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生い立ち12

 狐が地下牢に降りてもう1刻になる。筒井に潜り込んだくノ一と交渉をしている。狗は地下牢のある1階にいる下忍を眠り薬で寝させる。裏木戸には下忍が潜んでいる。この下忍が逃げ道を確保している。年寄りは隣の商人屋敷の瓦葺屋根に火矢を放つ準備をしている。このくノ一を逃がすことで持っている弾正の秘密を貰うことにしている。
 もうすぐ夜が明ける。交渉が纏まらなかったのか?だが合図の虫の声が地下から聞こえてきた。狗も合図の虫の声を外に向けて放つ。裏木戸にいる下忍も同じように年寄りに合図を送る。狗が地下牢に降りると階段の下に下忍が倒されている。狐の目が光って牢から覗いた。
「時間がかかったのだな?」
「条件が合わなかった」
 狐がくノ一の着物を着ている。くノ一は逆に狐の黒装束になっている。
「私が囮になることで話が付いた」
 口だけ動かして狗に報告をする。したたかなくノ一だ。裏木戸に出るともう瓦葺の屋根が燃えている。下忍がもう走りだしている。その後をくノ一、囮の狐、殿は狗だ。調べていた崖道から尾根道に出る。だが思ったより相手の動きが早い。狗の後ろに2人の下忍が追いかけてくる。狗は崖道を遥かに通り過ごしたところで手裏剣を投げた。まず逃げる時を稼ぐために囮になる。1人が手裏剣を受けて倒れるが、もう1人は狗に切りつけてくる。この下忍を倒すのに半刻もかかってしまった。
 慌てて尾根道に戻り走る。どうも下忍が後ろを追いかけた跡がある。1刻走ったところで2人の下忍が刺し違えている。その一人は狗の下忍だ。まだ走った跡がある。さらに半刻先に下忍が狐の投げ玉で飛ばされて死んでいる。その向こうに黒装束のくノ一が木に張り付けられたように死んでいる。間に合わなかったのか。
 まだ尾根の傾斜からゆっくりと這ってくる物音がする。
「1人を崖に突き落とした」
 と言う割にはかなりの格闘したのか傷だらけの顔になっている。
「くノ一は殺されているぞ」
 狐は上がってくると張り付けられたくノ一の剣を抜くと黒装束の中に手を入れる。お尻の割れ目に指を突っ込んでいる。
「地下牢に入った時にくノ一を眠らせたの。その間にお尻の穴にあるか確認していた。黒装束なら連れ去ることはないと」
「よし、崖に落とせ。第2弾の追手が来る」









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