11話 人付き合いは慎重に…。
ハルトが護衛依頼を受ける数日前カランディア聖王国の王都クーカランでは国王の執務室で国王と宰相が密談を交わしていた。
「…我が神に仇なす少年を駆除せよ…か…」
「陛下…女神直々のお言葉でございます…無為には出来ないでしょう…」
「む…子供一人に軍を動かす事は出来まい…」
「神の事であるなら神殿に任せて置くべきかと…支援形で援助すれば女神様も不満は無いでしょう」
「そうしよう……問題はラーズ国か…」
「陛下……この期にラーズを我が王国の傘下取り込むのは如何ですか?」
「首相も盟約があるのは知っておろう?」
「はい…だがそれはあくまでラーズ王家との盟約です」
「………なるほど」
「ラーズ国王は病死……王位を継ぐ為ラーズの姫は王位の儀を受けようと聖都へ出立する予定です」
王位の儀とは王位を継承する際、聖都に神々に国や国民の安寧を祈り王として認められるための儀式だ
大陸全ての王族はこの儀式を行わない王位は認めない
だが実際、神々は興味はなく、彼らの自己満足であり他の国への公式発表見たいなものである。
「そこを襲えと?」
「いいえ…陛下の名を汚す必要はございません…」
「ほう……ラーズの貴族を煽る…か」
ラーズ王家は民には慕われてるが王権は弱く…国王が病死した今権力や利権を巡って貴族達の争いが始まってるせいで早期収取の為姫は急いで王位の儀をする事になった。
「姫の死を理由し盟約に基づき出兵…という形なら周辺諸国も文句言えないでしょう」
「うむ!名案だ!其方に任せよう!」
「はっ!必ずや成功させて見せましょう」
神と国同士の謀略に巻き込まれるハルト
その後…創造の女神の神殿から神殿騎士200人が貿易商人団と護衛の傭兵に偽装してラーズ王国に向かって出発した
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「わー凄い景色!」
広い草原と森や川…日本には見れない壮大な大自然だった。
僕は馬に乗った事がない為依頼主と馬車の中で護衛することになった。
「ふふふ…ハルト様はこのあたりは初めてですか?」
「はい!いつも暗いイビルゲートにこもってるので…」
そう言えばナーズラ村から出たのはクイル兄さん達の依頼でしか出てない!
家の引き篭もりから村の引き篭もりに変わっただけか…聖都に着いたら観光でもしよう…
「お若いのに…凄いです…怖くありませんか?」
「最初は怖かったですが…もう慣れてしまいました」
そう!今は僕指名の依頼も増えてる程、ちょっと名が売れてる冒険者になってる。
「ハルト!この先休憩出来る場所があるからそこで馬を休ませる」
外からクイル兄が休憩すると知らせて来た。
「分かった!クイル兄さん」
早朝からナズーラ村を出て昼まで休まず走ったが、このペースでも聖都まで着くには5日ほどかかると聞く。
先に安全を確保しに行ったネイビー姉とマリーヌが戻って来て異常が無いと報告を聞いてから休憩と食事の支度を始めた。
依頼主の護衛は12人で僕達以外は依頼主の家来と紹介された…何故か全員女性だった。
「馬達が大分疲れてる…しばらく動けないです」
「そうですか…仕方ないですね。私達も休憩するとしましょう」
「夜には次の国境都市まで着きたいですね…」
「ええ…マリーヌ皆さんに休憩を…」
「はっ!全員!休憩!あと食事とする!」
全員速やかに依頼主の周りに座り休憩に入った。
その節度ある動きはかなり訓練された軍人の動きだった。
へぇ!お姉さん達、凄い!
っと感心しながら食事の支度をするが…その後ろで何故かクイル兄とネイビー姉が空き皿を持って突っ立てる。
「………ハルトシェフ…今日のメニューは?」
来たか…食いしん坊達。
「うん?今日は軽くシチューと朝一焼いて持ってきたミルク千切パンとバターロールパンだよ♪♪」
「…ハルト…俺はお前を弟だと思ってる…」
「わかってるよ!多めに作ってるし、パンも沢山あるから」
「私達は可愛い弟が出来て舌と胃袋が至福だよ!えへっ!」
「……はいはい」
味にうるさい僕はこの世界の食事にかなり不満だった…この世界は料理文化はまだあまり栄えてない。
味付けは主に塩で素材の味を組み合わせた淡白な味……正直、美味しくない。
美味しくて超美味しくて!舌がとろけそうな化学調味料のお味に慣れている僕には耐え切れなかった!…マックストルネードバーガーが食べたい…。
だから時間が有れば色々な材料試して組み合わせてたり、凄く研究した。こんなに勉強したのは人生の中初めてだった!
