6話
ラプス族の戦士達もまた、皆んな痩せ細い体で今でも倒れそうな感じだった。
「待ってください!この方は敵ではありません!」
ラシュトルニが戦士達に僕が無害だと訴えてくれた。
「ラシュトルニ!人族を里に連れて来るとは…何をしたか分かってるか!」
でも信じて貰えずラシュトルニは責められた。
その大きい耳はお飾りか何かですかね…
「人の話聞けよ!ハルト様は私達を助けてくれたよ!悪い人じゃないよ!」
レーイミも僕が無害で命の恩人だと訴えるが聞く耳を持ってない。
「人族は我々亜人の敵だ!バカ言うな!」
「二人は騙されてるぞ!人族に善人などいる訳ない!」
二人の必死の訴えにも関わらず、益々険悪な雰囲気になっていくばかりだ。
皆んな僕を…いや、人族を憎むような表情…余程人族に酷い扱いされたようだ。
でも、ウサミミ達と仲良くなりたい!!いい方法は無いかな…。
「人族は出て行けよー!これ以上私達を苦しめないで!!」
「人族に里の位置が…もう終わりだよ…」
ラプス族の戦士達は口封じのため僕に攻撃しようとした。
力で平伏せるのは簡単だがラプス族は弱過ぎる。
抵抗したら怪我…いや、死人が出る恐れもある…それより彼らとは荒事をしたくなかった。
ラプス族達に嫌われずに認めて貰える方法はある!だが…使いたくない。
「お、オレ達も荒事はしたく無い!だけど…里がバレた以上は…」
震えながら僕に近づくラプス族の戦士達…もう衝突は避けるにはソレをやるしかなさそうだ。
クソ!仕方ない…こ、これの方法、この方法だけは使いたくなかった!!クソォォー!
僕は覚悟を決めて全身に力を込めて、悲しく叫び出した。
「ああああぁぁぁああ!!レッツ!パーージーッ!」
肩から血が吹き出した…あぁ…痛いっす。
そして、両腕が千切れ落ちた…超痛いっす。
僕は体を分離することまで意図的に出来るようになった。
そして、血を撒き散らかしながら、指で動き回る僕の両腕達…うううう…僕の腕だが…気持ち悪い。
「な、何だ!!」
「うわ!や、やめろ!!来るな!!」
「は、離して!!」
離脱した僕の腕達はラプス族を追い回したあと何人か捕まえてジャグリングを始めた。
凄い光景だった…。
しかし…分離は自在に出来るようになったがコントロールは全然出来なかった。
ごきっ!ごきっ!
腰から異音が発生した……こ、これは!
「くっ!うわぁぁぁぁ!待って待って!お前はいい!分離するな!」
下半身が360度回転して…分離した。
超強烈に痛いっす…意識が飛びそうっす!
ラプス族の里を走り回る僕の下半身…。
「キャぁぁ!気持ち悪い!!」
「なんだよ!一体なんなのよ!」
凄く開放的に燥ぐ僕の下半身はラシュトルニとレーイミに前で急に止まった。
そして、また腰をMAXにハッスルし始めて二人に近づいて行った。
「きゃっ!なによこれ!」
「こ、来ないで!何!なんか…へ、へ、変な物…硬くて生暖かい物を擦り付けてるよ!いやぁぁぁぁ!!」
ラシュトルニさん…ごめんなさいごめんなさい!!硬くて生暖かいもの擦り付けて本当にすみません!
「うわわあああー」
「化け物だぁぁぁぁぁぁ」
……ラプス族の里は…
一瞬でカオスになった!
