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8話 その2

先行した冒険者がほぼ魔物を片付けたせいで探索は順調に進んだ。

一階は二階まで直線ルートだった魔物も出て来なかったので二階に進んだ。

二階からかなり広くなり、多少複雑にもなって来た。

「キー?」

ゴブリン四体を発見した。

当たり前だが…攻撃して来た。

ひぃ…いきなり4対1かよ…。

同時に襲い掛かった3体にびびった僕はツバァイハンダーを大きく振り回すと真っ二つなった。

一振りで3キル!続けて殲滅。

よ…弱い、まぁ…ゲームでもゴブリンは大体一撃だったよな?そう、魔核回収しなくちゃ!

魔核は魔物の心臓と呼ばれるもので、魔導具を動かす燃料みたいな物らしく、様々な用度に使われると聞いた。

それを取られた魔物はしばらくして砂になって消えるらしい。

なんか、グロテスクだな…。

ゴブリンの魔核を回収して更に進んだ。

何体かのゴブリンを退治して少し自信が付いて次の階に降りた。

そして3、4階層の探索まで済まし5階層に降りた。

凄く順調だった。

4階までのゴブリン祭りは終わりコボルトや図体が大きいオークも出てきた。

コボルトの遠距離攻撃は本当にうっとしい!当たると痛いだろうな…うううう。

オークを倒してコボルト達に全力で走って切り倒した。

ちょっとムカついて何回か刺してしまった。

何だかんだ危ない目にあったがまだまだ無傷で余裕があった。

もうちょっと進んで見るか?いや、おじさんとの約束だ。

律儀な僕は今日はここで腕慣らしをしようと決めた。

時間が経過してかなりの数が湧いて来たが僕には敵わず魔核を取られて砂になった。

あと…この魔核をえぐり取る事も麻痺してきた。

鼻歌でそう…小説に出る殺人鬼みたいに…ククク、お前の心臓は何色だぁ?イヒヒヒって感じかな?

「キャーー!!お姉ちゃん!!誰か!」

ちょっと離れた場所から女の子の悲鳴が鳴り響いた。

まさか…何かトラブルか?

その悲鳴が聞こえた方向に走った。

二人の女性冒険者にオーク6体に囲まれていたが、一人は既に負傷し気を失っていた。

いかん!まず、彼女達の安全確保だ。

チキンな僕だったが…何故か彼女達の危機に体が勝手に動いた。

猛突進し大振りてオーク二匹を倒して彼女達までの道を開けた。

その隙に突進して二人の安全を確保した。

「大丈夫ですか?ここは僕に任せて」

格好良く言って見たが…よく見るとオークの顔は怖かった。

でも人の命が関わっている…怖じけて居られなかった。

「は、はい!」

襲い掛かる四体を剣で胴体切り倒し、もう一体を足で蹴り飛ばした。

それからまた剣で首を切り落として最後をシールドガントレットで顔面を殴り潰した。

見事な4コンボ4キルだった。

えっ?僕って、つよっ!

なんだか行けそうな気がして来た。

「大丈夫ですか?」

「は、は、はい!でも、お姉ちゃんが…うう」

肩にナイフが刺さって頭からは流血していた姉冒険者は酷い怪我に見えた。

「お願いします…姉を助けて下さい!」

必死に姉の助けを求める彼女の泣き顔はつい先の自分のようで胸が苦しくなった。

「わかりました!出来るだけの事はします!」

まず肩のナイフは深くまで刺さってなかだったので抜いて消毒した。

マントを切り包帯にして止血したまで見事な応急処置!引き篭もりの暇つぶしで医学の勉強した甲斐があった。

だが、頭の怪我はどうすれば良いか分からない。

脳震盪?…ひょっとして内出血?どう治療す?どうすればいいか分からん!

焦ったが僕はおじさんの回復薬を思い出した。

しかし、回復薬を飲ませてようとしても意識が無かったため飲ませなかった。

どうしよう?このままじゃ飲ませない…あっ!こんな時は、口移し!

ヘタレで童貞の僕としては凄い発想だった。

これは医療行為、医療行為だ!免許は無いが…医療行為!

