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11話

ラシュトルニの案内で、まだ足を踏み入れて無い場所に向かうハルトとレーイミ。

浅い川以外は特に食材が取れると思えない枯れた林だった。

この浅い川…魚も取れなさそう…。

周りは土も硬く石が多い、作物も期待出来なかった。

荒地に失望したラシュトルニは落ち込んでピンと立ていた耳が力が抜けたように下がった。

「無駄足になって…ごめんなさい」

「いや…!ラシュトルニのせいじゃないよ!…それに浅いけど綺麗な川だね…水浴びでもして気を取り直そう!」

僕は落ち込んでいるラシュトルニを元気付けようと川に飛び込んだ。

「冷たくて気持ちいい!!久しぶりの水浴びだよ!」

久々の水浴びに上着を脱ぎ体を洗い始めた。

(……いけない…鼻血でそう)

(ツヤツヤ肌…柔らかそうな体…はぁはぁはぁはぁ……たまらんわ!!!!)

ラシュトルニとレーイミは至福の表情だ…サービスした甲斐があった。

「二人もどう?気持ちいいよ?」

「分かりました!叔父様…今日ラシュトルニーは大人になります!」

躊躇なくラシュトルニは全裸になって飛び込んで来た!

……はっ?

「ら、ラシュトルニ!待ってよ!」

レーイミも焦って同じくすっぽんぽんになって僕の背後に来た…。

こんなの双子にバレたらきっと命が危い。

「は、ハルト様!お背中、失礼します」

レーイミが僕の背中を洗い始めるとラシュトルニも加勢して来た。

「わ、私も手伝うわ!!」

「いいよ、私一人で大丈夫だよ!」

背中をかけて争う二人の乙女…嬉しいシチュエーションだが…背中がめっちゃ痛い…。

でも…背中に当たる二人の生肌…ヤバイ!ムラムラして来た!

「あと少しで終わから私だけでいいよ」

「………それじゃ…あ、私は前を!!」

えっ?ちょっとちょっと!前は自分で洗えるけど!

「や、やるわね…ラシュトルニ」

僕の前面を洗うとするラシュトルニを止めたいが照れながら頑張ってる姿に諦めた。

…正直に言うとめっちゃ気持ちいい!!

その時、緊迫な表情でヴィゼーが走って来た。

「ハルト様!緊急事…たい……失礼…」

背中を向けて帰ろうとした。

緊急事態と言った気がするが…

「じゃなくて!緊急事態です!族長達が危ないです!手を貸して下さい!」

「な、何ですって?」

慌てて服を着て僕とヴィゼーの案内で食材確保に出たダークエルフの族長達がいる場所に急いで走った。

「一体何が起きたです?ヴィゼーさんが慌てるなんて…」

「スリーヴァルティが現れました…」

「……えっ?霜の巨人?」

「はい…」

霜の巨人族の一種スリーヴァルティ…頭のか九つの暴食の巨人…奴が現れた所は草一つ残さず食べ尽くすと言われてる。

そしてスリーヴァルティ一人でサイクロプス10体を軽く壊滅する程の強力な相手だ。

族長達が心配になった僕は全速で走った。

それのスピードにラシュトルニとレーイミが追いついて来た。

ラプス族はめっちゃ足が速かった。
.
.

