8話 可愛い程怖いのは?はい!女の子です!
僕は朝早く冒険者ギルド内の地下にある鍛冶屋に来て武具と防具セットを買いに来た。
女の子の鍛冶屋、細い体の割に引き締まった筋肉、健康的な感じだ。
「初心者限定の装備を買いたいですが」
「ああ…どんな防具と武器がお好み?」
鍛冶屋の質問に悩む事は無い…既に決まってるから僕は即答した。
「性能無視!」
「とにかく!ピカピカ!」
「格好いいやつで!」
「……」
僕は性能より、とにかく見た目から気合いを入れるタイプだ。
ゲームでも何日かけて手に入れた伝説の武器や鎧も格好悪かったら即捨てる程ビジュアル重視派!それだけは絶対譲れない。
そう!格好いいは正義である!これが僕のアイデンティティだ。
「……わ、分かったわ」
しかしだ、初心者装備にそんなもの期待出来る訳がない、背の腹は変えられない…はあ…我慢しよう…。
鍛冶屋は僕の顔をじっと見つめてから置き場の深い場所に置いてある装備一式を持って来た。
「ど、どう?私の自信作よ…」
「こ、これは!!!!」
僕は自分の目を疑った。
ドラゴンの模様が入ったピカピカ格好いいフルプレートだった。
格好良さ過ぎる!しかし細かく刻んで入れたドラゴンの模様が何と素晴らしい…ってこんなのが本当に初心者装備?間違えてない?
「どう?見た目なら神話の防具にも劣らないわよ……防御力は無いに等しいですが!」
…………うん、なるほど、
しかし!格好いい!!
「わーう!!いい感じですよ!丈夫さと無縁なこの軽さ!!防御0のフルプレート!その発想が素晴らしいー♪」
僕はその見た目だけはいい鎧を迷わず買うと決めた。
「イヤーフ♪格好いい!」
「えっ?…ほう…」
鎧を着る新鮮な経験に胸が躍る僕にに次の装備を出す鍛冶屋。
「そして…自慢の一品…ツヴァイハンダー!」
細かくデモティックのような文字が埋め込まれたツヴァイハンダーソード。
文字が悪くならないようにとにかく頑丈に作ってしまい重過ぎて振るう事すら難しくなって、軽量の為に長さは通常より少し短くしたと説明してくれた。
だが、それでもそれを置いたテーブルが潰れる程だった。
だが!格好いい!
「おお!!太くて大きいし…とにかく格好いいです!」
意外と軽かった…先のテーブルって痛んでたかな?
それを手にしてブンブン振り回した。
「えっ?凄い馬鹿力!」
ん?今何が聞き捨てならない事言ってたような…確かに僕はそんな力はない…普通の人より力は劣る…だけどこんな大剣を軽々しく振り回せるのは可笑しい…
レイラさんが言ってた加護?それの影響か?
悩む僕にまだ新たな装備を出した。
「最後の一品…自慢のシールドガントレット!これ作るのに苦労したわ」
小さい盾周りは同じくデモティックような文字が刻まれ、黒龍の模様が入っている。
それに盾と一体化になっているグローブの指先は黒く鋭い爪が付いていた。
何と!厨二病くっすぐるデザイン!格好いいが羽ばたく!止まらない!
「……け、傑作です!このシールドガントレット?一番気に入りました!使えるかどうか分かりませんが、とにかく格好いい!全部ください!!」
全て即決した。
「…私の作品をこんなに喜んでくれてるなんて、ありがとうシムラハルトさん!私ももっと頑張るよ!ビジュアルの同士よ!!」
「互いに頑張ろう!同士よ!」
僕は鍛冶屋は熱い友情の握手うを交わした。
それで銀貨7枚で安く購入出来た。
同じ思考の同士に会えて嬉しいくて割り引きしてくれたようだ。
でも、耐久性が弱い…無いに等しいから毎回修繕に費用が相当かかるらしい…。
それでもいい!格好いいは正義なり。
とにかく装備を揃えた僕は依頼を貰う為受付に戻った。
「……よう坊主!見違えるよ…うだね…」
おじさんは何故か困ったような表情だった。
「えへへ、そうですか?」
「うん……気合い入ったところ悪いが村周辺の依頼は今受け付けてないんでね…」
「昨日のアレですか?」
「ああ…森周辺隅々調べても足跡も無くてな、飛行系の魔物じゃ無いかとね」
「空飛ぶ魔物……厄介そうですね…」
「その通りだが、飛行系魔物は自分の縄張りに帰るから刺激しなければ問題ない」
なるほど、それで依頼を受け付けしないか
「すまんな…坊主」
謝るおじさんは何故か安心する表情だ。
「いいえ!実はイビルゲートに行って見ようと前から計画してたので…丁度良かったです」
「な、…そう来たか!」
ん?なに?どいう意味だ?
「一人でか?」
「はい…」
この世界に来たばかりです…当たり前でしょ?ああ…この異世界まで来てボッチ人生を続けるのはいやだな…
「絶対5階層までにしな…」
おじさんは止めなかった…5階層なら比較的に安全で余程の事が無ければ逃げられると説明してくれた。
「分かりました!ありがとう、おじさん」
「ふっ…これ持っていけ!」
「これは?」
「回復薬だお詫びに持ってけ…」
「いいですか?ありがとうございます!」
「死ぬなよ…」
回復薬は凄く高価で見習いには手が届かないシロモノ、僕の事が心配な目で見ている、見た目によらずすごくいい人だ。
おじさんにお辞儀をして、僕はイビルゲートに向かった。
大きい洞窟のような所に頑丈な鉄の門が付けられている。
これがイビルゲート!ダンジョンか!
冒険者たちがゾロゾロ入ったが、僕は人が居なくなるまで動かなかった。
5階層までだ…一緒に入ったら邪魔物にしか成りかねない。
冒険者が居なくなってから僕も入り口に足を踏み入れた。
「よぉしゃ!初のダンジョンだぁー!」
興奮し過ぎたあまり…叫び出した。
すごく声が響いて恥ずかしくなった。