成果はあって、数々の調味料を作り、元の世界の知識で様々な料理を作って自炊した。
それで、クイル兄達は遠出の依頼がある時は必ず僕に声をかけてる理由はこの料理が目的だった。
「出来たよ…」
「ほぉ!いい匂いだ、頂きます!うまっ!」
「何!このパンなんでこんなに柔らかいの?ふいひいぃ…むぅぃく!(美味しい…もう一個)」
ネイビー姉は口周りが破裂しそう、リス見たい。
「……飲み込んでから喋れよ」
この世界のパン味はなくパサパサだった…
携帯食のパンは言われるまでもなく硬く不味い…そのパンを食べてる護衛達…どんな味覚してるか…不思議だ。
自分達だけ料理を食べるには心苦しく皆んなにも配ろうとしたが…護衛達は休憩時も武器を手離さない程厳重だったので話しかけ辛かった。
仕方ない…怖がってた村の姉さん達の対策に覚えたこの技…この奥義!今披露しよ!可愛く可愛く…よし!
姉キラーモード発動!激カワオーラ全開!
「お姉ちゃん達…僕、頑張って作ったんだ~この料理食べてくれる?」
もじもじしながら上目遣いをしてみた。
「ああ!全部寄越せ!!食べてやる!」
クイル兄とネイビー姉が抱きついて料理を取ろうとした。
なので…軽く蹴り飛ばしてやった。
彼女達も僕の仕草に心が緩んで嬉しそうに受け取ろうしたが一瞬躊躇して依頼主を見た。
依頼主が笑顔で頷くと受け取ってくれた。
「なにこれ!!美味しい!」
匂いに釣られて皆んな集まって来た。
「不思議な味!!まろやか!手がとまらない!」
「これ本当にパンなの?柔らかく食べやすい」
みんな喜んで食べてくれてだ。
依頼主のお姉さんとマリーヌにも持って行った。
「マリーヌさん達もどうですか?」
「毒は……入ってないようだな…」
ほぉーー!言ってくれるね♪
「バブ~バブ~♪♪」
「ひぃぃぃ!!」
マリーヌの細胞一つ一つは僕に対して恐怖を刻まれたようだった。
「いい匂い…頂いてもよろしいでしょうか?」
依頼主も食べてくれた。
「とても美味しいです…このシチューって料理も美味しいですが、こんなに柔らかくほんのり甘いパン…食べた事ありません…」
依頼主もシチューとパンに夢中になった。
「まだまだあるから沢山食べて!」
皆んな喜んで食べてくれたお陰でシチューとパンは完食!後ろで猿(自称兄)とリス(自称姉)がウキーウキー、グイーグイ、エサのねだりでうるさかった。
馬達も体力を取り戻し元気になったのでまた出発する。
日が暮れる前にリーズ王国国境都市ヒューデンに着いた。
「よし!補給担当は商会に、残りは警備に当たれ!」
「はっ!」
「今日は順調だな…マリーヌ」
「何も無ければそれが一番いい…」
「だな…俺達はどうする?」
「ここは衛兵も多く治安もいい…今は我々だけで大丈夫だ…補給済ませて休んから夜に護衛と警備の交代を頼みたい」
「わかった」
僕とクイル兄達も街に補給の為に市場に向かった。
「弟よ…ここはいい肉が多いな」
「……だね」
ちっ!明日は肉料理か…仕込み大変だな。
「弟君…女性は甘いものも必要よ…」
「うん…皆んな女性だしね…」
ああ…面倒だ!簡単なロールケーキにでも作ろう。
「あとこの先から3日ほど野営が続く…」
「……保存食も用意しなきゃ!」
…ちょっと待って!何で貴方は何も買わないの?まさか全部僕に作らせるつもり?
クイル兄とネイビー姉の回りくどい欲望に塗れた要望が相次ぎ…。
買い物が終わって仕込みや調理で交代時間までかかって一睡も出来なかった。