13話 その2
「うわぁー!思いっ切りクッサとやられましたね…」
傷が広がらないよう軽く押して止血しようとした。
「てぇめーぶっ殺すぞ!」
険悪な顔で睨んで来たリーダーのような獣人の冒険者は殴りかかろうとした。
「待て、待てよ!これぐらいなら治るよ!」
まず怪我人を安心させないといけない…それ方法はあるしね…。
傷ついた彼女にニッコリ笑いかけた…それで少しだが期待の表情になった瀕死の彼女。
「これぐらいって…いい加減な事言うな!致命傷だ!てぇめーの目にあの飛びててる艶々で綺麗な内臓が見えねか!あん?」
おいおい…こいつ本当に仲間なの?死にかけてる仲間の前で何言ってる?ツヤツヤって…アホなの?
「……………」
負傷してる彼女は両手で顔を隠していた。
お気持ちお察しします……。
「さてさて…ちょっと痛みが有るけど…我慢してね」
生命力が強い獣人族なら、自然治癒力も高いはずだ
「蠢く命の脈動…唸る生命の波動よ……促進せよ…ヒスメディカ」
「!!ウギャ……痛いしくすぐったい!」
ビックっと体を震えていたが何とか耐えていた。
「ハルトさん!何をなさったんですか?」
ラネースは怪我した彼女を見て信じられない表情になった。
凄い勢いで傷口が塞いでいき、時間の経過と共に大量に血を流して血色悪かった顔や肌もよくなって来た。
「これは……生き物の自然治癒力操作魔法…ヒスメディカ」
さすが司祭長…この魔法を知ってるようだ。
「それって…かなり高位の無属性魔法じゃないですか?…人族にその魔法が使えなんて…すごいです!!」
ラネースは助けを求めに来た同じ亜人が助かった事で涙目で喜んでいた。
怪我が治った彼女は身体を動かして見たりポンポン跳ねて体の状況を確かめていた。
「嘘見たい!何ともない…」
「よかった…お姉さんの生命力が強いお陰で普段より早く治った見たい」
「……………」
じっと僕を見つめる彼女…。
惚れてまうか?うふふ…。
「よかった!ミレナ!…本当に…よかった」
そっと抱きしめるリーダーは本当に嬉しいそうだった。
「アニキ……よく死にかけてる妹に致命傷だに内臓だに抜かしてるくれたわね…」
兄だったの!うわー!妹の前でよくも内臓がどうだと良く言えたね!この贅沢者め!許すまじ!
「え…と…」
「バカアニキ!!」
兄の腹部を思い切り殴る亜人ミレナ…泡吹いて倒れるそのアニキ…理想的に60度ヒネった見事な突きだった…。
うん!妹にそんな事言う兄はそれでいい!
「…人間の子に助けられると思わなかった、私はミレナ、冒険者やってる、まず礼を言う…ありがとう」
尖った耳、耳の中に柔らかそうな白毛、金色の瞳、長い尻尾、虎のような模様…獣人族最高だ!
「僕は、志村晴人です、同じ冒険者です!」
「へぇ…このあたりで見かけない顔だな…まあそれより何かお返ししなくては…借りは作らん!何か欲しい物があるか言えよ…」
ちっ!…そう来たか…。
ミレナは恩人に対して有るまじき態度だった…イッセリナさんの話しを先に聞いていたので彼女の態度も納得してる。
なら今一番やりたい事を頼んでみよう!
「では……一つお願いがあります…」
「ああ…」
「その耳!尻尾!無期限!触り放題を要求します!」
「………ふざけてんの?」
ふざけてなとない…超本気だ!逆に大金を払う用意も出来ている!