「くっ!さすがマムンティア大陸だな…こんなとんでもない化け物に出くわすとは…」

エムライ族長は軽傷だが頭から血が流れていた。

巨人3体に退路を塞がれてラプス族は逃げられないなかった。

それを置いて逃げる訳には行かないダークエルフ達は応戦する事になった。

ダークエルフ達は必死にラプス族を守りながら戦ったが完全に押されていた。

「族長!」

「ヴイゼ!ハルト様!」

「何とか間に合いましたね」

「よかった!」

巨人三体と戦っているダークエルフ達は半数は負傷してるが幸いに軽傷だった。

あと一人の巨人はスリーヴァルティではなかった。

岩に座りただ観戦してるように見えた…

きっとこいつがボスだ。

ラプス族は全員無事だった…ダークエルフ達の奮闘になんとか守れたようだ

「さすが!ダークエルフ達!!さて!加勢します!」

僕はスリーヴァルティに飛び込んで一体を蹴り飛ばした。

もう一体が背後から大きな拳を振り回して来た。

「遅い過ぎー!」

その攻撃を避けて腕を掴み地面に投げつけた。

それで退路を確保出来た。

「おお!さすが、ハルト様!今だ!体制を立て直す!怪我人は後退しろ!」

「ラプス族達も今のうちに安全な場所に避難して下さい!」

エムライ族長と僕の指示に怪我したダークエルフとラプス族は素早く隠れた。

攻撃されたスリーヴァルティは何が起きたか分からないような表情で立ち直った。

しかし…ダメージはほぼ無いようだ。

「うへ……頑丈だな」

「ハルト様!スリーヴァルティは物理攻撃はあまり聞かないです!魔法で対処しましょう!」

魔法、魔法ね……なんかまたどこかで被害者が出そうで気が引けた。

「闇の精霊よ!我が身に纏え!」

魔法攻撃の準備を始めたヴィゼーに続いて僕も同調を始めた。

「闇の魔神よ!我が身に纏えぇぇ!」

今回は格好よく魔神を呼ぶ事が出来た。

「…………ん?あれ?来ない?」

僕の呼び声に魔神は答えてくれなかった。

「はぁ……ひょっとして」

「ハルト様?どうしました?」

僕はヴィゼーから顔を逸らして静かにお願いしてみた。

「や、闇の魔神さん~助けてぇー!」

その呼び声に魔神が降りて猛烈に闇のオーラが漏れ出した。

何時も硬い命令口調で呼び出された魔神は僕のお願い口調に味を占めた見たいだ。

最早、魔神はお願いしないと同調してくれないようだ…。

「ハルト様……」

「何も言わないで……お願い」

「はい…」

見なかった事にしてくれたヴィゼーは攻撃を始めた。

「追跡する影の矢、敵を貫け!ウンブラサジッタ!!」

七つの影の矢は一人のスリーヴァルティに命中する…図体が大きいせいでいい的になった。

「うぐぅ………」

苦しそうなスリーヴァルティ…倒す事は出来なかったが効いてるようで僕もその魔法を使って見た。

「…追跡する影の矢、敵を貫け!ウンブラサジッタ!!」

200本程のバリスタに使うような大型の影の矢が発生した。

「あはは……なんですか?その矢?」

ヴィゼーは顔を引きつっていた。

「…柱か矢か分かりませんが!とにかく打ちかまして下さい!」

その柱のような影の矢はスリーヴァルティを肉片に変えた…。

その攻撃に怯えて逃げるもう一体の巨人がスリーヴァルティを止めた。

「敵に背中を向けるとは…霜の巨人の恥だ…死ね!」

「グオーー!」

素手の一撃で腹に大きいな穴を開けた最後の巨人。

それに一人になっても全く動じない姿…余程強さに自信があるようだ。

「ほう…魔神と同調できる人族は最早居ないと思ってたが……面白い」

他の巨人と違いその巨人はしっかりと喋れた。

「物理攻撃に強い耐性を持つスリーヴァルティを…ハルト様!この者は危険です!!」

僕もそれに頷き警戒した。

「この戦い…避けるべきです」

ヴィゼーの意見に賛成だが…ここで逃げたらラプス族とダークエルフ達は終わりだ…。

同族を躊躇なく殺す冷酷なやつに交渉が出来るとは思えないが一応話をして見た。

「ここから退いては貰えませんか?巨人さん?」

「クハハハハ!!面白い事言ってくれる…同族を殺しながら退いてくれと言うか!」

「あの…同族を殺した貴方に言われたくありませんが…」

「……………まあ、退くつもりはない!」

開き直った巨人は突進して僕の腕を摘もうとした。

僕はそれに対抗しどれほど強いか力比べをした。

「流れ込め、竜の血脈!ドラゴニアパワー!」

「ほう!竜人の怪力か!……面白い!」

力比べが始まった…怪力と怪力がぶつかる二人の足元の地面が割れ始めた。

「くっ!なんだ…こいつの力!」

力比べは僕の負けのようだ。

強化した僕より数倍は強くて…その怪力に押されて体が傾いて来た。

「ククク!小僧中々の力だ……だが!!」

押し倒された僕は蹴り飛ばされた…。

「かはっ!!」

壁に激突した衝撃で口から血が吹き出た。

まるで内臓を抉られた痛みだった。

なんとか痛みに耐えて立ち直ったが既にその巨人は飛び込んで僕の全身に猛攻撃を加えた。

その猛攻撃の衝撃で体が上手く動かなかった。

「つ、強い…」

「人間としては中々だったが所詮人間…つまらないな…死ね!」

「ハルト様!だめぇぇぇ!!!!」

「うわああん!!ハルト様!!」

巨人がトドメを刺そうとするとラシュトルニとレーイミが僕を庇った。

「ラプス族か…獣臭い!先に消えろ!」

二人を殺そうとする時ヴィゼーは槍のような杖で巨人の背中を突いた。

カーン!