そう自己合理化して、姉冒険者の頭を上に向け喉が通るようにして回復薬を口移しした。

ファーストキスまで捧げたんだぁぁ!頼む!効いてくれ。

「う……うん」

目が覚めて傷も治り始めた。さすが高価の回復薬だ。

「お姉ちゃん!!良かったよ本当に…うわぁん」

「リリヤ……心配かけてごめん」

「ううん…私のせいで…ごめんお姉ちゃん」

「リリヤ…この方は?」

「私達を助けて下さった方だよ」

「助けて頂いてありがとうございます…私イリヤ…妹のリリヤです」

「助けて頂き有難う御座います」

体が痒くなる程、凄く丁寧な挨拶だった。

見た目だけは勇者に等しい眩しい格好に上級冒険者と勘違いしてるようだ。

やはり格好いいは正義なり!!

「僕は 志村晴人です」

「シムラハルト様ですね…助けて頂いたお礼がしたいですが、今手持ちがなく…」

命を救われた挙句、高い回復薬まで飲んだイリヤはお返し出来る物がなく、困った表情だった。

「お礼なんていいてすよ!!気にしないで、とにかく二人が無事で良かったよ!」

彼女達に何か要求出来るはずがない、昨日の自分のように何の防具もない、ボロボロの槍と弓でイビルゲートに潜ってる姿…そんな女の子に何か要求する程僕は心は落魄れてない。

「ほ、本当に、有難う御座います」

何も求めず怪我が治るまで休憩させて護衛をする僕に少し警戒を解いてくれた。

彼女達は双子で同じく冒険者見習いだった。

顔はそっくりだが姉は活発で気が強そうに見えるが、妹はおっとりして清純な感じだった。

ハルトと同じく街周辺の依頼が無くなりここに潜る事になったと話した。

「しかし…女の子二人で危ないんじゃ…」

「……ですね…でも、お金が必要ですから…」

それは痛いほど分かる!たけど…

「リリヤ、行こう…時間がないわ」

「お姉ちゃん!まだダメだよ!」

「大丈夫…まだやれるわ」

何か事情がありそうな二人…それに傷も完全に治って無い彼女達を放って置けなかった。

「待って!提案があるけど…聞いてくれる?」

「提案ですか?」

「僕とパーティー組んでここ潜らない?」

「お姉ちゃん、シムラハルトさん凄く強いですよ!オーク6体を一瞬で倒したよ!」

もう…褒め過ぎ…照れるよー♪ちょっとビビったけど…。

「………私達と組んでもシムラハルトさんに何のメリットが無いと思いますが?」

むっ!そう来たか…ちぇ!まだ、警戒してる、当たり前だけど…ちょっと傷つくわ!

僕も今日ダンジョンは初めて重装備のせいで荷物はあまり持てないと言い訳した…この鎧全く重さなど無いブリキだけどな…。

また三人だともしもの時、助け合うことが出来ると彼女達を説得した。

「うそ!同じ見習いだったの?なのに何なのその装備!それに高価な回復薬も!」

やっぱこの見た目だけは神話級の装備に勘違いしたな…

「うん?今日ギルドから見習い限定で買った装備だよ?あと薬はギルドのおじさんがらもらい物だよ」

「……私達にはくれなかったのに」

ん?僕、余計な事言っちゃったかな?

「それに、その装備…初心者限定?まさか、あの子のあれを買ったの?」

双子もその鍛冶屋を知ってるようだ。

「うん!そうだよー!凄い腕だったよ♪格好いいでしょ♪」

「頭、花畑なの?あんた…」

僕の喜ぶ姿に何故か呆れた目で見るイリヤ。

「お姉ちゃん!失礼だよ!それに、私は賛成です!」

「まぁ、酷い事言って悪かったよ…私もいいわよ!」

おおーー祝!脱ボッチー♪イェーイー♪

「決まったな……んじゃ分配は?」

しっかり物の姉イリヤ

「三人山分けでいいよ!」

記念すべきの日!もう全部あげたいぐらいだよ?…でも、僕もお金が必要です。

「……本当に?後でやっぱ無しとか言わないでよ!!」

疑い深いな…同然だけど…また傷付く

「それ以上、疑われたら僕、泣きますよ…」

更に傷付く僕の泣きそうな顔に笑ってしまう双子だった。

「ふふふ、ごめんなさい!分かったよ」

「では、宜しくお願いします、シムラハルトさん」

「んじゃここを片付けて、今日は出ましょう」

今日は切り上げる…まずイリヤの負傷とパーティーを組んだばかりでお互いを知らない。

「お姉ちゃん…シムラハルトさんの言う通りにしようね?まだ本調子じゃないし…」

「わかったわ…」

「明日は今日の分まで荒稼ぎしますから!」

「うん……」

「お姉ちゃん……」

何か焦るイリヤは仕方なく帰る感じで渋々僕の後ろに付いて来た。

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