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25話 辛い経験は分かち合いたい

無の空間は宇宙のように無重力で壊れかけた星々が流れていた

全てを呑み込み、そして消滅する…ここは世界の死刑場であり、墓場…それが無の空間だった。

その中でルルと見知らぬ女性が言い争っていた。

「もう諦めて全て委ねよう…」

「うるさい…もう、付き纏わないでくれるかな、迷惑だ!そんなやつ!レイラで間に合ってるから…だから!消えろよ!」

「もういいではないか…長く苦しんだであろう?」

「まあ…色々あったが…貴様に言われるとムカつくね…クソ!体が動かない…侵蝕が大分進んでしまったか」

力が抜けて空間の流れているルルは…体の機能がほぼ麻痺しているように見えた。

「もう分かったであろう?この世には貴方の居場所などない…」

「黙れ!!!死に損ないの亡霊が……」

「また、貴方の大切な者がこんな世界に苦しめられる事になる」

「……私がなんとかする!」

「レナードはなんとか出来たか…」

その言葉に怒り出すルル。

「黙れ黙れ!黙れぇー!」

「次は…あの少年か?」

「何を…言ってる!やめろ………」

「四六時中守れる?自分の事で一杯であろう?あの少年もレナードと同じようになる可能性は無いと言える?」

「ハルト君が……居なくなる…」

「もう良いではないか…そのような悲劇…見たく無かろう?」

「私の…ハルト君が…レナードのように…」

心を揺さぶる無の神。

ルルはハルトの事で心が揺れてしまった

(あぁ…侵蝕がもうダメかも…ん?なに?あれ?)

「ん?そんなバカな!入れるはずがない私の空間に!なんなのよあれは?」

人のような物がルルの方に流れて来ていた。

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無の空間に飛び込む事に成功したハルトは超光速移動の衝撃で気を失い、空間にゆらゆらっと流れて行った。

「う、う…ん……ルル姉!!!」

目が覚めたハルトはルルを探すように周りをあちこち振り向いた。

「うわああああぁぁ!そんな!……………ま、またですか…もう!驚かないよっ!!」

また両腕と下半身が分離されてるハルトだった。

そのパーツが……一緒にゆらりっと流れていた。

「……もう、勘弁してくれないかな?」

ああ、苦い記憶が思い浮かぶよ…

「仕方ない…やるぜ!みんな!」

今度は両手が先に合体を開始下。

胴体の真上から肩を狙って落ち来る両腕達。

「よぉし!来い!そのまま、合体だぁ!」

しかし、何がの違和感を感じた…。

腕が、左右逆だった。

「いやいや!ちょっとタンマ!ちゃーうわ!逆!!左右逆だ!逆に合体してしまう!僕、未知の生命体から未知の稀生体になってしまうよっ!!」

このままじゃ背中が胸になってしまう!

体を反対向きにしようと必死に足掻くが手足がない状況では向きを変えるのは無理だった。

幸いに両手も気が付いたか、互いに手を取りあい位置をスレ変え間一髪に正常合体した。

「よっしゃ!左子、右子!お利口さん!」

僕は…僕の腕に名前をつけた。

「セット完了!ふぅ…あぶねーさあ!次は…来い!下半身!」

下半身は猛烈にローリングして胴体に飛んで来た。

「よぉし!合…げっぶ!」

胴体にそのままローリングアタックして来た。

「痛い!何してる!下半身!」

目の前で腰をMAXにハッスルしている下半身…。

「あー…」

何が怒ってる?何故?…あっ!あれか?

「うん、ごめん!その童貞卒業の約束、今、そんな場合じゃなくてね、いずれね…だから…それ、やめろよ!お願い!」

下半身は不満そうに何も無い空間に足蹴りして渋々、胴体と接触してくれた。

こいつらの意識はいったいどこから…?それに下半身のあの性欲は一体…?まさか!僕の…むすこ?じゃないよね?

「とにかく!合体完了!…稀生体になりかけた未知なる生命体ハァールト!」

何とか合体出来てから下を向け下半身を睨みつけた。

まあ、今後から分離しないよう気をつけよう!さて、ルル姉を探さな……………く。

「……………」

「……………」

すぐ下にはドン引きした顔で僕を見上げているルル姉ともう一人が居た…。

「君の大切な少年、うん……中々愉快な少年だね…見事な腰の動きじゃった…」

「うん……そんな年頃だから…分かってあげて…あとそれ以上言わないでくれ…」

「う…うん」

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その頃、主神の聖地には……掃除機のような音が鳴り響いた。

