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18話 狂犬注意

僕達はラズリックさんの力でイビルゲートの地下から浮遊して地上に向かった。

「と、飛んでる…ひぃ!」

落ち着かない…不安で子供のようにリリヤの腕を掴んでしまった。

「どうしました?顔色が悪いですよ?」

「いや、苦い思い出があってね、空中は苦手だよ…」

アイシビエッチの事を思い出すとカタカタ震える…あれはもう二度と経験したくない!

「いいですか?バルトゥール、地上に上がってからは自重してくださいな…派手に力を使わない事!」

そこは、もうちょっときつく言い聞かせて欲しい…。

「ふん!私に指図するな…分かってる!」

本当かな?邪神様、お願いしますよ!

バルトゥールは、自分の力を封じてイビルゲートの核にした邪神達の元に戻るつもりは無いようだ…僕としては一刻も早く帰って欲しい…。

「ここにお兄ちゃんがいるから、邪神界に戻る必要ないし!ねぇ?お兄ちゃん!ふふん♪クンガクンガーお兄ちゃんの匂い!たまらんわ♪」

抱きついて僕の体に顔を埋めるバルトゥール…

うん…帰らなくていいんじゃないかと…思った。

「汗くさいょ?」

可愛い仕草…好かれる事は嬉しいが、後ろの二方が…怖っ!

ゴゴゴゴゴー

二人方の怒りのオーラが飛び散った。

「よかったね…超ー年上の妹ができて……あーん?」

「ふふふ、オバァサマにお兄ちゃんと呼ばせるとは…鬼畜ですよ…ハルトさん」

新たな称号…鬼畜を頂きました。

「誰がババァだ!」

ああ……どうにもなれよ…。

地上に上がってから吹き飛んだ村の中央部を見て呆然とした。

やっぱ邪神界に返した方が良さそうだ。

「テヘッ!やりすぎちった?ごめんね、お兄ちゃん!」

うん、許す!村一つや二つぐらいなら…まあいいんじゃない?

お兄ちゃん…その言葉に弱い僕だった。

村人達が慌ただしく避難しているように見える。

「あの…皆んな様子が変ですが?」

リリヤが避難してるような村人に何があったか状況を聞いた。

「ガランディアが攻めて来てる!君達も早く逃げた方がいいよ!」

「ガランディア……フィリア姉さんを襲った黒幕…」

また無意識に口に出した…

はい!結果はご覧の通り…

「おい!ハルト、フィリアって誰よ…」

「またまた…新しい女ですか?」

来ましたよ、またのそのツッコミ!

「依頼主だよ!前の護衛依頼の!」

「ふーん」

「へーぇ」

その浮気を疑う嫁の目…まじやめろって!

「ふむ…あのはしたない女の事ね…ハルトちゃんを触りまくって膝枕…ぷっぷ」

「ラズリック姉さん…話がややこしくなるから黙ってて貰えません?」

ガランディア軍に攻められパニックになったナーズラ村は今までのぼのぼのした田舎の居心地良さは何処にもない。

戦争になるとこうなるか…この村好きだったのに…。

「ハルトちゃん、まずあの燃えるゴミ…いや…ガランディア軍を片付けましょう!」

ラズリック姉さん、貴方…本当に怖いです。

僕達はまた浮遊し正門に向かった。

「うわー!ウザウザ居ますね…」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!燃やしていい?」

顔に「虐殺大好き」と書かれたように楽しい表情だった。

止めないと大虐殺犯として歴史に名を残す事になると予感がした。

「やめてください、バルトゥールさん…」

「えーー!残念、あと!昔みたいにバルちゃんと呼んでよ!」

「うん……」

昔って言われてもな…?何故…兄と思ってるか聞きたいが、それは後にした。

ぼぉーーーーん

「うおおおおおうーーー!」

ほら貝の吹き音と共に歓声が聞こえた…ラーズ王国の国軍が到着したようだ。
.
.

