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 あっけなく・・・と言うより抵抗をせずに
 「ラー」に捕まってみた。
 噂の鬼炎に興味があったから。

 しばらく砂漠を歩かされ、ある岩の洞窟に入ってゆく。
 そして、随分奥まで来ただろうと思った頃急に広い場所に出た。

「ようこそ。キヨ」
 中央に装飾を施されたイスがある。
 そこに座っている一人の男がそう言って私を迎えた。

「・・・」
 私は黙ったままその男を見る。
 明らかに他の人と違うその姿。
 20歳くらいのがっしりとした身体に紅い髪・紅い瞳。
 普通の人なら20まで生きられない。
 それにもし生きていても痩せているのが当たり前のはず。

「どうした?」
 その男の問に私はゆっくりと口を開く。
「鬼炎・・・あなた、何者?なぜ私の名前を知ってるの?」
 不振な瞳でその男を覗き込む。
「おまえも、私の名を知っているだろう?それと同じ事」
「答えになってないと思うけど」
「そうか?」
 鬼炎の後ろに控えていた人が彼に剣を手渡す。
 イヤな予感がした。
 私は後ろ手に縛られていて、逃げられない。
 銀の剣に紅が反射する。
 彼の髪の紅?それとも瞳の紅?それとも

「やめ・・・て―――――」
 あかアカ赤紅。
 一色に目の前が染まった。
 目の前にさっきの子供が倒れていた。
 赤い衣をまとって。

「なんで。あんたが・・・じゃまするの?名前も知らないじゃない」
 呆然としながらも言葉が口をついて出てくる。
「キヨ・・・。たすけてくれ・・・た・・・もん・・。2度も・・・」
 その子はそういうと動かなくなった。
「2度・・・?」
 私は思いをめぐらす。
『僕ね。サザっていうんだ』
 笑顔であの子がそう言ってる。
『パパとママ動かなくなちゃった』
 泣きじゃくりながら、私にそう訴えかけてくる。
『キヨは何処からきたの?』
 不思議そうな瞳で覗き込む。
「ごめん。サザ」
 忘れちゃってた。
 そうだね。前に一度あってたね。
 そして、私が永遠に生きてるって事を話した事があった。


「まったく。邪魔なことをしてくれるな」
 そう言って、鬼炎はサザを蹴り飛ばす。

 !!

 ザワリッ
 辺りの空気が揺らいだ。
 怒りと悲しみが交錯する。
 自分でも歯止めが利かないその思いが爆発した。

 ・・・・・・。
 気がつくと、岩の瓦礫が辺りを覆っていた。
 私のところだけ不自然に岩が無い。
 近くに血の海が広がっている。
「おまえ・・・」
 違う。赤い髪と赤い瞳の鬼炎。
 彼が顔を持ち上げてこちらを見る。
 腰から下は岩に押しつぶされている。

「力を持っていたのか・・・」

 苦しげなその表情。
「力?」

「ふ・・・何も知らないらしいな」
 私の問いに彼は答えなかった。

「7つの力を求めろ」
 そこで、彼はいったん大きく息を吸う。 

「そうすれば・・・」

 続く言葉は紡がれない。 

 そして、彼はゆっくりと瞳を閉じ満足げに眠りにつく。
「ちょっと・・・まってよ」
 その先は?
 一体何を知ってるの?

「7つの力って何よ・・・何なのよ――――」

 叫びは木霊して、辺りに響き渡る。
 答えるものはいない。


 7つ・・・確か前にそんなことをいってた人が・・・
「あなたは7つの星に支配されるでしょう」
 あの・・・占い師。
 遥か遠い記憶。
 このことを予知していたような言葉。
 忘れていた思いが頭を巡る。
 彼は何かを知っている。
 直感的にそう思った。
 彼を探そう。


 彼ならこの永遠の答えを知っているだろうから。

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