7話 一人暮らしは最初はワクワク…でも大変さ…。
日が暮れ始まってから人間の村に着いた二人。
ナーズラ村…レガリア大陸のラーズという小国の辺境村、人口4500人位で都市と言える程、賑わう活気溢れる場所だった。
村の真ん中にイビルゲート(ダンジョン)があり周辺に魔物が多いせいで冒険者も多く、素材を求めて商人の訪問も多い。
危ないが、皆お金の為に命かけでまでこの村に来てる…それほど収入がいいらしい。
宿の食堂で座ってるハルトとレイラ。
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「…食べないのか?」
「あまり、食欲がないです」
「だな…先まで色んな事があったからな、気持ちの整理も必要だろ…」
「……」
器を首に掛けてじっと見た…本当にこの中にルル姉が眠っていると信じ難い。
「失くしたら殺すぞ…」
「……はい…」
…まあ、ルル姉に忠実なのは分かった…でも、この人…こえぇー!先睨みつけられてたし。
「……今までの事を話して貰おう…」
「はい…」
僕はルル姉との出会いから元の世界から旅の事とこっちの世界に来る時、雷獣に遭遇した事まですべて話した。
「ん?…雷獣の雷を浴びたと?」
「…はい」
「…ハルトやら…何故生きている?」
僕に聞かれても分かる訳ない!
「雷獣の雷を浴びたら、私達使徒すらただで済まんぞ…」
「僕もわかりません…何か歌が…そう!ルル姉の歌が聞こえて目が覚めました…」
「あ?歌?歌ね…………………なんだとぉ!!」
歌の話に驚くレイラは大声で叫んだ…周りの視線が痛い…この人声大きいな…。
「ふむふむ…失礼した…」
「歌がどうかしたんですか?」
「ちょっと部屋に行こう…調べる必要がありそうだ」
「…はい?」
僕はレイラに素直に従った。
この世界の事は無知で知り合いもいない、彼女が唯一頼れる味方だからだ。
「そこに座れ…」
何か前もあったようなシチュエーション
「じゃ、邪眼を出すんですか?」
あのイヤーな感覚、思い出すだけで鳥肌が立つ。
「ん?そのような大技…使徒の私には出来る訳がない!」
違うの?よっしゃー♪
「大神の中でも使えるのは主神や主様とあと三つの神位だ」
そんなに凄いものか…ルル姉って…凄い神様だったな。
そして、レイラさんは僕の頭に手を置いた。
「さて…見極み(鑑定)をするから…受け入れろ」
「…?意味が分かりませんか…」
「変なものが入って来るような感覚を抵抗せずに自然にいれば良い」
「はい…」
全身を触るような何かが体の中を回る感覚に襲われる…痛くはないようで安心して受け入れた。
そして、僕の前に光る色んな文字が出て来た…勿論、読めない。
それを読んだレイラはぶるぶる震えていた。
「こ、これは…一体何ですか?何を考えてますか?やり過ぎですよ!ウギャー!」
ん?何か言ってますが…。
「あの?レイラさん…?なんと書いてあるんですか?」
「はぁ…それがな……」
レイラは急に考え込み始めてしばらくしてから口を割った。
「すまん…複雑な神の言葉だから私にもすべて読み取れない…」
「……そうですか?」
嘘だ!何が隠していると…僕は確信した。
「分かるのは君が一度死んで主様の力で生き返った事と加護を授かった程度だ」
やはり、あのルル姉歌声で生き返ったんだ。
「そうですか…では本題で…ルル姉の聖地に行く為に僕はどうすれば良いですか?」
レイラはじーと僕を見つめ続けた。
…恥ずかしいからやめて…あとその目つき怖い。
「手っ取り早い方法はある…君が出来る一番!現実的な方法だ」
「そんな方法あるんですか?教えて下さい!」
「…イビルゲートの最深部に行き核を壊す事だ」
「イビルゲート?」
「ああ…そこは元々邪神達がこの世界に侵攻する為作ったもので最深部の核が魔物を生み出す…」
「まるでダンジョンですね!」
何と!ドキドキ胸躍る話し!………でも怖いから却下!
「だんじょー?まぁそのイビルゲートから漏れて出した魔物のせいで人々の住処が侵されてる…」
「大変じゃないですか!!国の軍隊で対処出来ないですか?」
そう!そんな事は国に任せるべきです!その為に税金払ってるし…僕はまだ払ってませんが…
「中は迷路で狭い…大人数が入るには適してない…それで各国は冒険者ギルドと連携して魔物退治やダンジョン攻略を支援してるわけだ…一年何回か軍の人も派遣されてるようだが…」
「なるほど!なら安心ですね!僕そこに行かされるかなって思いました…良かった!」
何だよ…僕が行く必要無いじゃん!良かった。
「……数千年間、攻略されたイビルゲートはたった二つ…攻略に成功した彼らは…ほぼ全滅したらしい…運良く生き延びた二人が歴代勇者だったようだ」
「…………」
勇者が運良く生き延びたですか……僕、今まで無職引き篭もりでしたよ?
「賢いな…」
この人何言ってんの?死ねって言ってるもんだろ?とこが現実的だよ!
「神様がそのイビルゲートやらをぶっ壊せば早いんじゃないですか?」
そう!邪神とか言ってたからこれは神々の問題!神様に押し付けよう!
「神々が手を出せば邪神も動く…実際前代の主神様がイビルゲートを壊し回って邪神と大激戦になってだな…互いに多大なる被害がでて責任を取り主神の座を今の主神様に譲った事になった…」
OMG…終わった。
「……僕が出来る訳無いよ…」
「それ以外方法は無い!覚悟決めろや!」
この人今ちょっと笑ったよ?意地でも行かせるつもりだよ!何か嫌われている、アレは敵を見てる目だ!
「うむ、案ずるな…君は主様から授かった加護がある…」
「ルル姉の?」
「主様を信じろ…今日は遅い…早く寝て明日冒険者ギルドに行って見るが良い…」
僕には選択肢は無いみたいだ。
「分かりました…ルル姉の為に頑張ります」
「うむ…私が出来る事はこれ以上ない、というか出来ない…分かるよな?」
「はい…」
自力でてすか…どうにでもなれ!
「今日の宿屋の費用は払ってある…明日からは自分で頑張って生き抜け」
「はい、ありがとうございます…」
「イビルゲートを攻略したら迎に来る…では私はこれで失礼する…」
「色々ありがとうございました…」
レイラは窓から飛んで夜空に消えて行った。
「イビルゲートを攻略したら迎に来る…ですか…死んだらタマ取りに来る!の間違いじゃないの?死神め……」
絶望感に満ちた、でもルル姉の器を見て覚悟を決めた。
やって見るか…ダンジョン攻略
僕は明日の為ベットに入り睡眠を取る事にした。