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13話

バーグリサールは混沌の裁きによってチリ一つ残さず消えた。

そして、その一帯も生き物一つ残さず焼き払い瘴気に満ちた死の地に変わった…。

(……うーーーん、すまんな、ハルトよ)

ハルト(兄)は漏れ出すオーラと瘴気を消してバルトゥール達に飛んで行った。

「皆、元気そうで嬉しいな…バル、レヴィ、バム」

「うううう…本当のお兄ちゃんだ」

涙塗れで抱きつくバルトゥールに照れ臭そうに兄は笑った

「いつになったら兄離れするやら…はは…」

「離れてやるもんか!地獄の底までついて行く…うううう」

「うん…全く変わってないなぁ…」

バルトゥールの頭を撫でながらとても困ったような顔をした。

「主様……ご無沙汰しております…」

「ああ。レヴィ…元気してたか?」

「主様が居なくなって…元気に居られるはずかないんじゃないですか…主様ぁぁぁ!!」

っと言ってるが…めっちゃ元気に国々を滅し、気ままに生きてたリヴァイアサンだった。

その元気すぎる生き物がバルトゥールを蹴り飛ばして抱きついた。

「レヴィ、貴様ぁぁ!兄弟の再会を邪魔するな!」

「あら?ただ甘えてばかりで主様が困ってるように見えますが?ほほほ」

「はっ?貴様のような、あるかないか分からないような目に私達兄弟の愛が見える訳無いだろよ!」

「ほぉ…何を言ってます?こんなぐりっとした可愛らしい目を!ほらほらー♪」

レヴィは閉じていた目を全開にしてバルトゥールに近づけた。

「近いわ!ふんっ!」

バルトゥールはそれに目潰しをした。

「ウンギャーーー!!!!」

「うおおー!!目が!目がぁぁ!!!!」

リヴァイアサンの目に触れ感電したバルトゥールと目を突かれた痛みに元の姿に戻り転がり暴れるリヴァイアサン。

バルトゥールの兄はそれを見て懐かしそうな顔をして微笑んだ。

「ははは…相変わらずだな…」

「あ、主様………」

バハムートは以前の主と違うハルトの姿に少し戸惑う感じの表情だった。

「長い間…すまなかった、ルティーヤー」

「ああ!原始の神々から頂いた我が真名を…やはり貴方様は!」

誰にも知らない古の真名を耳にしたバハムートは感激に耐えきれず涙を落とした。

兄はそれをそっと抱きしめてあげた。

「苦労かけたな…二人の面倒を押し付けて…大変だったであろう……」

「……」

バハムートはその言葉に固まって冷や汗をダラダラ流した。

「ん?どうした?ルーティヤー?顔を逸らすなど?あと…汗が凄いぞ?」

主の亡くして絶望したバハムートは何もかもどうでも良くなって、二人を放置していた。

それでバルトゥールはイビルゲートの核になったり、リヴァイアサンが何ヶ国を滅した。

それを言えずに主の目を直視出来ない彼女であった。

「皆んな!聞いて欲しい…もう私はこれ以上この子から出る事は無いだろ」

その衝撃的な言葉に三人とも固まった。

「と、どういう事?お兄ちゃん!!お兄ちゃんならその体……簡単に自分の物に出来るはず!」

「……バルよ、それは出来ない」

「だ、大丈夫だよ!!私が今準備してる同化の儀式を…」

「バルトゥール!!やめろ!」

兄はその言葉を聞いて怒鳴りつけた。

同化の儀式…無の神がルルの体を奪おと行った事と同じ魂の同化の為の儀式だった。

バルトゥールは魔王国に着いてから密かにこれを準備していた。

「何故だよ!お兄ちゃん!!私がどれほど辛い気持ちで長い時を待ってたと思う?」

「すまなかった…バル」

その泣き顔は悲しみより深く絶望的な表情で…兄はそれを前にしで謝るだけだった。

バルトゥールはその硬い意思に座り込んでしまった。

「あいつらに復讐したく無いの?」

「この体は私の物では無い、故に巻き込む訳にはいけない…分かってくれ」

「でも!いつか奴らは気付くよ!そうなったら…またお兄ちゃんが…お願い!考え直してくれよ…うううう」

またの悲劇が起こる事を恐れ、座り込んだまま(兄)の足にしがみ付き頼み込むバルトゥール…その涙を拭いてあけて兄は大きく笑った。

「わはははははは!!心配するな!こやつは凄いぞ?今は未熟だが…いつか奴らも手が出せれない程の者になる」

笑顔で宣言した。

