11話 その2
衛兵隊の数も多く巡回も早かったので僕達の出番はないまま何事も無く朝日が昇った。
「総員!出発!」
国境を越えて森に入った。
「ここから無統治区域だ!魔物の襲撃に警戒して進め!」
「はっ!」
聞き慣れない言葉だったので依頼主に聞いた。
「無統治区域ってなんですか?」
「え?あ、はい、どこの国にも属してない無開拓地の事でこの密林も一角に過ぎません」
「へぇー!なら開拓し放題じゃないですか!」
「いいえ…そうでもありません。強い魔物の住処になり開拓は混乱で我が国も開拓は何回か行いましたが魔物の襲撃が休む暇も無く続き…放棄してます」
まじか…勿体ない!…ルル姉の件が終わったら開拓でもしようかな?
「国内もまだ対処できず資源採掘や流通に困ってるのが現状です…」
「大変ですね…」
森の中を進むほど馬車は激しく揺れて来た。
「きゃっ!」
大きい揺れで依頼主は姿勢を崩して僕に飛ばされて来た
「おっととぉ!」
彼女の体を抱き止めて揺れから守った。
「申し訳ありません…」
おおぅ…凄くいい香り!それに綺麗顔!
今まであまり気にしてなかったが…近くで見ると上品な綺麗なお姉さんだった。
「あっ、怪我してませんか?」
「はい……」
「お嬢様!!怪我はございませんか?」
マリーヌが心配で馬車に馬を近づけて来た。
「ええ…大丈夫です」
「よかった…ん?」
マリーヌは僕と依頼主が密接してる姿を見て睨んで来た。
仕方ないよ?あのお姉さんから来たから!それに揺れから守って護衛の任務果たしました!
マリーヌも状況を把握出来た見たいで睨むのをやめた。
「この先道が悪くしばらく揺れます…申し訳ありませんがしばしご辛抱を…」
「ええ…大丈夫です、気にせずに進んで下さい」
「はっ!」
揺れはもっと酷くなり依頼主は僕の腕を掴んで来た。
揺れと密着にファンタスティックな感触に戸惑い心臓がばくばくした。
やばい…ムラムラして来た。
それに僕にの体を調べるようにベタベタ触る依頼主のお姉さん。
大胆過ぎるよ!やばい!この状況で戦闘になったら…笑い者にされる!マリーヌに僕のアレを切られる!
「こんな細くて柔らかい腕で、あのマリーヌを易々と…」
ああー♪でも悪くないなー♪
「しかし、何故か暖かく…不思議な気持ちです…あっごめんなさい!」
筋肉質より脂肪質問は燃焼が良くて暖かいらしいです、それに僕はハイブリッド並みに燃費がいいですよ?ふふふ
「あっ!揺れ…止まりましたね…」
ちっ!
「ごめなさい…はしたなく勝手に触って…」
依頼主は顔を赤くしてして謝って来た。
可愛いな…それに大丈夫です、切り落とされずに済んだからオーライです!
.
.
破壊の女神の聖地
「な、な、な!私のハルトちゃんをベタベタ触るなんて!まだ私も触ってないのに!先に手付けやがった!あのメスブタ!ぎゃー!離れろ!呪い殺すぞ!こらぁ!」
遠慮なくストーカー行為しまくってるラズリック。
「ほう!また青春満喫してるね、これで169件目…メモメモっと!主様に後で報告しよう…ヒヒヒヒ」
嫉妬に怒り狂ったラズリックとルルに激愛されてるハルトが気に食わないレイラであった。
「あらあら…お客のお出ましだね…」
「ほう……小賢しい真似を…あの程度であの坊やをなんとか出来ると思ってるか…話にならんな…」
「あら?レイラ…ハルトちゃんを随分買ってますね」
「ん?あっ!キャハハ!魔物達よ行け行け!やつの内臓こと喰い殺せ!ウヒヒ!」
「っとレイラが言ってました…録音記録完了っと!ルナ様に報告しよーー♪」
「あああああぁぁ!!勘弁して下さいラズリック様ぁー!」
土下座して許しを請うレイラだった。
「ウフフフ」
.
.
.
僕達は魔物に囲まれて足止めされてしまった。
「なんという数だ…」
「やっと出番が来たが…こりゃ多過ぎだな」
サーベルタイガーの群約30体とオーガ4体にサイクロプスまで出て来た。
「総員守りを固めろ!馬車には決して近づけるな!」
「はいっ!」
マリーヌの命令に速やかに馬車を囲み守りを固める護衛達…。
彼女達は緊張感はあるが怖気ついた表情はかけらも見えない
かなりの精鋭と見える…心配は要らなさそうだ。
「おい…ハルト…!」
クイル兄が馬車の中の僕を呼び出した。
「ん?何?クイル兄」
「こんな森奥で馬に何かあれば厄介な事になる、あれを魔物の真ん中にやってくれるか?」
アレか…いいの?
