28話 その2
ルルは閉ざされて消えた八寒地獄の空間が現れた場所に向けて叫び出した
「てぇめー!無の神!出て来いや!この恨み!八つ裂きにしてやる!その凍った体を摩り下ろしてカキ氷にしてやる!うわああああーん!!!」
凄い事言って泣き出した。
まずい!やっと戻る気になってくれたのに!
「ご、ごめんなさい!ルル姉!今度は素敵な場所といいムードで僕から…キスしますので!お願い泣き止んでくれよ!ねっ?」
号泣きするルル姉に僕は慌てて口走った…。
「シクシク……本当?」
「は、はい!!必ず」
「…………ふ、ふーーん…」
僕からのキス約束をして貰ったルル姉は泣き止んでくれた…効いたようだ。
今度はイビルゲートより大人の階段を攻略しよ…最重要課題だ。
「ラズリックさんが待ってるよ!ルル姉の事心配してたよ」
「そうだな…ラズリックのお陰で苦痛な天界生活をちょっと楽しくなったし」
ルルはラズリックとのイタズラの思い出にくっすと笑った。
「レイラさんもルル姉の事、凄く心配してたよ…一緒に来れなかったけど僕をここに入れるように全力で手伝ってくれたよ」
自分が殺されるところだった事を…ハルトは知らない。
「………………………うん、そ、そうね…まぁ、あいつね…案外面白いおもちゃ…いや…使徒だしね」
レイラを思うと何故か落ち込むルルだった。
今…おもちゃと言いましたよ?あっ!まずい!ルル姉のテンションが急激に下がってる!レイラさん!一体貴方はルル姉に取ってどんな存在ですかぁ?
何故か帰る気が失せるルル…また、崩壊している空間を憂鬱そうに眺めていた。
仕方ない…ルル姉の為に僕は鬼になります!恨んでもいいです!ちょ、ちょっとだけね…。
「ルル姉…もうそろそろ飽きません?レイラミンチ遊び?メタファールさん?でした?もう慣れてる見たいだし…」
「うん?例えば?」
よぉし!食い付いたぁぁ!
「新しい遊びを考えませんか?例えば…主神様の聖地になんか…仕掛(レイラ)たり……主神なら、[ごめんね!お兄ちゃん!]と一言で許してくれるでしょう!」
ルルは急に目を光らせた…帰る気MAXになった顔だ。
「め、め、名案だ!流石私のハルト君!」
ご、ごめんなさい…レイラさん、主神様…。
「ふふふ、そうね…帰るとするか…」
ルル姉は優しく笑った…僕が帰って欲しくてイタズラの話しを持ち込んだ事も全て気付いてる笑顔だった。
なんだ…バレたか。
「私はもう器に戻る、現存する力もあまり残ってなさそう…」
その言葉を聞いて急に胸が締め付けられるような痛みを感じた。
前から覚悟した…ルル姉とのお別れ。
いつまた再会出来るか分からない…前バルちゃんに聞いた話しでは器に戻った神が回復するにはかなりの時間が必要だと聞いた…。
僕が生きてる間にまた会えるか分からない。
胸が苦しくて辛い…でも、受け入れるしかない。
「うん……早く会いに来てくれよね?」
泣きたいが笑って見送りたい…でも悲しい感情までは隠しきれなかった。
「ああ、心配するな!天界の力…思い切り全力で吸い込んで最短で回復して会いに行くよ!」
自信満々な顔で約束してくれた…お陰でちょっと落ち着いていつかは会えると希望を持ってた。
「うん!待ってる…」
「しかし、ハルト君はどうする?」
「どうするって何を?」
「私が回復する間の事だよ」
ルル姉は心配見たいだが…でも大丈夫、仲間もいる。
それにやる事は決まっている!
「ああ…うん!実は冒険者やってるんだ!それにせっかく来た異世界だよ!色んな所、色んな国を見て回りたい!」
「そうか…気をつけてよ、会った時怪我でもしていたら……下界を火の海にするからな!」
顔が本気だった…僕は下界の運命を背負ってしまった…気をつけよう。
「わ、わかったよ…」
ルル姉の体が光り始まり、器に戻ろうとした。
「ハルト君、私の器に戻ってから光を送る…その方向に行けば天界に戻れるはずだ…」
「うん!ありがとう、ルル姉」
「しかし、残念だな…今回は言わないのね…楽しみにしたのに」
何故か残念そうな顔で見つめていた…。
「え?なにがですか?」
ルル姉はニコッと笑い僕の耳に優しく囁いた。
「私を口説く時、言ってた決めセリフ…」
うん?……………………まさか!まさか!
「ほらー、森羅万象の頂点に立ったとか?」
……ああ…そんな!心を読んでいたの?
「ゴットスレイヤーになり申した…とか?この世が虚しいせっ!っと言った事…今回はどんな決め台詞が聞けるか期待したのに……」
「ああああああああああああああぁぁ!!」
まさか!今までずっと読んでいた訳じゃないよね?ねぇー?
「そうそう!!その顔が見たかった!じゃねー女誑しのハルト君!愛してるぜ!イヒヒヒヒ」
器に戻ったルル姉…最後まで見事な意地悪だった。
さ、さすが、ルル姉…油断も隙もない!今度から気をつけておこう…心眼、怖ぇぇ!
崩壊が激しくなった無の空間から脱出する為にルル姉が示す方向に行ったら天界と繋がっている空間が見えた。
そして…無事に天界に戻ってから一息する暇も無く神々に囲まれた。
「おお!少年が戻って来たぞ!」
「それって…解決されたって事?」
「結果報告!返事要求!」
三馬鹿が涙目で迎えてくれた…嬉しいというか消滅するのが余程怖かった見たいだった。
「少年!よく無事に戻った、ルナの器の色を見る限り解決したようだな…無の空間も急に崩壊し始めた…」
主神が嬉しそうに僕の肩を叩いた…超痛い!なにこの馬鹿力…。
「はい、全て終わりました!ルル姉も無事です!」
「おおおおおおおお!!!!!」
神々は喜び歓声を上げていた…何故か僕も嬉しくなった。
主神と神々に事の説明をした…しかし、それを聞いたボルグランが険悪な表情で口を挟んで来た。
「人の身でありながら…主神よ、この少年は危険ぞ…」
歓喜に溢れた空間が急に静かになった。
こんなにキュティークルで平和を愛する僕に危険とは…失礼しちゃうわね!
「……確かにこの少年には何か分からない力が秘められてる気がする」
えっ?主神様!先の励ましはどうなったの?
「危険が及ぶ前に…いっそのこと…」
ボルグランは拳を握り殺気を放てた。
そう来ましたか…最悪こうなるかと予想はした。
でも、ルル姉の為、地上の仲間の為…なんとか切り抜け無いと……
試練を乗り越えて間も無くまたの危機に晒されるハルトだった。