「将軍…」

「はっ!全軍突撃!かかれ!」

「うおおおおおうーー!」

散回してるガランディア軍はラーズ軍の攻撃に次々とバッタバッタと倒れていた。

「慌てるな!数は我が軍が圧倒してる!第三、四陣!回り込み左から攻撃!」

ガランディアの将軍は有能だった。

数の優勢を利用し突撃するラーズ軍を受け止め反撃を始めた。

「敵将も…中々やりますね…」

「数の優勢を活かしたか…そう簡単には崩れてくれませんね…」

両方が膠着して益々戦は激しくなった。

「中央本陣!押し返せ!第六陣は後ろに回り込め!」

ガランディア軍はラーズ軍を三の方向で囲み同時攻撃を仕掛けて来る。

「騎兵隊!左の敵陣を叩け!敵に後ろを取られるな!第5陣は回り込む敵陣に阻止しろ!」

ラーズ軍も易々やられてくれない。
.
.
「ラーズ軍が少し押されてるようですが。ラズリックさん…加勢しますよ?」

フィリア姉さんが心配になった僕は飛び込もうとしたが止められた。

「ハルトちゃん、ちょっと待ってね!まだ役者が揃ってないの~思ったより遅いわね」

役者?…戦争映画でも取るの?

「うむ、役者の一人が来たようだ…」

ナズーラ村北方向から大軍勢が向かってく来た…その中から高速で一人の翼人がこっちに飛んで来た。

「ハルト様ぁぁぁ!……けっ!ラズリック様!レイラ様!」

空から土下座したまま高速で降りる翼人…司祭ラネースだった。

「ラズリック様、レイラ様…ハルト様!ただ今魔王テスラレイズが自ら魔王国軍1万5000率いて参戦に参りました!」

えっ?ま、魔王!

「やっと来たわね…私を待たせるとは、いい度胸だわ」

「ひぃーーお許しを!」

「まぁいいわ、ラーズ軍に加勢を伝えて来なさい!それにラーズは退却しても構わないとね!あとは…あの方達が動いてくれるの待つだけかな♪」

「は、はい!」

「ラズリック姉さん…僕はどうすればいいですか?」

ラズリックさんの意図が分からずどうすればいいかわからない。

「ああ、ハルトちゃん…これはね、聖魔戦争の続きなのよー」

あっ!そうか、そういう事か!

「オトシマイって…その事ですか?ん?……なら後の役者って!」

「当たり!やっぱハルトちゃんは賢いね!勇者も賢者も居ないから戦争はつまんないけど…まぁいいでしょう…本命は楽しみですわ!ウフフ」

…楽しみって?神々の戦争だ…そんな話し聞いてない!それに、ルル姉の復活と関係ないんですけど!

魔王国軍の登場にガランディア、ラーズの両方混乱した。

ラーズ国の本陣で戸惑う女王フィリア…。

「どいう事でしょう?何故ここ魔王国が!」

「分かりませぬ…一時退却しますか?」

「魔王国が宿敵のガランディアと手を組むはずがありませんが…」

状況を把握出来ず決断を迷う時、ラネースが到着してフィリアに向かった。

「止まれ!何者だ!」

空から降りたラネースを近衛が瞬時に囲み剣を抜いた。

「私は破壊の女神様に仕えている司祭ラネースと申します!」

ラネースの前にフィリアが出て来た。

「皆んな、剣を納めて下さい…司祭ラネース、貴女を魔王国の使者で判断してよろしいですか?」

「はい!我が魔王国はシムラハルト様を害しようとしたガランディアと創造の女神に破壊の女神様の名の下に交戦します」

その言葉を聞いたラーズの将軍は顔が青ざめた。

「それって聖戦戦争の再来になりましたぞ!女王陛下!!」

「その通りです…なので!ラーズ王国は退却しても構わないとの事です」

フィリアはしばらく黙って、戦っている自軍とガランディア軍を見て決断した。

「いいえ!我が領土でただ見るだけではいけません!それに、ハルト様は私の恩人でもあるのです!盟約を破ったガランディア国はこれより完全に敵国と見なす!将軍!魔王国と連携してガランディア軍を追い出します!」

