27話 その2
そして地獄の最深部から聞こえた無の神の尋常じゃない悲鳴にガクガク震えるルルは生まれて初めて恐怖を感じたようだ。
「最後に何か意味わかんない事言ったが…」
その言い残した最後の叫び声が凄く気になるルルだった。
「今のハルト君…怖い!超怖い!アレ…本当に私の可愛いハルト君なの?嘘だろ…ほぇ…」
亀裂が消える同時に、ハルトの身体から漏れ出す黒のオーラと邪紋も消えてそのまま力尽きたように倒れた。
「ハ、ハルト君ーん!!」
ルルは空間の底に落ちて行くハルトを抱きしめ受け止めた。
「ハルト君!しっかり!目を覚まして!!」
無の神が居なくなった無の空間は徐々に崩壊し始まった。
あ…頭がふらふらして体のあっちこっち痛い……ルル姉!
目がパッチリ覚めた。
無の神にやられた時より痛みが三倍に増えた感じだった…痛すぎる!!
「る、る…姉?」
「ああ!目が覚めたか…ハルト君私だよ…分かるか?」
「うん、大丈夫!意識ははっきりとしてるよ」
「こんなボロボロになってまで…私を救ってくれるなんて…ああ」
ルル姉は意識を取り戻した僕を見て安心したか涙をポタポタ落とした…また泣かせてしまった…。
…………救う?どういう事?
「む、無の…神は?!!」
慌てて無の神を探したがどこにも居ない。
「居ない……まさか!もう同化が!ルル姉!」
「落ち着け、ハルト君、私は私のままだ…ひょっとして覚えてないのか?」
「良かった!!って何をですか?」
記憶に御座いません…。
「あーやっぱこうなるか!安心せい…無の神は君が無限地獄に落とし…マッチ売り少女になってる…もう終わったのよ…」
あまりにも信じ難い状況に適度に状況説明をしてしまうルルだった。
「もう、終わった?あはは…良かった!ルル姉も無事だ…はっ?私が誰を?何処に?…マッチ売り少女?訳がわかりません!」
「君が無の神をトッカン!と寒い地獄に突き飛ばして、シュー~んと落としたせいで奴はガクガク寒さに震えてたぞ?そして深い地獄の底まで落としてそこからもう永遠に出れないようにしたじゃないか…凄かったぞ」
僕の驚く顔を見て楽しくなったルル姉はノリノリで状況再現を加え事の説明してくれた。
「その説明だと僕…まるで極悪非道な悪人見たいですよ…シクシク…」
「ふふふ、その姿を見ると、やっと私の可愛いハルト君に戻った気がするよ」
ルル姉…本当に意地悪の達人だ。
ルル姉の安心したような表情を見るとやっと終わったと実感出来た。
それで嬉しくて…涙が出て来た。
「本当に涙脆いのう…」
僕をそっと抱きしめて頭を撫でてくれてる…ああ…何か凄く落ち着いて安心出来る…。
ガガガガーー
無の空間が急激に崩壊が早まって来た。
「空間の崩壊が始まったか…」
「ルル姉、皆んな待ってる…帰りましょう!」
ルル姉に手を差し伸べたが……躊躇した。
「ごめんなさい……私はこの空間と共に消えるとする……」
はい?…………はあーーー?
「な、な、な、何を言ってるの!ルル姉!」
その言葉に耳をを疑った。
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無の神が八寒地獄に落ちる前の主神の半分吹っ飛んだ聖地では神々が結界の維持で疲れ果てていた。
それに無の空間が不安定に膨張と縮小を繰り返していた。
「何が起きてる…?こんなに空間が乱れるとは…中で何がとんでもない事が起きてるに違いないな」
[うかっ!くぇ!かはっ!きゃははは!ふあっ!おえーーっ!ああああ!!!!]
「…もうそんな事はどうでもいい!最後の結界これが破れたらお終いだぞ主神よあと!この訳わからない悲鳴…気が散る!」
[くっ!きゃっ!ぐあっ!ウヘヘへへ!かぶっ!あぐっ!ウギャーーーー!]
終わらないガラーウの悲鳴の中で……主神と闘志の神ボルグラン二人のみが結界を維持に頑張っていた。
ほかの神は既に器になった者もいた。
「はぁはぁ…キリシュー…なんか手がない?」
「そうだよ!あなた!無の神は祖先みたいなもんでしょ?」
「無理…記録ない…」
三馬鹿も力尽きて座り込んでいた。
「しかし無の神は…何故この世界を壊そうとしたかな?」
「キリシューは知ってる?」
「黙秘権行使…弁護士を要求する…」
何故か話すのを頑固に拒否する虚無の女神キリシューだった。
「おいおい…今の状況で何を言ってる…」
「そうよ!訳も分からずに死にたく無いわ!お願い教えて」
「……、、関係………、取…れた…」
「ん?なに?聞こえないよ!」
「三角関係……寝取られた!!」
芸と美の神は無限に湧き出す脱力感に肩を落とした…
キリシューの話しによると創世の神一人の神と二人の女神が自分達の楽園を作ろうとした。
その間、女神達は恋に落ち互い公平に愛されて貰うため協定を結ぶが、独占欲に負けたもう一人の女神が夜這いをかけ寝とってしまった。
それを知った無の女神は怒り狂い二人の愛の巣になるその世界を壊そうとしたが…阻止され消滅されたと言った。
「………い、い、色恋沙汰に世界と神々が滅んでたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわあああああん!!」
激怒を通り越して虚しさに泣き始めた芸と美の神だった。
「ご先祖様がごめん…だから言いたくなかった」
気まずそうに謝るキリシューだった