「………でも!!」

「分かるだろ?感じるだろ?私の魂の波動…私は消えない…ハルトと共にいるんだ…」

「………」

「皆…ハルトが私だと思って彼を…支えてくれるか?」

優しく三人を見つめて頼んだ。

「………分かったよ、お兄ちゃん」

「はい、承りましたよ、主様!」

「この命に代えても必ず守り支えます!!」

「ありがとう…皆んな」

ハルトを主として支えると誓うバハムートとリヴァイアサン。

そしてバルトゥールも寂し気に兄の意思を受け入れた。

「あのぉーー取り込み中申し訳ありませんか…ちょっと宜しいですか?」

今まで状況判断に苦しみ出て来なかった聖女が話の纏まりが付いたと判断して出て来た。

「ん?…其方は?」

「アラミティア帝国の者です…大変申し訳ありませんか…こ、これを…」

聖女は弁償の詳細が書かれた書類を(兄)に渡した。

(しまった!!主様に気を取られてこやつの事を忘れていたぁぁぁ!)

(ど、ど、どうしよう!!怒られる!!)

2匹の害獣は不安な顔でガクガク震えた。

「お兄ちゃん?何それ?」

バルトゥールはその請求書を見てプルプル震えた。

「何…この金額?ゼロがいくつやら……ああ…目が回るぐらいだね…」

その請求書を読んだ(兄)とバルトゥールは呆れた顔でその犯人二人に顔を向けた。

既に土下座している二匹の害獣…。

あまりにも壮大な額に言葉を出す事すら出来ない二人の兄弟…

「すまぬ…ハルトよ、後は任せた!皆んな!さらばだ!!」

一言残して、ハルトの魂の中に逃げた兄だった。

「お、お兄ちゃん!待っ…ははは……」

苦笑いしながらバルトゥールはその害獣を聖女の前に出し真顔で話した。

「なぁ…こいつら売ったらいくらになる?」

「え?あの…人身売買は断りします」

「いやいや……こいつら人じゃないから!だから大丈夫…いくらだ?」

「すみません、生き物の取り引きも…お断りさせて頂きます!」

確かに二人なら高額になると思ったが人類には身に余る生き物だったので拒否した。

「………ん?」

ハルトは意識を取り戻した。

「お、お兄ちゃん……ごめん…」

「…はい?何が?状況判断が出来ないんですが?」

何故ここにバルちゃんがいる?それにその困ったような顔はなに?

「あのぉー?決済を…」

「誰?決済?僕…何も買ってませんが?」

「おほほほほ!…ご冗談を…」

目を覚まして間もなく決済を催促されて訳が分からない僕に事の説明をバルちゃんがしてくれた。

「おほほぅ…ゼロがいくつやら…目が回るぐらいだね…」

「おぉ!やっぱ!兄弟は繋がれたぁぁ!!」

意味分からない事言って喜んでいるが…。

「しばらくお待ちください…額が額なので…」

「はい!勿論待ちますよ!ですが出来るだけ早めにお願いしますね…利息が発生しますので、ご注意下さい」

しっかり利息まで付けられた。

二人は凄い怖い目でその女性を睨みつけていた。

「ねぇ、ばーーちゃん…」

「何だ!」

二人は何かコソコソ話しをしていた。

そして、バルちゃんから僕は今までの事と僕の中にいる兄の事も聞いた。

「そうか…薄々感じたあの感覚はバルちゃんの兄さんだったか…」

「うん…ハルト兄ちゃん」

信じ難いが…信じるしかなさそうだ。

無の神の事やバーグリサールと戦った場所からその一帯が死の地に変わり果てた光景を見て納得した。

そして二人の迷惑な存在に顔を合わせた。

「初めまして…お二人さん?」

「は、初めまして?主様?レヴィヤターンですぅ!レヴィとお呼びくださいな♪」

…貴方、前会えましたよ…僕の漂流の原因ですよ。

「初めてまして主様…バハムートと申します!これから貴方様を命に代えても守り支えると誓います」

ば、ば、バハムート!?最古の神獣?あのバハムート?まあ…びっくりしたが…借金の金額よりは物足りないな…命に代え無くてもいいから弁償をなんとかして下さい。

「バルちゃんから聞きました、今後とも宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくお願い致します」

最古に最強の神獣が賠償金に負ける瞬間だった。

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