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17話 その2

その一方、夜明け前にナズーラ村は大パニックになった。

「かん!かん!かん!かん!」

街の物見台がら緊急の鐘が鳴り出して衛兵隊は急いで集まり騒いでいる。

「なんだ?こんな時間に?」

「緊急の鐘を鳴らすとはなんの事だ!?」

衛兵隊長らしき中年の男が状況を聞いて来た。

「正門から距離2キロメートル先、武装集団発見!!」

「なんだと?」

隊長も物見台に上がり確認した。

「あの旗…金の獅子!ガランディアだ…それに創造の神殿の旗まで?何が起きてる?こんな大軍が…」

まだナズーラ村にはガランディアの宣戦布告の事に知らせが届いてなかった。

「使いを出せ!向こうの意図が分からん!この様子…おかしいな…」

夜が明け日の出が始まりガランディア軍がハッキリと見えた。

数は5万を超える大軍で先方は神殿騎士団が立ってガランディア軍は村の包囲を始めた。

「使いが戻りました!」

「報告を聞こう…」

「ガランディアは既に我がラーズ王国に宣戦布告してるらしく…その…抵抗をやめて降伏しろっと…」

「宣戦布告だ?盟約はどうなってる!」

「それに、創造の女神に仇なす少年を差し出せとの事で、名前がシムラハルトという冒険者らしいです」

「……めちゃくちゃだ!一階の冒険者一人に一国の軍が……」

その時、ラーズ国の国都から伝令が届いた。

「伝令!我が王国軍が間も無く到着するとの事です!」

ガガガーーーん!

その時、大きな地鳴がなってから村の中央部に大爆発と熱の塊のような巨大な火柱が空に飛び散った。

「こ、今度は何だ!何が…起きた?」

「た、た、隊長!村の中央部とイビルゲートが消滅しました…」

「は、は、は、…訳が分からん…」

この凄まじい爆発でガランディア軍も動揺して包囲をやめて一時退避した。

「くっ!全軍!距離を取り、散回しろ!……こんな田舎村に戦略級魔法だと?」

「将軍…これは撤退しろとの警告?でしょうか?」

「分からん…だが、迂闊に動けないな…あんなの食らったらひとたまりもない!対策が必要だな…」

その爆発は、意識を取り戻した直後のバルトゥールが放った攻撃だった。

ナズーラ村の衛兵と警備兵、ガランディア軍両方はこれに対処に戸惑い動けなかった

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ガランディアの侵攻を止める為に動いたラーズ王国軍…その本陣の先頭には女王フィリアが立っていた。

「なんでしょう…?あの巨大な火柱は…」

ナーズラ村の近くに来たラーズの国軍にもその火柱がハッキリと見えた。

「女王陛下!あれは戦略級魔法じゃないかと…」

「魔法ですか……」

「あれほどの大魔法…ガランディア軍の者であれば勝ち目は御座いませぬ…」

ラーズの将軍は絶望的な表情だった。

(あのような大魔法の使い手に覚えがあります…ハルト様が飛んで行った方角もナーズラ村!)

フィリアはその火柱はハルトによるものと勘違いした。

「あれは、間違いなく味方です!」

「なんと!?味方にあれ程の魔法使いがいれば!」

「はい!将軍!今が勝気です!動揺しているガランディア軍に急襲をかけます!」

「はっ!全軍全速前進!」

フィリア女王自ら出陣したラーズ王国軍2万はガランディア軍に向けて全速で進軍を始めた。

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「あの、お二人さん…」

「お兄ちゃんに悪性の毒虫が……消毒よ!燃やしてやる!炎魔よ!」

「あなたこそ!吹き飛べ暴風の風吹!」

火と風を出して構える二人…僕はその中に入って戦いを止めようとした。

あー、これて、死んだらマジで笑えない…。

「ば、ば、バルトゥールさん!リリヤ!落ち着いて!」

「お兄ちゃん!どいて!あの毒虫!燃やせない!」

「ハルトさん!離れて!あのババァ!飛ばせない!」

「誰がババァだぁ!」

「誰が毒虫だよ!」

なんだ…この幼稚なやり取り…でも、ちょっと面白い!いやいやそんな場合じゃない!

「二人共!ちょっと待て!待て!」

必死に止めたが二人共聞かない…まじヤバイ。

その時、僕の前に空から光の柱が落ちて、中からラズリックさんとレイラさんが出てきた。

「ハルトちゃんーー!無事で良かった~」

メシアが降臨しましたぁぁぁ!

二人を見て初めて嬉しくなった!

「ラズリック姉さん!それにレイラさん?どうしてここに…」

「核を壊したら、迎に来ると言ったはずだ…」

あっ!そうだったよね…ならもうちょっと早く来てよ!

「ほう?久しいな、天界の犬」

バルトゥールはリリヤの事は無視して今度はラズリックさんとレイラさんに殺気を向けた。

「はなし!う、う……う」

その隙に僕とイリヤは荒れてるリリヤを片隅に連行した。

「あら?久しぶりだね…邪神ティシーポネーバルトゥール」

「………ククク、謀略の神ラズリックと天翼レイラか…私の前に出て来るとは手間が省ける!」

今までとは段違いの迫力のバルトゥール…その力は本当に測りかねない。

「あら、私はいつでもいいけど…私達が暴れたら大丈夫かしらね?…」

バルトゥールは一瞬…止まり僕を見た。

「あっ!ちょっと待て!一時休戦…」

「いやんー♪どうしよう?こんなの出しちゃったよー♪」

ラズリックさんの頭上には全てを燃やし尽くすような勢いで燃える青い火の玉が現れた。

「な、な、神の業火!!待て待て待て待てい!お兄ちゃんが死ぬ!やめろー!」

あの…邪神に守られています、そこどう思いますか?神様?

「ラズリック…ふざけるのは後にしろ」

「ふーん、そうね……ホィ」

…消さずにどこかに投げたその神の業火は村の離れに大爆発が起きた。

そこはガランディア軍がいる場所だった…散会してなかったら間違い無く全滅した。

「な、な、無許可で下界にあんなの打ちかますって正気か!ラズリック!」

「あーれ?わたし、燃えるゴミの日を間違えてしまった?ウフフ」

「主神に絞られる…ああああっ!」

「まず上に上がりましょう…」

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創造の女神聖地…。

「あはは!ラズリックめ!主神の許可無しに下界に干渉して、我が信徒達にまで手を出した!よし!よし!これでいい!トゥールガよ!」

「はっ!」

「力の解放を許す!必ずあの少年を仕留め、奴の神の器を持って帰って来い!手段は任せた!」

「はっ!必ずや」

いよいよ動く創造の女神ラグレシア…。

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