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16話

タグマイの領地には4万の兵が集まった。

それにイルヨラスが2万5千の兵を率いて参戦して総勢6万5千の兵が魔都を攻め入れようとしている。

(ふふふ、これでワシが新たな魔王になる!)

タグマイは集まった大軍を眺めて口周りがにやけていた。

「タグマイ…ガストイーラやつはどうなってる?」

「彼奴の性格は知っているだろ?最後の最後まで見極めてから動くやつだ…我らと魔王に天秤にかけて見てるいるだろ」

「ふふふ、奴が動く時にはもう出番無しだろうに……わはははは!」

「間違いないな…ククク」

兵を率いてタグマイとイルヨラスは魔都べヘイゼルに向かった。







莫大な弁償金から解放されたハルトとそれを押し付けられた聖女リンテルスメディア

誤解と言え、リヴァイアサンを攻撃して起きた大惨事…事の発端は彼女!言い逃れは出来なかった。

「もう国に戻れない…あ、無くなったっけ?あははは…うちに帰りたい…うちもなくなったよね?あははは…」

メディアは片隅でショボくれていた。

僕はバーグリサールとの戦いで、この一帯も住めない状況になった事をラプス族とダークエルフ達に状況を伝えた。

そして、住み心地が良さそうな場所がある事や、そこに住まないかと提案した。

「ほほほほっ!ワシらラプス族はハルト様に付いて行きますぞ!皆、そう願っております」

「我らダークエルフ族も同じです!」

「では!!支度して出発しましょう!」

両種族は荷造りをしてその新たな地に僕と向かった。

それに何故かリンテルスも後ろから付いて来ていた。

行くあてもなさそうだったし可愛そうだったので一緒来る事を止めなかった。

そこでバルトゥールがリンテルスと何かコソコソと話しをしていた。

メディアは死んだ目がキラキラ潤って嬉しいそうに頷いていた。

絶対!何にか企んでる!これ以上騒ぎ起こすのは勘弁して欲しい。

「ハルト様、新しい地ってどんな所ですか?」

ラシュトルニは少し不安な表情だった。

生まれた里から出て知らない地にこれから住む事を考えると不安になるのは同然だ。

「うーん…凄く広くて、自然豊かな感じ?それに奴隷狩りに怯えて暮らす事は無いよ、とても安全だよ?」

「本当ですか?」

そうだな……ビヒモスに近づく人間は居ないだろしな…安全だろ?

「そ、そんな場所があるんですか?でも、ハルト様が言うなら間違いないや♪」

脳天気なレーイミはあまり不安そうではないようだ。

確かに聖都の次に安全な場所に違いない。

その時、ラプス族の耳がビッグと動き、皆んな止まった。

「どうしたの?皆んな?」

「何かが凄い勢いでこっちに真っ直ぐ向かって来る者がいます、ハルト様」

レーイミとラシュトルニはハルトの後ろに隠れた。

馬を乗った集団が真っ直ぐにこっちに走って来るのが見えて来た。

「ハルトぉぉぉぉぉぉ!!」

「ハルトさぁぁぁあん!!」

「ん?この声は…イリヤとリリヤ?」

「げっ!毒虫!糞虫…」

ビヒモスに向かう途中、双子とテスラの親衛隊に合流出来た僕はホッとしたが、バルちゃんは何か食べてはいけない物でも口にしたような表情していた。

「ハルト!大丈夫だった?先の化け物の騒ぎで怪我してない?」

「ハルトさん、無事で良かったよ…心配しました、うううう」

僕の捜索で近くの海辺まで辿り着いた双子は風の精霊が示した場所に凄まじい戦いの痕跡が残ったと言う。

あそこか…バーグリサールと戦った…。

「また何かに巻き込まれたんじゃないかと心配したわよ!!」

「そうですよ!それに急にどんでもない怪獣まで見えて…心配で心臓が止まるかと思いましたよ…もう…!」

僕って…厄介体質か何かと思われている?…まあ…そうかもしれない…。

「ご、ごめん、早く帰りたかったけど色々事情があってね…」

後ろのラプス族達とダークエルフ達の難民のような様子を見てイリヤはなんとなく勘付いた表情をした。

「はぁ〜なるほどね…あんたらしいわ」

ため息のあとイリヤは優しいく微笑んでいた。

「あはは……本当にごめんね」

僕の背後に隠れてベタついているラシュトルニとレーイミを見てリリヤもなんとなく勘付いた表情をした。

「なるほどね…ハルトさんらしいです、また増えましたね…」

リリヤは怖い目で氷なように微笑んでいた。

「あひ!何か分かりませんがとにかくほ、本当にすみません!」

リリヤの前ではとにかく謝っておくのが最善の方法だ…。

「ハルト様?誰?この人族は?」

「……何ですか?貴女は?」

僕を睨んで来たリリヤの前にラシュトルニとレーイミが出て来た。

そして妹の危機には勿論セットのイリヤは必ず出て来る。

人族双子VSラプス族乙女…

彼女達の視線には火花が飛び散った。

「はぁ?何だ?内の妹に何の用だ?」

「貴女達、ハルトさんの隣から離れて貰えます?そこは私達の指定席です!」

あれ?僕の隣がいつから指定席になっていたの?

