12話
ハルトから漏れ出す黒いオーラは瘴気のように周りの植物が枯れていた。
「ふははは!愉快!愉快!クソつまらん氷山から出て来た甲斐があったわい!」
何故かバーグリサールは嬉しいように笑い出した。
「お主の話しは聞いた事あるぞ!神族でも邪神でもない強力で歪な存在…そして、世界を滅びに導いた者よ!…貴様の話は只のお伽話だと思っだが…面白い!!」
バーグリサールは大きく息を吸い猛烈な勢いで体当たりをして来た。
ガガガガーン!!
その攻撃の衝撃で周辺は何もかもが吹き飛ばされた。
「ククク…やはりお主は化け物よ…」
片手でその攻撃を軽く受け止めたハルトは手刀一振りでバーグリサールの片腕を切り落とした。
「くはははは!!この鋼より硬いワシの腕をこんな易々と…いいだろう!実にいい!貴様を倒せるならこの命捨ててもよかろう!」
バーグリサールは腕を失ってもどうでもいいような顔で笑った。
「太古の偉大なるスルーズゲルミルよ我が身を喰らいその力を我に示し再臨なされよ」
地面が揺れ始めてバーグリサールの下の地面が割れ始まった。
その底から大きい口のような物が現れバーグリサールを飲み込んで眩しい光が発した。
その光の中から新たな巨人が現れた。
目は白身しか無く、体は青く破裂しそうなムキムキな筋肉質だった。
それに巨人から出る冷気は周り一本が氷の地に変えた。
バーグリサールは自身の血肉を食らわせスルーズゲルミルを身に降ろした
スルーズゲルミル…ユミルの息子で氷霜の巨人達の力の象徴で崇拝された巨人だった。
ハルトを探して空を飛び回るバルトゥールは急に止まった。
「お兄ちゃんだ!でもこんなに猛烈な気配…お兄ちゃんに何が起きてる…これはまずい!」
何故か焦っているようなバルトゥールハルトがいる場所に瞬間移動した。
そこでハルトとスルーズゲルミルと激突している光景を目にした。
「なに?あの巨人……滅びたゲルミル一族?まさか…どこかのバカが体を対価に降臨術を?」
二人の一撃一撃は地が割れ、凍り付いた川が蒸発し、その一帯はどんどん廃墟になっていた。
最早戦いと言えない迷惑極まりない破壊行為にしか見えなかった。
「このままじゃまずいわね…我が影よ全てを包み隠せ!」
バルトゥールから出た邪気が広範囲に広がりハルトの戦っている場所に隠蔽結界を張った
「ふぅ…まだ気付かれてないようだな…完全では無いお兄ちゃんを奴にバレたら終わりだ」
バルトゥールは何かに警戒しているようだった。
「ふははは!このの力!素晴らしいぞ!どうした!わしを倒して見ろ!」
息つく間も与えないように猛攻を繰り出しているバーグリサールは力に酔ったような狂気に満ちた表情だった。
「醜い顔だ…焼き払え!Violentusventus flamma(激風の炎)」
「やらせんぞ!二ヴルの吹雪よ!!」
ハルトの竜巻のような漆黒の炎とバーグリサールの氷のブレスが衝突して相殺された。
「くははは!貴様の力はその程度ではなかろう!全力で来い!」
また肉弾戦に突入した。
互いに打ち出して激突する拳と足…その打ち合いは互角に見えたがバーグリサールの手足の肉は少しづつ剥がれて破裂した。
「ククク…さすが強いのう!だがそれだけじゃワシは倒れんぞ?」
バーグリサールは周りの冷気を吸い込んで瞬時に回復した。
「あの巨人…強い!!まぁ…お兄ちゃんには敵わないとしても結界をこのまま維持しないと持たないな…」
余りにも強い力がぶつかり合う事にバルトゥールは結界の維持で身動きが取れなかった。
その一方、主のいる場所に移動していバハムートとリヴァイアサン…そして借金取り立て屋の聖女が二人を追っていた。
聖女は飛竜の上から何か叫んでいた。
「皇帝城賠償白金貨23万枚…首都城壁修復費白金貨8000枚…城下町修復費白金貨32万枚…帝都住民生活保護及び慰謝料白金貨150万枚…貿易及び生産被害弁償……………」
