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10話 その2

修理しに持って行ってもボロボロになり過ぎて無理そうだ…新しく作って貰おうか…クッソ!お気に入りなのに!ムカつく!腹立っ!

「換金、お願いします!」

「ん?なっ…こんな子供もいるとは?」

あ?子供?…自慢ではないが僕は器がかなり小さい!それに今は機嫌が悪い!

だからちょっとイタズラすると決めた。

「なぁに?お姉ちゃんー依頼に来たのぉ?バブ~バブ~」

子供と言われたので子供の真似をして見た…やはり僕はチキンだ。

「ああ…クイルを待ってる」

「あやや!クイル兄さんの知り合いなの?バブ~バブ~」

「ああ…悪かったから、それやめろ!」

「うん!きゃっーほぅ♪バブバブ」

「…むっ!バブって…それは子供じゃなくて赤ちゃんだ!」

あっ?そうだったね…ナイスツッコミ!

クイル兄さんは相棒ネイビーと珍しく二人のみのパーティーでかなり腕が立つ上級者冒険者だ。

たまに僕を誘って高難易度の依頼を何度か一緒にやった。

剣術は中々の者で貴族の剣術指南役に何度も頼まれる程の達人だが全部断った…堅苦しいのは嫌いらしい。

たまに僕に剣術の稽古をつけてくれたりして今はすごく仲良しになった。

「ようー!ハルト!帰って来たか!」

「クイル兄さん、お客さんだよ♪バブ~バブ~」

「…頭…大丈夫か?ハルト?」

……貴方のお客様のせいでイラついてます。

「元気そうだな クイル…」

「お前!……4年ぶりだな…」

クイル兄さんの知り合いか?

おじさんとネイビーが地下から出て来た。

「はぁ~やっと手入れ終わったわ…おーい!クイル?」

「ネイビーも……久しぶり」

「マリーヌ……」

何かありそうな妙な雰囲気の三人。

なんか、居心地悪くてササっと退散しようとした。

「坊主…そこに座れ」

「はぃ…」

宿に戻ろうとしたがおじさんに止められた…おじさんには逆らえないし、頭が上がらない。

「うむ、彼女からの依頼だ!聖都エデールまで護衛任務、依頼料は金貨200枚、必要経費まで負担するらしい…やるか?」

へぇ!羽振りがいいね…まぁ僕には関係ないけど…。

「ん?この時期に聖都の護衛か……ネイビー…いいか?」

「……報酬もいいし…断る理由はないね」

うーん?この三人…もしかして?三角関数?

「ありがとう、クイル、ネイビー…あと一人は?」

「ああ…この坊主だ」

えっ?何故そうなる?

おじさんは僕を荷物のように持ち上げられてマリーヌの前に出された。

「正気か?子供だぞ…」

そうだ!僕は子供!護衛をして貰いたい子供だ!

「僕!子供……護衛難しいバブ~バブ~」

「だから!それやめろってんの!!」

ふーん、何があっても貫く!

何か厄介な予感がプンプンして乗る気にならなかった。

「ハルトなら問題ないか…」

「だね…それ以上の人は居ないしね」

あれぇ?何か勝手に進んでる?

「あの?僕には拒否権ないんですか?」

「無いね、俺指名だ!お前も護衛任務もそろそろ経験した方がいいだろ?クイル達も一緒だしな、丁度いい」

はぁ…おじさんの指名は拒否出来ない!色々迷惑かけたからだ。

「……分かりましたよ!!イリヤもリリヤも依頼でしばらく居ないし…」

「マリーヌ…」

「如何なさいました?」

マリーヌの言葉遣いで察するにフードを被ったもう一人…この人が護衛対象のようだ。

「お嬢様は危険な任務を…このような少年に任せるのは気が重いと…私も同じだ」

お嬢さん!行け行け!押し通せ!

「大丈夫だ、こいつは化け物だ」

「今何つった?筋肉ダルマ!!ゴホン…もはや人間扱いもして下さらないですか?そうですか…クイル兄さん…」

抗議する僕をさらっと無視した二人…だが、まだマリーヌと依頼主は納得しないようだった。

「クイル、君を指名した意味分かるよね…」

「ああ…」

やばい依頼か?やりたくないー!

「分かった、だが私とお嬢様が納得出来るように実力を見て貰う!」

「ハルト、悪いが彼女に付き合ってくれるか?」

はぁー、何故こうなる…でも丁度いい、お気に入りを失ったこの憂鬱な気分、ぶっ放すか!

「……お願いだから手加減しろよ…」

「僕、子供だから手加減?ワカラナイ♪♪」

「おいおい……」

僕とマリーヌはギルド練武場にいった。

クイルとネイビーは不安そうな表情になった。

「全力で来い!世の厳しさを教えてあげよう」

あら?威勢がいいお姉さんた。

「いいの?下手したら死ぬよ?」

「くっ!!…ガキが…少し出来るようになったからと自惚れるな!」

マリーヌは剣を抜いて瞬速で先手を打って来た。

.
.

「な…お嬢…止めなくていいか?」

「マリーヌに任せてあります…」

「そういう意味じゃないんだけどね…クイル」

「…ああ……やっぱ止めに行ったほうがいいかもな…あいつ何か機嫌悪そうだったし…」

その時だった…とっかーーーん!!と爆音と共にギルド内部がが揺れた。

その衝撃で練武場のドアが壊れた隙間から二人の声が聞こえた。

「あーれぇ?避けたね…やるっ!」

「ちょ…ちょ…ちょっとまっ!」

「バブ~バブ~♪ほいっさ」

ガーーン!

またギルドが揺れた。

「いやいや…きゃーっ!!」

「きゃっーーほぅ♪♪うりゃー」

「くっはぁぁ!!………」

何か激しく当った音がした。

「はぁはぁーお姉ちゃん♪訴えたりしないよな?♪誰にも言うなよ♪♪うひひひ」

「や…やめ………」

何か叩きつける音がしてしばらくマリーヌの声も衝撃音も意味不明なやり取りの声も聞こえ無くなった。

…………………ちーん

「遅かったか……」

「たね……」

「?????」

練武場から出た僕はマリーヌを首辺りを掴み引き摺り連れて来た。

「終わったよ…クイル兄さん♪♪♪」

うーーん!スッキリしたー♪ちょっとやり過ぎだ気がするが…舐められるよりいいか…。

「うん……こりゃ…回復薬大量にいるね」

「きゃーーー!!マリーヌ!!!!!」

手足が折られてお嫁に行けないように顔になったマリーヌ…

これで三人の護衛依頼は決まった。

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