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遭遇 その2

 どうやら鶴の一声ならぬ神の一声で不満だらけの転生が決まってしまったらしい。
 正直腸が煮えくり返るほどの心境ではあるが、コイツには何を言っても無駄だろうと諦めてしまっている自分もいる。え、神様に対して不遜がすぎるって?
 唯我独尊すぎて敬えねぇんだよ!
 そんなこんなで謎の自問自答をしつつ、完全な諦め姿勢で従順な下僕がごとく彼女に従うことにした。
 これ以上の問答は完全に時間の無駄というヤツだ。
 ならば神様のやることだからと身を任せたほうが有意義というものだ。

「それで、俺はどんな世界に行かされるんですかねぇ?言っておきますけど、どんな世界だろうとあなたの言うハーレムとやらを作る自信は俺にはないですよ」

 そもそも日本のしかも普通の一般家庭に生まれた俺には一夫一妻というのが当たり前で、漫画じゃあるまいしとてもじゃないがハーレムなど想像することができない。

「そんなこと言われなくてもお前のヘナチョコ具合は前の経験で十分というほどわかっている。だからオレは一生懸命少ない時間を犠牲にして考えてみることにした。その結果弾き出された答えが魔物や争いで溢れかえった世界に送り込むっていう方法だ」
「はぁ……なるほど?」
「なんだよ。ここまで言ってわからないのか?鈍い奴だな。いいか?そんな危険な世界で英雄と呼ばれるような男になってみろ。そうすればお前が望もうが望まなかろうが女が集まり放題選び放題だろ。つまり、お前がいかにヘナチョコ系男子だろうと勝手にハーレムが出来上がるっていう寸法よ」
「あー……うん、なるほど」

 ツッコミ待ちなのだろうか?自信満々に御高説いただいたが、回りくどい上に目的達成のためのハードルが高すぎるだろ。要はゲームや漫画みたいな世界で英雄、つまり世界でも救ってしまえばハーレムが出来るだろうってことでしょ?
 いやいや、絶対にもっと確実で楽な方法があるって。

「もちろんお前が心配していることもわかる。簡単に英雄になれるわけないだろうっていうんだろ?安心しろ。オレを誰だと思っているんだ。ちゃんとそのへんも考えた上での計画だ」

 いや、誰だか知らないけど、かなり傲慢なヤツだとは思っているよ?
 再び長々とした説明が始まってしまったので、話半分に聞きつつ俺なりに要点をまとめてみることした。
 まず、これから俺が行くことになってしまった世界はゲームのように魔物が存在する世界で、魔法という非科学的な力が常識して認知されているらしい。
 身体能力が数値化されステータスとして確認でき、経験値(これは転生者にしか当てはまらない)やレベルといったものもあるらしい。完全にゲームの世界といってもいいんじゃないだろうか。
 そんな世界で英雄になるべく傲慢神様が用意したのがチートと呼ばれる能力。スキルと呼ばれる力だ。
 手にする代わりに通常の方法でスキルを覚えることが出来なくなるらしいが、そんなデメリットが消え去るくらいのスキルらしい。
 いったいどんなスキルなのだろうか。そんなことを考えていると、やたら話の長い神様が、ようやくその力の説明に入った。

「お前には二種類の選択肢を用意した。一つは戦闘によるチート人生だ。細かな特典もあるが、目玉となるスキルは一つ、『能力喰イ』(スキルイーター)という力だ。これは対象者のスキルを奪う力で、これがあれば通常人間が覚えることが出来ないスキルを使えるようになる。どうだ、かなり凄い力だろう」

 確かにそのスキルならばデメリットはないに等しいのだろう。だが、それはいうほど凄い力なのだろうか?英雄になれるっていうくらいだからもっとわかりやすく凄い力を想像していたのだが……
例えば聖剣が使えるとか、すっごい必殺技が使えるとか。そんな漫画の主人公のようなスーパーな力を想像していたせいか、正直なところ肩透かしをくらった気分になってしまった。

「そしてもう一つが内政によるチート人生だ。こっちは戦闘には一切使えず、デメリットのせいで魔物退治は諦めたほうがいいレベルだが超絶スキルが二つ使えるようになる。一つ目は『神様ノ設計図』これはあらゆるもの性質を作り変えることが出来る力で、急成長する植物を作ったり溶けない氷なんてものも作り出せる夢のような力だ。そして二つ目が『等価交換』この力は金銭を消費することでお前がいた世界の物を買うことが出来るネット通販ならぬ異世界通販だ。この二つがあれればある意味世界を取ったも当然だな」

 どういう意味だ。とりあえずわかるのはこっちのスキルじゃ英雄にはなれないことと、それなりの知識がないと使いこなせないということだ。どちらかというと頭脳労働は苦手な方なのでどう使えばいいのか検討もつかない。あと魔物がいるような世界で他の、特に戦うためのスキルが覚えられないって凄いデメリットな気がするんだけど。

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