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2話

2章2話

魔王国、魔都べヘイゼルで獣人、翼人、魔人族の魔王国四元老中三人が論議をしていた。

元老員は彼ら其々自治領を持つ大領主であり、魔王すら無碍に出来ない権力者であった

「魔王テスラがもうすぐ、港都パマールに着くらしいですが…イルヨラス、タグマイ…対策が必要じゃないか?」

「まさか…あの司祭の報告が本当だったとは…女神様の帰還、聖魔戦争の勝利…カストーイラ…君と出兵に反対した私達の立場が…」

「ふん!形だけの勝利などどうでもいい!我々元老員が居なければ何も出来ない名ばかりの魔王などに何をおそれておる?」

腕を組んで魔王を貶す獣人族の男…元老タグマイ。

魔王国の最大の領土を持ち、魔王にも屈しない権力や兵力を所有している。

魔王テスラを王と認めず、国の政策の協力要請も拒否するばかりの傲慢な人物だ

「しかし…女神がお戻りになられたからには…」

「はぁ?それがどうした?その女神が何かしてくれるか?所詮、空から見下ろすだけの存在…当てにならん」

「た、確かに…」

「何の利益にもならない昔の戦争を終わらたと言ってもね…自己満足だ!」

「しかし、一緒に来ると聞いた女神の使いとは…何者でしょう?」

「女神の使い?どうせ、神殿からの派遣された神官か何かだろう!来ても、何か変わる訳が無い…そうだ!グラドニをその使いやらにぶつけて見るか…ふふふ」

「獣人将を?ははは!魔王の怖気付いた顔が見れなくて残念だ!」

「ワシらもちょっとお顔を拝見しに行きますか?あははは!」

「さあ…どう出る?魔王様よ?ククク!(上手く行けばその座から引き摺り降ろして貰うぞ…ふふふ)」

三人の元老員はまだその使いを利用し、挑発に乗った魔王に廃位させようと企んでいた。

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ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン

はぁはぁはぁ…胸が…苦しい!気持ち悪いし、船酔いか…何かな?

寝室で寝ていた僕は急に心拍数が上がり苦しくて起きてしまった。

お水か欲しい…双子も居ない!バルちゃんを警戒していつも部屋の隅で隠れてたのに…いざと時は居ない。

かん!かん!かん!かん!

緊急事態を知らせる鐘が鳴り、船の外が騒がしくなった。

「この海域から全速離脱!急げー!」

テスラさんの緊迫な声が聞こえた…

また、デビルヴェールでも出たのかと思い寝室からデッキに上がって見た。

デッキから見えた光景に驚きを隠せなかった。

凄い数の海の生物達が逃げるように水面から飛び出して暴れていた。

それに、船の後ろから巨大過ぎると言っても足りないほどの物が水面から顔を出し船に近づいて来ていた。

その顔は蛇か、龍のような形で、顔から下、この辺り全て海域は海獣の体に埋め尽くされていた。

ど、と、どんだけデカイんだよ!

その巨体に向かって飛んで行く何か見えた…。

「よう!久しぶりだな、レヴィヤタン!これは、何のつもりだ?」

その巨体の顔に降りて話しかけているのはバルちゃんだった。

不愉快な顔で今でもも殴り合いになりそうな雰囲気だった。

…ちょっと待った!レヴィヤタン?…レヴィアタン…ん?…げっ!

リヴァイアサン?

嘘だろーー!この世界にもいるの?神話の海獣!

太古の神々の手によって生まれたと言われている最強生物…リヴァイアサンに遭遇してしまった。

「あら?バルトゥール?…デビルヴェールの匂いに釣られて来てみたが…まさか君と会うとはね…」

「用が無いならサッサと去れ!」

バルちゃんはまるでこっちに目を向けないように自分にリヴァイアサンの視線を妨害するように見えた。

(…まだ不完全なお兄ちゃんにコイツを会わせる訳には…厄介な事に巻き込まれると面倒になる!)

