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16話 レイドもハーレムも一人では成り立たない

ナズーラ村 イビルゲート前に着いた。

よし!勝つか死ぬか二択のみ!リタイアって選択肢は無理だ…レイラさんに殺される…。

ブツブツ不満を言いながらイビルゲートの中へと進んだ。

下級魔物は僕のピリピリした気迫に怯えて隠れて出てこない。

12階層に着いてから周りを目に焼き付けた。

懐かしいな…イリヤ達とトロール攻略した時の場所…あの儀式、楽しかったな。

もう、会えなくなるかもな…。

双子を思い出すと辛くなった僕はその場から逃げるように去った。

グングン降りて軽く休憩や食事も済まして、また降り続けた。

38階層まで着くと魔物の攻撃も激しく、数も増えた…でも、次々と僕の剣撃に魔物達は倒れた。

へぇ!この剣、凄いな…重みも丁度いいし魔物を切る感覚が豆腐を切る感じだ。

100を超える魔物を切ったが刃こぼれ一つ、傷一つ無い。

鋼の魔神の血肉で…出来てるんだよな?………怖いわ!いきなり魔神に戻ったりしないよね?

少し不安になったが止まらず下に降りた。

40階層まで着き再整備をした。

ここを一人で進むのは初めてだな、そろそろ気合い入れていきますか!薬や道具の確認しなくちゃ。

死んだら、ルル姉はどうなる?はぁ…。

自分の命よりルル姉の事が心配だった。

そして、瞬時に使えるようにベルトポーチに薬や道具を入れ順番を暗記した。

「どうにかなるだろう!よしゃ!未知なる生命体!ハァールトー!参ります!」

死の恐怖に耐える為笑いながら下の階層に降りようとする時に良く知ってる声が聞こえた。

「なに意味わかん無い事言ってんのよ?」

「一人でそんなに笑うと引きますよ?ふふふ」

思いもしなかった双子が僕の前で現れた。

「イリヤ、リリヤ…なぜ、ここに?」

二人は待ちくたびれたような顔して近づいて来た。

パッチ!パッチ!

二人は僕の頬の左右にビンタをした。

「痛い、ってなにすんの!母さんにも打たれた事なかったのに」

あっ……どっか聞いた事あるセリフ

「一人で、なに突っ走るのよ!あんた…」

「私達…仲間ですよ、なのに…なんで…一人で行くんですか!!ばっかぁぁ!」

ギルドから僕の様子がいつもと違うのを感じてずっと付けていたと双子が打ち明けた。

それ気付かなかった!お前ら忍者かよ!

ポーションや道具を急ぎ揃える姿を見てイビルゲートに黙って潜ると確信した双子は先に来て待っていたと話してくれた。

「いつも一緒にっと言ったじゃないですか!」

「…………ごめん」

リリヤは僕の胸を叩きながら涙を流す。

「ハルトがなにか悩みを抱えてるのは知ってるわよ…でも…いつか…打ち明けてくれると信じて待ってた…それなのに…」

そうか、僕の事、よく見てていたんだね。

「……ごめんなさい」

僕も胸が苦しくなり涙が出た。

「バカバカバカばかあああっ!一人で何やってるんですか!何かあったらどうするつもりですか!」

心配してくれてありがとう…でも今回だけは別問題だ。

「僕には事情があってね…今から最深部に行かないといけない…そんな危険な場所には連れていけないよ!退けないんだよ!僕も、僕も…怖いんだよ…」

「だから三人で…」

「バカ言うな…歴代勇者が運良く生き延びたと言われた最深部だ、それに……」

「それに…?」

「僕が死ぬよりイリヤとリリヤが死ぬのがもっと怖いんだ!解ってくれよ!!!」

大声で切なく叫んでしまった。

そう、僕の大切な…初めての仲間、その双子に何かあったら死んでも楽に死ねない…。

「あんた、本当…バカね」

「そうですよ…本当に、どうしようもないバカですよ」

二人は優しく僕を抱きしめささやいた。

「それは、私達も一緒だよ……」

「ハルトさんになにがあったらと考えるたけで怖くて辛いです」

あ……そうか、そうだったね。

イリヤとリリヤは僕に手を差し伸べた

「一緒に…ねぇ?」

「三人ならきっとやれますよ!!」

「………うん」

二人の手を取り彼女達に向けた顔は無垢な子供のような純粋な笑顔だった。

「私…その顔一生忘れられないよ…ハルト」

「ハルトさんと私の為にも負けません!」

もう僕は怯えてない、挫けない、逃げない!

死の恐怖や不安を乗り越えた三人は電光石火の如く下へ下へと降りて行った。

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破壊の女神の聖地

「……オゥマイガーッ!今見た!見たよね!ハルトちゃんの超激レア笑顔!!レイラ!ちゃんと録画した?」

「そんな機能ついてないよ…」

「なっ!!このポンコツが!!!ああああぁぁ!あぁ…もうー回見れるならいくら積んでもいいわ!もう一度見させて!」

水晶球に顔を貼り付けるラズリック。

レイラは体をバラバラになり万里眼の水晶球のデバイスになって魔力を発電機のように使われている。

イビルゲートは邪神の領域になるので、神々でも中を覗くのは不可能だ。

だが、ラズリックが改良した万里眼の水晶球とレイラの魔力を運用することで、短時間だが観れるようになった。

「もう…休ませて…限界まで来てる…」

3日徹夜でもしたようなレイラの青白い顔、魔力の負担が半端ないようだ。

「なに!こ、これは?あり得ない!そんなバカな!ハルトちゃんが危ない!!」

「どうした…。何があった?ラズリック………あっ!タメだ」

魔力の負荷が激しくて倒れるレイラ。

万里眼の水晶球も機能停止した。

「そんな!ハルトちゃん!ダメ!逃げて!あれと戦ってはダメ!」
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「はぁはぁ…随分と降りて来たな…今何階層?」

「はぁはぁ……80まで数えたけどもう面倒くさいからやめたわよ…」

「………ここ一つ部屋見たいですね、それに下へ行く道が見当たりませんよ…」

…嫌な予感、それにこの感じは!

「イリヤ!リリヤ!回復最大して道具の補充急げ!」

僕達はポーションを飲み始め、速やかに使った分補充した

「イリヤ!リリヤの護衛に!」

「分かったわ」

「リリヤも僕の指示があるまで攻撃しない!」

「はい!」

二人は妙にピリピリしている僕を見て最深部と気がつき警戒を最大にした。

僕は最深部の事より今感じている気配に焦りを隠せなかった。

異質で少し違うがこの感じ…この予感は外れて欲しいと願った。

でなければ敵は…間違いなく…。
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使徒…か
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神だ

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