「くっ!なんて硬さなの?まるで鋼のような皮膚じゃない!」

「ほお!ダークエルフの女か…俺の好みだ!ククク」

いやらしく笑う巨人はヴィゼーに近寄った。

「ハルト様!」

「ああ…こんなに血塗れに…」

三人のお陰で何とか体の感覚を取り戻した。

「だ、大丈夫……ありがとう、ラシュトルニ、レーイミ、ヴィゼーさん…」

それに二人を殺そうとした巨人に胸の底から怒りを感じた。

「…待たせたな…続きをやろうか!」

「ガハハハ!アレで生きてるとは!本当に面白い!!坊主、名はなんと言う?」

名前を聞いて来る巨人…相手として認めてたようだ。

「志村晴人…」

「シムラハルトよ!我が名はバーグリサール!ギンヌンガガップの生まれし者の直系の霜の巨人である!」

ギンヌンガガップの生まれし者?それって原始の巨人ユミルの事か!その子孫…?

僕はこの世界に違和感を感じた…。

この世界も僕の世界にもある色んな神話が実在している事に疑問を感じた。

今はそれより目の前にいる神に等しい相手にどう対処すればいいか考えたが…あまりいい答えが出ない。

ダークエルフ達もその名を聞いて武器を落とした。

「私達がどうにかなる相手では無い…ようですね」

「我が一族は終わりか…」

族長エムライとヴィゼーを始めダークエルフ達は戦意を失った。

ラプス族もまた全員恐怖に怯えていた。

ドクンドクンドクンドクンドクン!!

また胸が苦しくなって思わず胸元を強く握った。

無の空間と船の時と同じ感覚にきっと何かとんでもない事が起きると予感がした。

「皆んな!ここから離れて…今すぐ!!」

「いやです……」

「ハルト様と一緒に…」

ラシュトルニとレーイミは離れようとしなかった。

「きっと大丈夫だよ、僕を信じてくれる?」

そろそろ意識が朦朧となって魔神の同調が切られた。

多分…この一体は駄目になるかも知らない…

「すぐ離れて!危険だよ!エムライさんヴィゼーさん二人をお願いします!出来るだけここから離れて下さい!急いで!」

「……分かりました!全員退避しろ!」

「ハルト様!信じて待ってます!」

二人を連れて逃げたヴィゼーとエムライ族長はエムラとヴィゼーは悔しくて涙が出ていた。

「誇り高き我が一族が少年一人に…なんと情け無い!くそくそ!!」

「離してよ!ハルト様が!ああ!」

「いやあああああ!!ハルト様!!」

暴れるラシュトルニとレーイミもまた顔が涙塗れになっていた。

皆んな離れてくれて安心して意識を閉じた。

「魔神同調を解除するとは…何のつもりだ?ひょっとしてこのワシをナメているのか?」

「なめるなと…そのような価値さえなかろう」

一瞬でバーグリサールの懐に入って腹部に拳の一撃を入れた。

「くあ!…な、なんだ…この力は」

先と別人のような力で驚くバーグリサールは今までの余裕が緊迫感に変わった。

「meathepowerchao、de adversaliis vindicare homien si desideres formido cousa flere clamor patimorietur!!(我が力は這い寄る混沌、我に仇す者よ、絶望せよ、恐怖せよ、泣き叫び、そして苦しみながら死ぬがいい!!!!)」

重く鳴り響くような声でバーグリサールを睨むハルトの顔に怯えてるように距離を取った。

「そ、その言葉は…滅んだはずの!あり得ん!貴様ぁあ!何者だぁぁ!!」

またその邪紋と黒いオーラが発生した。

「まさか!!貴様は!!」

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