのけんかで済むような・・・。
 それが一国の主だったために民を巻き込み、世界を分けた。
 私は荒野の高台からそれを眺めていた。

「また・・・人が死ぬ」

 私は誰に言うともなくそう呟いた。
 視線の先には死に行く兵士。
 皆、自分が正しいと死に急ぐ。

「くだらない」

 やけに冷静にそれを見ている自分にも嫌気がさす。
 人が死ぬことをくだらないと思ってしまう自分にも。
 風がサアアアアと髪を撫でる。

「そうだね」

 慰めてくれる風に私はふっと笑う。
 あまりにも長い時間見過ぎていた。
 いいえ・・・。

 見過ごしすぎた。
 この戦が始まった時、微かな力を感じてはいた。
 だけど、その力が発端だったとは気づかなかった。
 私の足は自然にある場所へと向かっていた。

 ・・・。
 視線の先にあった戦の片方の陣。
 もはや、馬もいず歩兵のみの戦。
 手には槍・刀・弓の原始的な武器。
 戦が始まったときには、銃も戦車もあった。
 それが、戦のために消費され製造不能になり今のようになった。

 それでも人は戦うか・・・。

 私は戦の中を平然と進む。
 耳元では兵士達の悲鳴と怒号が聞こえる。

「じゃまだーーー」
 兵士が一人、私に突っ込んでくる。
 自然に氷壁が私を護ってくれた。
 私は微かにそれを見てから、無言で足を進める。
 ある場所へと・・・


 一際、大きな喚声と悲鳴が上がる。
 戦場の中央・・・。
 一人の女性が軍神のごとく兵を率いて、殺戮を楽しんでいる。
 手にした剣で敵を切り、返り血を浴びたその姿は美しく輝いていた。
 高らかに笑い、赤く染まるその衣。
 狂気が広がる・・・。
 少女の軍だけでなく敵の軍も殺すことを楽しみ、殺されることを忘れ、(むくろ)を踏み歩みを進める。

 巻き込まれる!!

 ザアアアアア。
 風が危険を感じ、私を護るために戦場の外へと飛ばした。

「・・・ありがとう」

 確かにあのままあの場所にいたら、おかしくなってた。
 ぞくりと体が震える。
 あれが選ばれた力を持つモノ。

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