「ラズリック?何それ?」

冥界の女神メタファールが不思議そうな顔で音を出す物を見ていた。

「私が開発したゴミ吸引魔道具ですよ!掃除が楽になります!」

「ほぉ…いいね!んじゃ…早く頼むよ…血生臭いから…」

「はい!」

レイラのアレを素早く片付けるラズリック…。

そして、神々は今回の騒ぎの主犯ガラーウの処罰を考えている。

「主神よ、ガラーウにどのような処罰を与えるか?この世界と我々の存亡の危機にまで落とし入れた罪…極刑に与えしても足りないぞ?」

「ひぃ!お許しを、お許しください!」

必死に許しを請うガラーウの前にラズリックが出た。

「主神様…その処罰、私に委ねて頂けないでしょうか?この者はは私の主を愚弄し、このような事態になりました、その始末は私達にさせて頂き存じます」

「一理ある…だが自分の手を汚すことになる…よいのか?」

納得する主神だが少し気が重い顔だった。

「あら?物騒な…そんな事はしませんよ…主神様も望んでないでしょう?うふふ」

「おお…すまぬ…寛大な処置に感謝する!この件はラズリックにガラーウの処罰を委ねる!以上だ!」

配下を死なさずに済んだ主神は喜んでラズリックに任せた。

主神の判決に異議を問う神もいなかった…ただ可哀想にガラーウを見つめるだけだった。

「さあ…そこのおバカこっちに来なさい!あと、バルトゥール、貴方も一緒にね!」

「ん?私?…何の用だ?」

「ねぇ…ハルトちゃんを危険に晒したこのゴミ…なんとかしたくありませんか?(ゴニョゴニョ…)」

「やらせて頂きます!ラズリック様!!」

ラズリックはバルトゥールに何かを吹き込み、楽しそうに喜んで受け入れた。

「うふふ、宜しい…さあ…行くわよガラーウ」

二人はガラーウを引き摺り別室に移動した。

(何故邪神を?何するつもり?なんか!怖い!!!)

ストレッチをするバルトゥールは何故か嬉しそうな表情だ。

「さぁー!処刑を始めよう!貴様も…私があの女にやられた経験…味わって貰おう!くへへへ!」

「バルトゥール、道具を用意しに行って来ますね」

「頼んだ!ラズリック!ゆっくりでいいよ~時間かかるから!くへへへへ!」

ラズリックはどこかに去った。

「な、な、何する気な…ぶっ!かっ!うっ!ぱっ!やめっ!あっ!」

ガラーウの顔面を激しく踏み付けてから両足を掴みゴミを払うように地面に叩きつけ始めた。

「くぇ!ただの、かはっ!…暴力、くぁ!処罰じゃ、きゃっ!ないの?うっ!」

「えへへ…そうだよ!単純にボコるだけだよ……と思ったら大勘違いだぁークソあまっ!」

「くぇーーーーー!」

ガラーウの腹部を激しく殴りつけるバルトゥール。

「イヒヒヒ!同じ場所をピンポイントで殴り続けられた気持ち分かるかな???」

バルトゥールは同じ場所を正確に殴り続けた…ガラーウは血を吐き鼻血まで出て来た。

「それも半日間!痛みを通り越して快楽になるぜぇ♪イヒヒ!口から内臓吐いたことある?」

周りはガラーウが吐き出した血だらけ…今でも死にそうな表情だった。

「キヒヒヒ!それだけじゃ無いからな!楽しみにしてくれよ!キャハハハ!ウリャぁぁ!」

(…また何があるんだよ!やめてぇぇ!)

その鬱憤をガラーウに当て付けしていた…。

「う……、………」

ガラーウは意識が朦朧として死にかけていた。

「あっ!死んだ困るから回復魔法も忘れずに定期的♩計画的に♩」

(ああ!怖っ!怖っもう殺してぇ!悪魔、悪魔よ…ルナファナリールカぁぁぁ!)

隣から聞こえる騒がしい音やガラーウの悲鳴に目を瞑り聞こえないフリをする神々…

「皆んな…結界の維持に集中しよ…」

「……はぃ……」
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無の空間に入った僕はバラバラになった肉体を合体した直後、バッタリとルル姉に会えた。

「うわぁぁ!ルル姉!」

ああぁぁ!このドン引き顔…くそぉ!!アレを見られるとは…もう死にたい…チキショウ!僕の下半身め!!もう…リリヤに頼んでちょん切って貰おうかな!

股間が激しく痙攣するのを感じた…。

やっぱ!お前だったのかい!むXこ!

その目をそらしたくなる再会に全員身体が凍り付いたように固まって動かなかった。

ルル姉ともう一人も同じくどう声かければいいか戸惑って沈黙していた。

「…………」

「…………」

「…………」

「何か突っ込んでくれよ…」

「うん…ごめん…」

ルル姉は謝って顔を逸らした。

「何で謝るんだよ!余計に死にたくなるじゃん!」

「その腰の動き、お見事でした…」

「今それ言う?この人!空気読まなさ過ぎでしょ!そこの姉さん…黙ってて!」

「……うん」

冷静さを取り戻した僕は大事な事を気づいた。

「えーと、まさか…貴方が無の神様?」

「私が無の神だ……」

やってしまった!心の準備も無しで隠れラスボスに遭遇してしまった。

それに怒鳴ってしまった…やばい!

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