「ん……わかった!気をつけてね…破片に当たると痛いだけで済まないからね」
「お…おう…」
僕が魔物達の正面に立つとクイル兄達は後ろに下がった。
「全員下がれっと伝えろマリーヌ」
「ん?よく分からないが…分かった、全員下がれ!」
マリーヌの命令で僕から皆んな下がった。
よし、これで行ける!
「ハルト様?!何を…危ないです!戻って下さい!」
依頼主は僕の事を心配そうで呼び戻したが、心配はご無用!
「さてさて、震え上がれ!大地に眠りし力よ…舞い上がれ」
「皆んな!衝撃に備えて!」
ネイビー姉は叫び、岩の後ろに身を隠した。
状況の理解が出来なかった彼女達も直感で盾を立て身を隠した。
「弾け、噴き飛ばせーイラップション!」
その瞬間地鳴りが始まり魔物の群の下から爆発が起きて真っ赤な溶岩が魔物を飲み込んだ
地下の溶岩の熱を利用した、無属性爆発魔法イラップション、中高位魔法だが…僕の魔力量に反応して威力は普通の四倍ほどある。
オーガ4体は溶岩に焼け、サーベルタイガーも5体以外焼け死んだり吹き飛ばされて破裂した。
「こんな子供が…無属性の中級魔法を…」
「バブバブー♪」
「ひぃ!ごめなさいごめなさい!」
マリーヌを含めて護衛の皆んなは目の前の光景に目を疑ってるようだった。
「……あっ!今だ!残りのサーベルタイガーを二人一組で確実に始末しろ!クイル!ネイビー!私とデカブツをやるぞ!」
「おうよ」
「お先にーー」
ネイビー姉が双短剣でサイクロプスを撹乱させた。
素早い動きに鋭いネイビーの攻撃はサイクロプスをイライラさせて、振り払おうとする時、マリーヌは足首を切りつけ体勢を崩した。
その期を逃さずクイル兄の渾身の一撃で首を跳ね飛ばして体は溶岩の上に倒れ焼け溶けた。
だった10秒ほどの事だった。
さすがクイル兄達…マリーヌもやるね!
護衛のみんなもサーベルタイガーを始末し終わった。
負傷者0で無事終わった。
「久しぶりの連携だね…」
「まだ腕は鈍ってない見たいだな…マリーヌ」
「ふっ…そういう貴様はちょっと鈍ったな」
「あっ?ガキンチョにボロボロにやられたやつがよく言う…バフゥー?」
「な、なに!クイル……貴様ぁぁ!」
「キャハハ」
三人の妙によそよそしい感じは最早何処にも無かった。
「しかし…お前のいう通りあれは化け物だな……」
聞こえてるよ?夜道気をつけ下さい…マリーヌさん
「だろ…」
だろ…じゃない!
「ハルト君に聞かれたらまたバフられるよ」
「ひぃ!!」
「あ…これ一生トラウマになってるかも」
「だね…」
二人はマリーヌを哀れな目で見ていた。
「しかし…妙じゃないか?」
「ああ……これは偶然に遭遇したわけじゃない」
「そうね…群れないサーベルタイガーや魔物も食い散らかすサイクロプス…この地には生態に適してないオーガ…」
「ネイビー、マリーヌ…」
「わかったわ…この周辺を調べて来る」
二人は調査に行って、それから馬車は森を抜けた。
日が落ちて来たのでそろそろ移動が難しくなってきた。
近くに川があったので水浴びも出来そうでそこで野営の準備を始めた。
一時間後暗くなってから二人は戻り報告を聞いた。
「…数多い召喚陣か、誰の仕業かは決まってるか…」
「気づいてたか、流石だ…クイル、ネイビー」
「この時期にラーズ王国で聖都に行くと言ったらすぐ気付くわ…」
「たから、君達に頼んだ、黙っててすまん…」
「まあいいさ…しかし、失敗してからには…益々過激になるだろ…」
「そうね……」
「心配ない、近衛も優秀だしあいつもいる」
「ああ、敵に回したくないね…」
三人はハルトがいる場所に目を向けた。
「ふんふん♪焼肉焼肉♪ジューシーな肩肉♪タレつけて~コンガリ焼いて~ママの味♪♪きゃっほー♩あっ!ロールケーキも切っておこう!」
エプロンをかけて鼻歌を歌いながら肉を焼いているその姿は緊張感などカケラもない専業主婦の鏡のような姿だった。
「……………」
「ある意味…頼もしいな」
「なんかうちらバカみたいじゃん…」
三人は笑い出してクイルとネイビーはハルトにいつも通り食事の催促をした。
肉も高評価だったが、デザートのロールケーキがメインの肉より沢山売れた…3日分を全部食べてしまった。
あと依頼主のお姉さんかロールケーキのリピートの要請が来た。