「あっ?今日からうちらの特等席に変わったよ」

「そうです!別の一般席に移動して下さる?」

おほぉ!指定席から特等席にランクアップされましたあぁ!

「ハカ言うな!ここは私専用の妹席だ!」

そこでバルちゃんが乱入して来た。

ちょっと微妙だな…そこは国賓席とか言って更にランクアップして欲しかったな…。

っと思った僕は修羅場に少し慣れて来たようだ…。

「皆んな!ストップ!目的地が見えて来たよー♪」

僕が指差す場所にラプス族とダークエルフ達は戸惑っていた。

「は、ハルト様…アレはビヒモスですよ…」

「オホホホッ!ハルト様の冗談は冗談に聞こえませんぞ!」

「あの…冗談ではありませんが…」

「………」

「ほほッ………」

呆然と僕を見つめながら黙り込む両族長だった。

ビヒモスに到着した僕達の前に二匹の害獣が出て来た。

「ご、ご苦労様でした、二人共!」

「はい!主様!」

「弁償金解決しましたよ!主様♪褒めて下さい!愛で下さい♪」

二匹の害獣は一仕事終えたようないい笑顔した。

自分達が撒いた種だったのに…まあ…結果オーライなので不問にします。

「ありがとう!助かりました」

「アラミティアの人々は陸に戻して置きましたよー♪」

「良くやりました!あと…バムさんにお願いがありますが…」

「承りました、仰せのままに!」

バムは内容も聞かずに即答した。

「まだ、何も言ってませんが…えっと…ラプス族とダークエルフ達をビヒモスに住ませて貰いたいですが…」

「主様の民は大歓迎です!喜んで受け入れます!」

僕の民って訳じゃないが…まあいいや…。

「ありがとう!でも、彼等は怖がってますよ、ちょっと一言言って安心させて欲しいですが…」

「はい!任せてください!」

ビヒモスに乗り込んだバハムートは両族に宣言した。

「聞け!ラプス族とダークエルフ達よ!我が身に住む事を許す!安心せよ!其方達を害しようとする者から守ると我が主様に命じられておる!」

「おお!!」

「あ、私も、このレヴィヤターン♪、貴方達を虐める奴が居たら国ごと滅ぼすからねー♪♪」

貴女は海に帰ってもらいたいですが…

物騒なリヴァイアサンには不安しか感じなかった。

「ビヒモス様!レヴィヤターン様!ありがとうございます!」

「ハルト様!ありがとうございます!」

安住の地を手に入れて喜ぶラプス族とダークエルフ達は住処を探し始めた。

とこも自然豊かで広大な地…住処を決めるに悩む贅沢な両族だった。

「これで一件落着か……いや…」

ラプス族とダークエルフ達を救った。

だが気掛かりな事があった

そう…国を失ったアラミティア国民…

「ねえ…バルちゃん、アラミティアの国民達、どうしているか見たいけど…」

「分かったよ、お兄ちゃん」

バルトゥールはまた鏡を出してアラミティアの国民が映っていた

アラミティア皇帝と貴族や上位民をまとめどこか移動する姿が見えた。

下位市民や奴隷の亜人達は見捨てられていた。

奴隷から解放された亜人達は喜ぶ人もいるが、これからどうすればいいか戸惑う人も多かった

国は滅び、村や都市…森や山…全て廃になったアラミティアは人が住めない死の地に変わっている…生きて行くのは厳しそうだ。

「ねぇ…バルちゃん」

「なぁに?お兄ちゃん?」

「あの人達もビヒモスに暮らせるようにしたいけど……駄目かな?」

自分達の事に巻き込まれて国を失ったアラミティアの人と亜人達をこのまま放って置く訳にはいかなかった

「バムはそれでいいか?」

「主様の仰せのままに、お従います」

またバムは即答で受け入れてくれた。

「ありがとう、バムさん!さてさてどう伝えるか…」

「お兄ちゃんそれは私に任せて!」

人助けに興味がなさそうなバルちゃんがやけに積極的だ…何か企んでるか心配になった。

「いいけど…変な事言わないでね?」

「分かってるよー♪(ふふふ、お兄ちゃんの同化計画は無駄になったが最終計画を始めるか…)」

バルちゃんは広域思念伝達を使って彼らに話しかけた。

[[奴隷から解放された亜人達よ…そして国を失って見捨てられたアラミティアの人々に告げる]]

「こ、今度は何だよ!」

「もう…やめてくれよ…」

アラミティアの人々はまた何かされるかと恐れて震えていた。

[[………ツッ!]]

ムカついたバルちゃんは思わず舌打ちした。


[[ゴホン!ゴホン!死の地になったアラミティアから其方達に自然豊かな新たな地を与えよ]]

みんなその言葉に耳を疑っている表情だった。

[[住みたいと望む者よ…私が示す場所に集え]]

バルちゃんはビヒモスの所に光を放った。

行く当てがない彼らは微かな希望を抱き、戸惑いながらもビヒモスに向かって来た。

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