「……はっ!全軍に追達!魔王国と連携してガランディアを叩き出せ!」

フィリアの命令に全軍に攻撃命令を出す将軍。

「うおおおおおうーー!」

ガランディア軍はラーズ軍と魔王軍に挟み討ちにされた。

「クソ!何故こんな時に魔王国が…これはまずい…」

魔王軍の獣人達の攻撃は凄まじくガランディア軍の陣形は完全に崩れて勝敗が決まろうとした。

その時、空から巨大な光の門が現れた。

「ラズリック…やっと来たぞ!」

「待ちくたびれたわ…あらまあー、創造の門から派手に登場しちゃって…」

それを見た、ガランディア軍は歓声を上げる

「おおおうー我らの女神様よ!」

総崩れに敗北前のガランディア軍が一気に士気が上がった。

「おお!使徒様だ!我らを救いに来て下さった!」

「うおおおおーーー!」

創造の門が開き中から、使徒ドルゥガと二匹の歪な獣が出て来た。

「神獣フロトス、ラダーよ!魔王軍とラーズ軍を蹂躙せよ!」

二匹の神獣は二手に分かれ両車を攻撃し始めた。

芸の神グランデの神獣フロトスは、6メートル程の大き狼の形をして氷のような冷たい冷気を放ち魔王軍を凍らせる鋭い牙で噛み砕く攻撃をした。

虚無の神キリシューのラダーは馬の形で黒い炎を体に纏いラーズ軍に突撃し体当たりや足で蹴ってり踏んだりしてる。

美の女神の神獣、雷獣ガライアは既にルルに殺されて…美の神は出番無しだった。

「ハルトちゃん達は狼の神獣を頼んでいい?レイラはあのむっつり男を相手して~」

「うむ、承知した」

「分かりました!イリヤ、リリヤ!行こう!」

僕達とレイラさんは各自任された相手に向かった。

「さあーて!私も…ん?」

バルトゥールがラズリックのスカートを引っ張った。

「おい…私だけ放置されるのはいやだけど…」

「うーーん、血で汚れたく無いしな…まあいいか!それじゃ!あの馬…宜しくね!」

「分かった!任せて!」

バルトゥールは鼻歌を歌いながらラーズ陣営に歩いて行った。

「お馬さんーお馬さん~♪」

バルトゥールはラダーに手を振りながら呼びかけて向かって、邪気に反応したラダーは猛突進して来た。

「ガキ!何やってる逃げろ!死んでも知らんぞ!!」

ラーズの兵士は逃げるだけで一杯一杯だった。

「そんな!避難に遅れた少女が!助けに行かないと!!」

「女王陛下!いけません!危険です!」

本陣からフィリアが飛び出そうとするが近衛に止められた。

「ああ!ダメーー!逃げて!」

フィリアは切なく叫び出した。

「お馬さんーお馬さん~♪♪………ぺっ!死ねや!うりゃあぁ!」

突進して来るラダーにスクリューアッパカットを決めたバルトゥール…。

首がへし折て空中に吹っ飛ぶ神獣ラダー。

「……げてー…」

「…」

「…」

目を疑うフィリアと近衛…とラーズの将軍と軍人達…。

とーん!と重い音と共に落ちて来るラダーは泡を吹きバルトゥールの前で倒れた。

「はっ?弱っ!本当にこいつ神獣なの?つまらんなー!」

ブンブン回す拳を振り下ろし、ラダーの体に拳を突いた。

ドォーーン!と衝撃音と共に飛び散るラダーの肉片と落ちた足一本…

「えへへ!戦利品ゲットだぜ!お兄ちゃんに褒めて貰おう♪」

それを取ってまた鼻歌を歌いながらハルトがいる場所に向かった。

「………幻…でしょうか?」

「…そう思いたいです…」

バルトゥールの活躍によってフィリアとラーズ軍は神獣から救われた。

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