14話 その2
しかし、その装備を触ると違和感を感じた。
「あれ?なんかこれ、金属見たいなのに温かいですね…」
僕の質問にレイラさんがその装備の説明してくれた。
「ああ、大昔…主様が破壊の女神の座に着く前に、天界に勇者ごっこが流行ってな…」
なにそれ?ルル姉が?神様もそんな遊びするの?想像がつかん!
「自分に相応しい装備の素材を求めてな…」
まさか!オリハルコンとか?ミスリルとかの伝説の金属か何か?
「…鋼の魔神を生け捕りにして、その血肉をぐっと絞り取って作ったものた…」
金属ではなかった…血肉だった。
「温かい理由は、まだ…それ、生きてる」
……………怖っ!生きてんのこれ!返品してもいいですか?…あっ!でも格好いいのでやっぱ貰います…怖くても自ら自分のアイデンティティを否定する事は出来ない
格好いいは正義なり!!
「それに、ちょうどオトシマイつける好機でね…お願いね?」
ラズリックさん…今何かしら不穏な事さらっと言わなかった?
「ルル姉の為ですし…ラズリック姉さんの頼みなら頑張って攻略します…」
「もう…ハルトちゃんたら!うふふ」
鼻息が荒くなるラズリックさん…清純に見えるが中身は真逆…でも誰かさんように嫌われるよりはいいと思った。
「逃げるなよ…逃げたら私が殺す…かはっ!」
ラズリックさんの空中踵落としが炸裂する。
この方ならきっと格闘界の新たな神話も作れると僕は確信した。
「今すぐナズーラ村に向かいます…でも僕はまだ馬にうまく乗れないので、まず馬車を手配しに行きます」
「う、う、待て!その必要は無い……」
血塗れで床に倒れてるレイラさんが僕を呼び止めた。
「え?でも時間が…」
一瞬で回復し立ち上がった…凄い再生力だ。
「司祭長は誰だ?…200年ほど前、私が預けた物があるはずだが……」
「い、い、イッセリナと申します…はい!レイラ様のお気に入りの神物と聞き及んで大切に保管しております!」
「うむ!それを出せ…」
「承りました!直ちに!」
全員その神物を取りに行った。
「レイラさん、なにが移動手段でもありますか?」
「そう!…一瞬でナズーラ村まで行ける…」
テレポート?移動魔法みたいな装置?なんかワクワクして来た。
「へぇ?おバカなレイラがそんな物も持ってるとは…意外だわ!」
「失礼な!!」
ラズリックさんはレイラさんを弄るのが趣味のような気がした。
「よいしょ!よいしょ!よいしょ!よいしょ!」
「…えっ?このデカブツは?」
ラズリックさんは皆さんが持って来たその装置を見て驚いた表情をした。
「きゃっ!なにこれ?」
「よし!邪魔者は排除!」
その大きな装置に気を取られたラズリックさんに光の縄で縛るレイラさん。
「何してるのよ!これは呪縛の光縄!何考えてる!レイラ、血迷ったか!」
呪縛の光縄、魔神もそれに捕らえられたら力を封じられ動けない、神すら一日中力を封じられるシロモノだ。
「黙ってて!!これが一番早くナズーラ村に行ける!」
「持って来ました!レイラ様!」
「ご苦労だった…ふふふ」
レイラさんは、懐かしい様な表情でその装置を見つめていた。
「へぇ?これがその移動手段ですか?」
長いカタパルトの様な作り…まるで何かの発射台見たいだった。
「これぞ!私の自慢の一品!神物!アイシビエッチ!昔良く愛用したな…中々楽しいぞ!」
何か聞き覚えがある言葉で僕は頭脳をフル回転した。
ぐぐるぐぐるー♪はい!検索結果二件!
I.C.B.Mは大陸間弾道ミサイル?ならI.C.B.H?大陸間弾道人間?…おいおいおい!まさか!
「待って!!やめろ!そ、それ!46代目勇者になった者が乗ってバラバラ死体になって大騒ぎになったやつじゃん!」
今何かしら凄い事言いましたぁ!
「時間がないと言ったのは君だ!それに坊やならちょっとバラバラになったところで問題ない!またくっ付くからな!」
人を何か変身合体ロボみたいに思ってる?
「やめろ!ハルトぉちゃぁぁん!」
「主様の為だ!覚悟きめろや!ヒヒヒ!」
凄く楽しそうで何かしら悪意を感じる…。
だが、ルル姉の為と言われてには断る訳にはいかない。
「い、い、行って参ります!」
僕の足をカタパルトに固定してニヤと笑うレイラさん
不安だ!本当に大丈夫かな?一応、身内だよね?
「よぉし!全員位置につけ!さあー!ナズーラ村に打ち上げろ」
「アイアイマム!目標!ナズーラ村!」
(イッセリナ)
「ナズーラ村 座標セット!クリア!」
(ラネース)
「カタパルト進路異常なし!クリア!」
(ミレナ)
「障害物異常無し!クリア!」
(そのアニキ)
「魔力の出力50%.59%.65%正常上昇85%.99%.150%?…あっ…230%!…えっと…ク、ク、クリアーァァ!!??」
(残りその他の冒険者仲間)
「今なんて言いました?その上がり方おかしいだろ!明らかに異常だろぉ!どこがクリアなんだよ!降ります!降りる!降ろせぇぇぇー!」
降りようとしたがカタパルトに固定された足は発射後に外される仕組みになっていた。
「えい!黙れ!人間爆弾がオペレーターの邪魔するな!」
「はい!認めました!僕爆弾にされましたぁぁ!」
「誤差修正0.05準備出来ました!」
「またやるんですかぁ?もういいです…早く打ち上げろ!チキショウーー!」
「よぉしセーフティ解除」
「セーフティ解除完了!」
「ククク…撃てい!!」
「発射!」
「ああああああああああぁぁぁぁぁぁー」
「ハルトちゃぁぁぁぁん!!!」
僕はルル姉を救う為、最終目標のナーズラ村のイビルゲート最深部に向けてマッハで飛ばされて行った。
レイラはその後、渾身の力で縄を解いたラズリックに肉体をバラバラにされ袋に詰められて聖地に戻った。
「……ふぅ、お騒がし方々だったわね」
緊張し過ぎて出た冷や汗を拭き取るイッセリナ。
「てすね…(司祭長…ノリノリだったじゃないですか?楽しそうでしたよ…)」
「ラネース……この事を魔王国に至急伝えて下さい…」
「分かりました!」
「頼みましたよ…」
ラネースは翼人の特殊能力を解放し超遠距離飛行で飛んで行った。
「聖都にいる亜人達にこの事を伝えてもいい?皆んながまた希望を持って生きて行けると思う」
「そうですね…でも、ハルト様の事は秘密厳守でお願いします」
「あのハルト様ならどこかの国や悪い組織に利用される可能性もあるからな…」
ミレナ達も破壊の女神の帰還を知らせる為神殿から去った。
「やっと!やっと…お戻りになられました!ルナファナリールカ様…この瞬間どれだけ夢見たか…あー!嬉しくて涙が…」
ルルの銅像を見つめているイッセリナは喜びと感激に震えた。
「ついに、これで、これで!……いい子ぶって、猫被る必要無くなったわ!!あははは!ッソタレめ!今までの仕打ち百倍でかえしてやらぁ!ククク…あははは!!」
流石…破壊の女神様のその司祭長…であった。