「いやいやいや!本気で…お願い!」
「はっ?それでいいなら……」
よっしゃー♪ミレナの言葉が終わる前に既に触り始めた。
「うわ!柔らかい!暖かい!耳も尻尾も本物だ!この感触…やめられない!クンガクンガ……いい香り!クンガクンガ!!」
「ひぃ!やめろ!匂い嗅ぐな!変態!!」
必死に抵抗するミレナ…でも、僕の力は超人!抜けれる訳がない!逃がしませんよ!うふふ
「何この子…力だけなら人の何倍有る私が…やめ!尻尾握るな!いやぁぁぁー」
1時間後…満足したからミレナを離してあげた。
あーー♪モフモフ最高!
「しゃーしゃーきゃるる!!」
怒ってるミレナさん、だが座り込み諦めた表情になった…。
「一応、命を救ってくれたお返しだ…でも!匂いは嗅ぐなよ!絶対だぞ!」
「善処します、ミレナ姉さん」
「うん、ならいいよ」
ふふふ、善処すると言っただけだ!やらないと言ってない!あれはもうヤミツキになったから辞める事は無理だ!
「しかし…この神殿…何とかならないですか?」
寂れて倉庫のようなルル姉の神殿…このままでいい訳ない。
「破壊の女神がお戻りならない限りは無理かと…」
そうだった…僕とレイラさん以外はルル姉の事は知らない。
「あの、破壊の女神様なら、二か月前程戻って来ましたよ」
司祭長は僕の言葉に少しムッとして不愉快な顔になった。
「神様の事で嘘や冗談はおやめ下さい!」
「本当の事ですよ!」
「はぁ…もし、お戻りなられたらその球体から我が女神様の気配を感じ取り神の健在を知らせる天の柱が立ちます」
「へぇ!だからここだけ柱がなかった訳ね…」
「そうです」
それなら、ひょっとして…。
球体に近づいてルル姉の器を当てて見たら…球体から強力な光が発して空に打ち上がった。
破壊の女神の大神殿に天の柱が立った!
「そんな!」
「おぉ!予想通りか!」
「何をなさったのですか!」
その光景に取り乱す司祭長とラネース。
「破壊の女神様を当てて見ただけだよ…」
ルル姉を崇める司祭だから信用して器を見せた。
「それは!その形…ルナファナリールカ様の器!!」
さすが司祭長…本物とすぐ分かった見たいだ。
「し、し、し、使徒様!!ご無礼をお許しください!!」
おっとりして冷静沈着なイッセリナ司祭長が地面に頭を降ろしている。
そして、全員…同じく土下座姿になった。
使徒?なんだ?聞いた事あるような…あっ!
「レイラさんの事?」
「銀翼のレイラ様をご存知ですか?私達翼人の憧れです!!」
へぇ!あの目つき悪いお姉さん、有名なんだ。
「口を慎め!!ラネース!発言の許しが出てません!お許しを…お許しを」
急にラネースを怒鳴るイッセリナ司祭長。
なに?…使徒ってそんな凄い者なの?
神の器はその使徒か、その神に認めた者以外は触れる事すら出来ない…普通の人間が触れると天罰が下されると聞いた。
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破壊の女神の聖地
「キタキタキタキタキタキタ!!!ハルトちゃん!予想より早くやってくれたよ!」
「柱が立ったのは喜ばしい…これで主様のシモベ達も胸を張れるだろ…」
レイラは嬉しくて口かニヤけた。
「そんな事はどうでもよくってよ!!」
「ん?何の事だ?ラズリック?」
「うふふ~ルンルン♪♪♪」
鏡を見ながら服や髪、身だしなみを整えるラズリック
「おいおい…何やってる?」
「愛しきのハルトちゃんに逢いに行に決まってるじゃない♪♪」
「なっ!まぁ…2000年ぶりに柱が立った…祝いの為大神殿に降りる事なら、主神様も何も言わないと思うが…」
「あら?そんな事どうでもいいと言ったはずよ~ルンルン♪」
「……まじ坊やに逢いに行くだけ?」
「まぁそれが本命だけど後今後のことも兼ねてね~♪♪」
「………そうか」
「全ての準備は整ったわ…チェックメイトよ!ふふふ」