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28話 山を越えてまた山…アナタ迷子です

崩壊が進み始まる無の空間…。

何故か帰らないと言い出す我が女神様。

いい加減にして欲しい…何故だ!僕、何の為にここまで苦労したの?ほら見てよ!この鼻血!歯もちょっとグラグラしてるし、目あたりは見事にパンダになってるよ!…っと抗議したいが言えない…。

「今回の事で気付いたんだよ……私は戻ったらいけないんだと…」

全て諦めたような悲しい顔だった。

「な、何言ってる!そんな事ない!」

その悲しい表情に僕は腹に力一杯込めて叫んだ。

「ハルト君は優しいな…こんな私を好きだと必死になって助けてくれた…ああ!短い間だが異界で君と一緒だったその時間がなんと恋しいか…」

ハルトと出会い只の女として過ごした日々を…ルルはその恋しい時間に戻りたいと思い切ない顔で笑った。

「これから楽しい思い出を沢山作ればいいじゃん!」

必死に説得したが…ルル姉は首を横に振った。

「君も見たよね…私と関わった者達を!皆んな怯えて、毛嫌いして居なくなればと…」

「そんな事は無いよ!魔王国の人達は皆んなルル姉が帰って来た事を喜んでいたよ!」

僕の反論にルル姉は顔を下に向けて涙をポタポタ落とした。

「でも、レナートは死んだんだぁ!あやつは私が興味半分で関わったせいで、無残に殺されてしまった、それが今回はハルト君になると思うと怖いんだ…辛いんだよ…」

その気持ちは分からんでもない…ナズーラ村のイビルゲート攻略の時、イリヤ達を連れ行かないようにした僕もそうだった…。

「でも!僕は大丈夫だよ!」

未知の生命体だし?

「それだけじゃない…ラズリックもレイラも私が面白半分で関わって…天界から除け者にされてる」

はぁ…ガラーウと無の神の事で大分心が参ったようだ。

「私の行いが悪かったせいだね…身に余る力を持って好き勝手暴れてた…バルトゥールに私の昔話聞いたらハルト君でもドン引きするよ?あはは……」

残念だが…それは大分前から知っていた。

「うん、知ってる…有名人だったね…ルル姉」

「え?………」

キョトンとしてるルル姉…。

「田舎の村人や神殿の司祭さん達に聞いたら洗いざらい教えてくれたよ」

(くっ!神殿二つや三つ…潰して置くべきだったか…下界を火の海にしてやる!!チキショウ……)

顔を引きつってる…まさかバレてないと思っていたの?

「ど、どうだい…軽蔑…しただろ?」

「何故?軽蔑する?意味が分かり兼ねませんよ?」

「何を言ってる…知ってるだろ!聞いたんだだろ?私の行い……の噂!暴力バカ女とか!天界災害指定生物とか!嫁に行けないナンバー1女神とか!色々言われて…あぁ…死にたくなって来た…」

ルル姉は自爆した…自分で言って自己嫌悪に落ちた顔だ。

「それがどうしたと言うの?」

「だから!こんな品もない女、周りに災難を散らまくような…うう…これ以上言わせんといてよ…」

うん、二度目の自爆、おめでとうございます。

くの字になってまた泣いてしまった。

仕方ないな……今度は真面目伝えるか、恥ずかしいけど…。

「周りが何と言っても僕には優しくて、何時も心配してくれて守ってくれたルル姉が…僕は…スキだよ…」

「…え?」

「実はね、初めて会った時、一目惚れ…しちゃった…あはは」

紛れもない僕の本心だ。

「この世界に飛び込んだ雷獣に襲われた時、自分は痛くて傷だらけになっても僕に傷一つ負わせなかった」

結果は死亡してしまったけど…。

「そんな人を嫌いにならないよ…そんなルル姉が僕は大好きだよ…」

(何?この胸にが染み付く感覚…)

ルルは涙目になりその胸の感覚か何かか確かめるように胸元に手を置いた。

「包み隠さず笑って、怒って、寂しそうな切ないような表情…そんな感情豊かなルル姉が、僕は悪い人には思いませんよ」

「ハルト…君」

「それに昔から今までの何から何まで…その全てがあってこそルル姉だよ…一つも欠けてはルル姉じゃなくなる…僕はね…その全てのルル姉が…好きなんだ」

嘘、偽り無い暖かい春の日向のように微笑むハルトにルルは信じられないような表情で嬉し感情に耐えきれず泣き顔になった。

「ああ……こんな、暴力女でも?」

「うん!元気でいいじゃん!」

ちょっと元気過ぎるけど…それもいい。

「私…性格悪いよ?すぐ怒るし…」

「その意地悪な性格も短気な性格も僕は好きだよ」

うん、表情ですぐ分かるから助かる…。

「天界災害指定生物でも?」

「勿論だよ!何それ…凄いあだ名!あははは」

天界か…僕の苦労の元凶だ!もっとやっていいと思う!

「あ、あ…ハルト君!!」

ルル姉のその豊満で弾力溢れるダイナミックなバストを僕の顔を思い切り抱きしめた。

(ああ!初めてだな…こんな私の全て好きと受け入れてくれた者は…私もハルト君が…)

「う!ぷ?ふ!」

息苦しい!だが…す、凄い!ブラのカップが破れた謎が解けたぁぁぁ!

ルル姉のバスト[bust]に僕の顔がバースト[burst]されそうだ。

「ああ…私の!世界一大切なものを見つけたよ…ハルト君!!」

ルルは愛おしくてたまらないような顔でハルトにキスをした。

ルル姉!僕のファストキス…?イリヤのあの医療行為はノーカンにしてくたさい…。

ハルトは知らない…イリヤの医療行為はノーカンとしてもこれはセカンドキスだった事…。

凄く驚いた!でも嬉しい…。

僕もルル姉をそっと抱きしめて受け入れた。

ドキドキするが…不思議と安らかな気持ち…ルル姉の暖かい温もりが全身に伝わってずっとこのままにいたいと思った。

だが………体の奥深い所から異変を感じた。

………あっ!やばいやばい…なんか、なんか…戻って来るぅぅぅぅ!

「げぶっ!!!!!」

僕はルル姉とキスの最中…口から大量の血を吹き出してしまった……。

無の神に殴られた反動が今来てしまったようだ…超ーやばいっす!

ポタポタポタポタ…。

……高過ぎる大人の階段…急いで登ろうとしたらコケましたぁぁ!チクショウ!

ルル姉の顔は僕の鮮血だらけ…慌てて顔を拭いているが…妙に大人しい。

(あはは………ふぅ、私のファストキスは焦げた焼肉味、セカンドキスは鉄分だっぷりの血の味!…凄いな…こんな経験したのは世界が創造されて私が初めてじゃないだろうか?)

死んだ魚の目で崩壊している空間をただ眺めるルル姉…その複雑な感情が痛いほど伝わった。

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