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16話 その2

僕達はナズーラ村のイビルゲートの最深部に着いた。

「静か過ぎるです…。」

「本当に最深部なの?」

「………構えて!!来るよ!!」

最深部全体が揺れで来た…。

地面から薄い紫色の光が発生して、そこから丸い形の虫の卵のような物が出て来た。

「あれが…イビルゲートの源核…?」

「あれが?気持ち悪いわ…」

「なんて禍々しい……」

中から何か蠢いてるのが見えた。

「……どうする?様子みる?」

「壊してしまいましょう!お姉ちゃん」

リリヤは躊躇なく弓を放ってイリヤも槍を投げた。

「爆風の矢よ!」

「貫け!ソニックピアシングスピア!」

リリヤの矢が核に当たる瞬間、爆発して衝撃波が発生した。

その衝撃波は核とその周辺を押し潰すほど強力だった。

イリヤの槍は風を纒い高速スパイラル状態になって核の中央を閃光のように貫ぬいた。

前と比較にならないように強くなっている…僕が居ない間に何があったの?

「あの、二人共、ひょっとして……カイオウサマでも会えた?」

「カイオウサマ?なにそれ?」

「真相精霊様には会いましたが…」

「しんそう?」

真相精霊…精霊王と呼ばれる存在だった。

双子は僕の足手まといになってると感じたらしく、僕と横に並ぶような強さを求めた。

風の精霊の元に尋ねて試練を受けて成し遂げると真相精霊に力を賜るとの話を聞いた事を思い出して、僕には別口の女性のみのパーティーのヘルプに行くと言って精霊を探しに行ったと打ち明けた。

精霊は誰でも簡単に会える訳ないが、生まれ付きの風の加護持ちの理由で精霊も興味半分で会って貰い、試練も無事に成し遂げ真相精霊から風使いの力を賜ったらしい。

「そうだったんだ!…よく頑張ったね!」

「えへへ」

「しかし、これで終わりにして欲しいが…」

「…そうには行かなさそうです…」

ほこりの霞の中から人のような影が見えた。

「本命お出ましだ…気をつけて!」

その影は霞を払って姿を見せた。

少女の姿…長い白髪に黒肌、小さい手の指先には長く鋭く見える爪…周り全て飲み込むような禍々しい気配に僕はピリピリと緊張した。

攻略が未だに二つのみって…その理由が分かる気がした。

これ、マジ勝ち目ある?

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「……ディシーポネーのバルトゥール」

「…何!あの戦い狂いのバルトゥールだと?」

いつの間に復活したレイラ。

「邪神君主に逆らって封印されたと聞いたが…まさか、イビルゲートの核にされたとは…」

「邪神らしいな…使え無くなったら味方すら消耗品か…毛皮らしい!」

「こんな、さすが私でも予想できない!ハルトちゃん…ダメかもね…」

ラズリックは想定外の事で座り込んでしまった…。

「相手がね…腐っても邪神だ」

「…ハルトちゃん」

「主様の器だけでもなんとかしなくては…最悪、奴が死んだら…主神様の怒りに触れても…私が行って来る…」
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「ぐぁ…あ…ぅ…きぁぁぁぁぁや!!」

奇声を上げて鋭く見える爪を立て敵意を見せた…。

理性が無い本能のままで狂った魔獣のように襲い掛かって来た。

「奮い立て、鉄壁の守り…テトラヘドロン プロテクト!流れ込め、蠢く龍の血脈、ドラゴニアパワー!一瞬の死と生、刹那に喰らい付け セネロプス バーサリオス デックス!」

僕は自分と双子に使える全ての強化魔法を次々とかけた。

そして最深部の主との戦いが始まった。

その爪は鋼より硬く鋭く、薙ぎ払うだけの風圧でカマイタチが発生するほどの威力だった。

なんてやつだ!攻撃を防ぐだけで、全身の骨に響く…痛い痛い…。

ラズリックさんから貰った装備をしてなかったら既に終わっていた。

爪の突きと払い切りが非常に早くて対処に戸惑った…こっちは剣の長さだけが頼りだった。

剣と爪がぶつかり合い飛び散る火花、風圧…並の冒険者なら巻き込まれると死体も残らない激しい双方の攻防が続いた。

隙を見てイリヤとリリヤも加勢した。

弓で撹乱し、回り込み背後に立ったイリヤは渾身の一撃を放った。

「なっ!うそ!」

完全な背後からの奇襲を簡単になぎ払い、イリヤを蹴り飛ばした。

「イリヤ!!」

「お姉ちゃん!!」

「かっは……ぅぅ」

イリヤは吐血して、痛みに耐えきれなくて腹を抱えて血面に倒れた。

「リリヤ!イリヤを頼む!うぉー!」

僕が引き付ける間リリヤは姉にポーションを飲ませた。

「はぁはぁ…もう大丈夫…ハルトに加勢しないと…化け物にも程があるわ!」

「姉ちゃん!完全に回復できたからだよ!」

「まだ、動ける!」

無理するイリヤに僕は止めた。

「イリヤ!僕に任せて今は回復に専念して!」

あまりにも力の差があった…全ての攻撃は弾かれて反撃を食らった。

戦いが始まって2時程経った…僕達は傷だらけだだが相手はかすり傷一つない…。

「あはは、こいつは…無理だな」

勝ってる気がしない…あらゆる攻撃パターンを試したが…全て弾かれた。

「はぁはぁ…何言ってる!」

「ハルトさん!諦めるのは早いです!」

満身創痍の二人を見て無意識に唇を血が出るほど噛み付いた…悔しくて涙が出た。

「二人共…今すぐここから退いて…」

最初から覚悟は出来ていた…でも、双子だけは死なせたくない

ごめん…ルル姉。

「いやだね!」

「私も冒険者です!覚悟は出来てます!」

本当に自慢の仲間だ…だからこそ、死なせたくない!

「イリヤ!リリヤ!いい加減にして!早く逃げろ!お願いだから聞いてくれ!」

「ふっ!逃げられない、無理だよ…」

「はい!無理です」

素早い動きで逃げるのは簡単ではない…でも、双子が逃げるまでの時間稼ぎは出来る。

「僕が抑える!その隙になら逃げられる!早く!」

イリヤは槍を持って入り口に向けて構えた。

そして…崩壊させた。

「何を…やってますか?イリヤさん?」

「ねぇ!無理でしょ?」

「ちょ!おま!おま!なにしてくれちゃてるの?!!これじゃ勝っでも出れないじゃん!」

「ふふふ…勝ってから考えましょう!」

完全に退路が無くなった僕達…最早、勝つ以外は生き残れない状況になった。

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