ずっと繰り返し被害額を語り出す聖女…想像がつかない金額に焦り逃げている2匹の害獣がいた。
「ばーーちゃん!あいつ、本当!しつこいよ…う、う、撃ち落とす?」
「バカ!これ以上厄介事起こすな!」
怒鳴りつけられてイラっとした。
「はいはい…おばーーちゃん!」
「……はっ?レヴィ貴様…今なんと言った?」
「主様だよ!近いぞぉ!今行きます!主様ぁぁぁ!!」
「…後で締めてやる!」
ハルトの気配を感じ取った二人は全力で走り出した。
「国宝破損賠償金!白金貨280万枚!文化財及び……何!!この凄まじい瘴気は!」
ハルトの瘴気に息苦しくなったリンテルスはし
「あれ!バルトゥールだよ!」
「あやつ…隠蔽結界を張ってる…レヴィ、状況を確認したい!来い」
「わかったよ!!」
バハムートは義体から出てリヴァイアサンとバルトゥールに向かって飛んで行った。
「バルトゥール!!これは何の事だ?」
「あのオーラ…主様に間違いないね…それに戦っているけど…」
「バムとレヴィか…手を出すな!結界が破れる」
バルトゥールは飛び込もうとする二人を止めた。
「はぁ?何を言ってる?主様が戦って居るんだぞ!ただ見ていろてんのか!」
「バルちゃん…頭大丈夫なの?」
「こいつ!言わせておけば!…まだお兄ちゃんは完全ではない…そんな状態で奴らに気づかれると…分かるよな」
「あいつか……くそ!」
何時も脳天気見たいなリヴァイアサンの口から下品な言葉がでた。
相当腹が立っているようだった。
聖女は瘴気の範囲外まで離れ上空からハルトとバーグリサールの戦いを見ていた。
「何だ!あれは…一体、何なのよ!まるで神々の戦いのようだ…」
破壊の限りを尽くすその戦いに目を疑った。
「意識が戻る時間か…残念だが遊びはここまでにしようか…」
「何訳分からん事を言ってる?楽しみはこれからであろう?」
ハルトの体から邪紋が強く光り出した。
「中々の再生能力だが…残念だ君では弱すぎて興醒めだ…終わりにしよ!」
「なんだと?」
黒いオーラが猛烈に拡散し一帯は闇に包まれた…その闇からゾッとするほどの様々な悲鳴が聞こえた。
「こ、こ、混沌の裁き!!バム!レヴィ!力を貸せ!私一人じゃアレに耐えられない!」
「久しぶりに見たな…」
「いや〜ん♪私は初経験だわ♪」
「…いやらしい言い方するな!」
バハムートとリヴァイアサンもバルトゥールの結界に力を注いで強化した。
「うはははは!ゾクゾクして来たぞ!!来いよ!盾をかざす偉大なる巨人の征服者フリュムよ!」
バーグリサールの前に黄金の盾が立てられた
「……Funisvinctum(捕縛せよ)」
闇の空間から黒い鎖が出てバーグリサールを盾ごと縛り締め付け始めた。
高速で回転する鎖によって火花を飛び散りながらフリュームの盾は耐えられずに砕けた。
「くあああ!バカな!フリュームの盾が!!」
全身締め付けられ肉が剥がれて血塗れになった。
「heirasmose(平伏せよ)」
「ぐぁぁぁああ!!!!」
鎖の締め付けに足掻くバーグリサールに数十回の稲妻に叩きつけられて力が抜けたように両膝を地につけ頭は地面に付けた。
「scelus iudecare(断罪せよ!)」
闇の空間から目玉のようなものが続々と現れて空間を埋め尽くした。
そして、武器を持った霊体の手が続々と現れバーグリサールに刺していた。
「ぐぁぁぁああああ!!この世の物と思えない禍々しい怨霊達…」
「Perditio(滅せよ)」
目玉に埋め尽くされた闇の空間かバーグリサールを包み飲み込む同時に爆発を起こした。
「わはははは!我輩の敗北よ…地獄でまた会おう」
その爆発に三人が強化した結界が粉々になった。
「お、お兄ちゃん!やり過ぎーーー!」
「きゃーあ♪ステキですぅ」
「格好いい!ザマス!!主様ぁぁぁああ」
その三人も飛ばされてしまいビヒモスの背中に落ちた。
あとから聖女も飛竜と共に落下して来た。