「違うな…君じゃない。この魔力の感じは…まさか!!」

魔王の母艦の方に目を向けるリヴァイアサン。

「はっ?何訳分からん事言ってる?…まあ、いい!邪魔だ。失せろ!」

その最強生物の前に全く怖気ないバルトゥール…さすが邪神だ。

「……妹様、かっこいい…」

テスラさんはバルちゃんの威風堂々な姿に惚れ惚れする表情だった。

リヴァイアサンはバルちゃんの警告を聞かず僕達が乗っている船に接近して来た。

「レヴィヤターン…失せろって言ったはずだ!」

最終警告も無視したリヴァイアサンに戦いを仕掛けた。

「廃にしてくれよう!炎魔よ!」

ナーズラ村のイビルゲートを全壊させた真紅の火をリヴァイアサンに撃ち放した。

リヴァイアサンもその巨大な口を開けてブレスのような光線を撃ち互いの攻撃は相殺された。

凄い光景で開いた口が塞がらない。

「ビィィー!!全艦!散回しづつ離脱だ!巻き込まれたら終わりだぞ!」

魔王軍の船は散回しながら海域から全速離脱をするが、ぶつかり合った二人の攻撃の衝撃とリヴァイアサンの巨体に当たり数隻は木っ端微塵になった。

「ああ…我が兵達が!海に流された者を救助しろ!」

海が荒れ過ぎて流された兵の救助は無理だった。

ああ!いかん…ケモノ耳モフモフ達が!

助けたいが救助出来る術がない…助けを求める亜人達をただ見つめるだけだった。

その時、頭の中に聞いた事も無い言葉が浮かび出して無意識的に言って見た。

「onerariis object.(物体移送)」

流される兵達が浮遊させて離脱してる船に移送されていた…。

えっ?こんな魔法…僕は知らない!それに急に意識が朦朧として来た。

「おお!ハルト殿!感謝し……」

テスラは兵の救助してくれたハルトに感謝して礼を言おうとしたが言葉が途切れた。

「くっ!息も出来ないほどの邪気だ」

黒いオーラを撒き散らし、体には邪紋が刻まれているハルトを目にした。

なんだ?声が出ない…聞こえない、前も見えない…

ハルトはそのまま倒れた。

「邪気が止まった!邪紋も消えてる…やはりハルト殿は…邪神か?いや、そんな事より…」

テスラはハルトの意識を取り戻す為呼び掛け続けた。

「ハルト殿!しっかりして下さい!ハルト殿!ハルト殿!」

戦いの真っ最中のバルトゥールとリヴァイアサンが急に戦いをやめた。

「や、やはり、アナタサマでしたか…」

リヴァイアサンはバルトゥールを無視してハルトがいる船に向かった。

「お兄ちゃんに近づくな!炎魔よ全てを飲み込み滅せよ!」

数十の炎魔がリヴァイアサンを囲み超爆破を起こした。

「バルトゥール!いい加減にして!主様が巻き込まれる!」

リヴァイアサンはその超巨体を起こし全ての攻撃を受け止めたが、流石にその攻撃には耐えきれないようで辛そうにした。

しかし、ハルトを守ろうとしたつもりが…あまりにも大きい体を急に動いたせいで大きい津波が発生した。

それが魔王の母艦に直撃した。

「あっ!……………」

「おい!何してくれちゃてるの!」

「バルトゥール!貴女のせいでしょ!!」

「言い訳すんなよ!レヴィ!お前がやったんだろうが!」

「うううう…酷い」

運が良く船は無事だった。

「はぁはぁ…死ぬかと思いました…ハルト殿?……えっ?いない?まさか!」

テスラは船の隅々まで探したが、ハルトはどこにもいない…。

「そんな…」

ハルトだけ津波に流されてしまったのであった。

「…我が魔王国の滅亡危機です!ああああぁぁぁ!ハルト殿ぉぉ!」

その後、魔王テスラ…胃潰瘍で倒れた…。









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