そして、胴体のみ僕は戦士達に静かに問い始めた。
「うううう…このような人族、見た事ありますか?これでも…僕が人族に見えますか?」
虚しいく、悲しい、恥ずかしくて血の涙が出た。
「ひ、人族と誤解しました、許してください!すみませんでした!」
ラプス族の戦士達は素直に謝って来て武器を収めてくれた。
ああ…天国のお父さん、お母さん…こんな息子になってごめんなさい…僕、もう人間じゃない見たいです。
衝突を回避してから両腕はすぐ結合してくれた。
しかし、欲求不満の下半身は逃げるラシュトルニとレーイミに、その硬くて生暖かい物をずっと擦り付けようとして離れてくれない…。
戦士達の協力を得て死力を尽くしやっと抑えて結合に成功した。
「なんの騒ぎじゃ…!」
その騒ぎに老いたラプス族のおじいさんと里の人々が出て来た。
「族長!!こ、これは!」
「里の位置が…バレてしまった…ああ!」
「まさか!里に人族が…なんって事を!」
…繰り返す状況。
僕はどうすれば宜しいでしょう?運命の神様は酷過ぎる…。
悲しい泣き声で僕は戦士達にまた問いました…。
「うううう…もう一回、やりますか?」
「大丈夫です!絶対やめて下さい!」
ラシュトルニとレーイミが族長に事情を説明すると族長は丁重に謝って家に招待してくれた。
族長の家と言っても、他と変わらずボロボロだった。
ラシュトルニは族長と僕に飲み物を持って来た。
彼女は族長の孫娘で両親は人族との戦いで亡くなったと聞いた。
出されたお茶は、お茶だと思ったが只の水だった。
相当生活…いや、生存に苦労してるとすぐ気付いた。
「申し訳ありません、シムラハルト様…同胞の非礼をお許しください…」
「気にしないでください…あと、持って来たトロイントは里の皆んなに分け渡して欲しいです」
「おお!ありがとうございます…最早、食料も全て尽き…皆、飢え死になると絶望してた所でして…ありがとうございます」
飢え死からラプス族を救った…だが、あまり嬉しくなかった。
トロイントを食べ尽くした後、また同じ状況になるからだ。
非力なラプス族は狩もロクに出来ない…。
この状況を何とかしないとウサミミ達は絶滅だ。
いかんいかん!それたけはだめだ!
「あの?魔王様に助けを求めたらどうですか?」
「……ここから魔都まで、歩いて半年かかります…何回か若い子を魔都に援助を求めて使いを出したが、未だに戻らず…多分魔物か人族に捕まって…」
ああ…僕、えらい遠く流されたね。
皆んなの所にいつ戻れるか心配になって来た。
一刻も早く戻りたいがラプス族をこのまま放って置く訳にはいかない…。
僕はこの深刻な状況を解決してから戻ると決心した。
そして族長と解決策を議論した。
畑を耕し農作物を育てるとしても時間がかかり過ぎるし、危険な賭けだ…今の現状で失敗したら飢え死決だ。
それにこの一帯は作物を育てるに適してない石だらけで土が硬すぎる…なので保留した。
魔物を一掃して食料採取が出来るようにしようかと思ったが魔物が居なくなれば人族の侵入が心配になる。
むむ…仕方ない…目先の事を解決しよ!
ため息したくなるこの状況を解決するためまず護衛としてラプス族と食材採取に出る事にした。
そして、しばらくラプス族の里の滞在する事になった。
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捜査の編成の為、魔都に帰還したテスラと双子は魔王城に入城した。
長旅に様々な壮大な経験をしたテスラは玉座に座ると力が抜けてしまった。
(ああ……内乱、暗殺、暴動など様々な経験をしたが…今回は身心にこたえたわ)
鬱になるテスラ…だがハルトの捜査に出ないと国が危うい現実に歯をくいしばり耐えた。
「遠征兵を再編しハルト殿の捜査に当たれ!」
魔王が王命を下し各士官は編成を始めた。
「なぁなぁ?魔王ー」
(ああ…来ましたか)
玉座の後ろにバルトゥールが立って居た。
(ああ…ハルト殿!)
バルトゥールを抑えくれる唯一の存在の不在で不安で震える魔王テスラだった。