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6話 兄弟喧嘩で世界が滅んだら爆笑だな

ルルの尋常じゃない気迫と凄まじい殺気に怯える雷獣。

「クルル…」

「ダメな主人を選んだ自分に悔いな…」

ルルが近づくほど雷獣は後ろに引いて行った。

「先の伊勢はどうした?…楽に死ぬると思うなよ…」

一瞬で懐に踏み込んだルル…その小さい拳を雷獣の頭に振り下ろし地面に叩き付けた。

ガガガガガーン!

その一撃は凄まじい衝撃で隕石が落ちたように地面が深く抉り取られてた。

血塗れに苦しそうな雷獣…それでもまだ生きていた。

「ほぅ?中々頑丈だな?弱っていると言え…私の隕石拳(メテオフィスト)を食らって生きてるとは…だが…まだ怒りが収まらないから助かる」

ルルは…厨二の素質があった…。

更にその頭をさらに握り潰し、胴体を引き千切った。

それでもまだビックビック動く雷獣の体を踏み潰した。

まだ怒りが収まらないルル。

「見ておろう?三馬鹿とまな板よ…帰ってやったぞ!ステキなプレゼントありがとうさん!」

ルルは怒りを込めて空に向かって叫んだ

「貴様等の首…必ず!ねじ切ってくれよう!!必ずだああぁぁぁ!」

彼女の怒りで突風が吹き、雷が騒つく…その目は真っ赤に光る魔獣の目のようだった。

ハルトの亡骸を抱き上げ顔をすり付けるルル。

「ごめんよハルト君…必ず守るとっ誓ったのに自分が情け無い…仕方ない、あの鬼が黙って見ぬふりする訳がないが、この子のためなら!」

ハルトの亡骸に口付けして涙と共に歌い始めた。
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全てが真っ白、暗い所から今度は眩し過ぎる!ああ、僕、やっぱり死んだかな?

何も見えない、自分の姿も見えない、あるかないすら確認出来ない。

そろにどこかで騒がしい声が微かに聞こえる…挨拶を交わすような感じだ。

やっぱりここはあの世か何かか?これから僕はどうなるんだろう?まさか!ずっとこのままとか?

どう考えても答えは出ない…死後の事なんか分かる訳がない。

ルル姉はどうなったか心配だった…無事でいて欲しい。

あー泣いてるかな?ああー!まだ、死にたくなかったのに…まだ、童貞なんだよ!チクショウ!

また何か音が聞こえた…歌だ。

悲しそうな胸が締め付けられそうな切ない歌…この歌声は良く知ってる人の声だ。

そう、ルル姉だ…。

歌を聞いた僕はパッと目を覚ました。

「うーうん…?夢でも見たか?」

「ハルト君!良かったよ!」

「ルル姉?…あれ?僕?確かにあの時?」

「もう、大丈夫だよ、大丈夫、大丈夫よ…」

僕を抱きしめて安心させるように頭を撫でてくれていた。

「ん?雷獣に体当たりして…?うわ…服ぼろぼろ…」

焼けて穴だらけの僕のお気に入りの服…夢では無かった!これ高かったんだよ…くそ!

ルル姉が指を鳴らすと焼けてボロボロになった服を一瞬で復元した。

「うわ!すけー!ルル姉!今のって魔法? 凄いよ!」

「ふふふ…であろう?これが本来の私なのだ!」

「本当に女神様だったんですね!」

「おいおい…まだ信じてなかったのかい!ん?…ここまでか…」

凄く重い気配を感じた…それに、度胸の塊のようなこのルル姉が…かなり緊張している。

「…ルル姉?」

「ハルト君…しばらく別れになる」

「何言ってるんだよ?」

「私も君と一緒に居たい、でもね…それは出来ない事だ…」

「あはは…その冗談…キツイよ」

真剣な表情で冗談じゃないと分かった。

それでルル姉に抱き着き、離さないようにした。

「あぁ……ハルト君、良く聞きなさい、この世界は命の価値があまりも軽く儚い…君が生きて行けるか心配だよ」

「何んだよ!どこでも一緒にいると約束したのにどうして…」

「これだけは女神の私でも逆らえない……あー!彼奴はまだか…遅い!遅い!ハルト君、時間がないから良く聞いて!」

理由は分からないがルル姉が何故か凄く焦ってるのはよく分かる。

その時、何処から声が聞こえて空から光が収束を始める…僕の世界ではあり得ない光景を目にした。

[[エン・エンソフ・オルエンソフーケテル・ティファレド・イェソド・マルクト]]

「な…な…無限光(アインオウルソフ)だと!クソ鬼め!頭が可笑しくなったか!」

無限光?この世の誕生の発端と語られた神話の光融合爆発?…頭可笑しい?そんなレベルじゃないよ、メチャクチャだよ、クレイジ過ぎるよ!

「500年程拘束されると思ったが…相変わらず身内に厳しいな!」

厳しい?それで片付けれる?神様って一体どんな神経してますかぁぁぁぁ!

「ハルト君!ここから出来るだけ離れろ!焼き死ぬぞ!」

「いやだ!死んでも離さない…」

「は、ハルト君……」

怖くて体の震えが止まらない、でも逃げたてどこに逃げればいいの?逃げれると思えないし…それより、こんな状況でルル姉一人にしたくなかった。

空中には無数の真っ白な光が集まって来た。

収束が重なる度に熱が上がり続けて息する事すら混乱になった。

「ルナファナリールカ様!!」

「おー!やっと来たか!我が使徒!レイラよ!」

空から天使のように白い翼をした銀色で重甲の鎧の姿の女性が音速のように飛んで来た。

彼女はその光をじっとみて冷や汗をだらだら流した。

「こ、これは…!む、む、む、無限光…!!!帰って早々に一体また!何をやらかしたのですかぁぁー!!!ムキャーー!」

今、またっと言ったよね?

パニックになった彼女の言い方から察するとルル姉は…きっと、トラブルメーカーか何かだと僕は確信した。

「おー!元気そうで何よりだ…が、時間がない!主命だ!この子を安全な場所に!奴の事だ…きっと周りに結界を張ってるはず…早急に離脱せよ!必ず守れ!早く!」

「……はっ!」

ルル姉の主命と聞きレイラは状況を飲み切ったか僕を掴み全速で離脱した。

「離してよ!ルル姉が…ルル姉!!」

「だまれ人間!主命で無ければ貴様などどうでもいい!今そこに投げ捨て戻りたいくらいだ!」

「ルル姉!!」

「暴れるな!あれくらいで…ど、ど、どどうかなるお方ではない!」

っと言ってますが心配でたまらない顔だ。
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益々大きくなる光は周辺を火の海にして岩は溶け一帯を地獄に変えた。

「むっ!そっちがそう来たら!こっちもビックバーンで相殺してくれよ!はああああ!」

全身に猛烈に力を溜めるルル。

ぽんーー♪

だが、力は集まらず分散されてしまった。

「あっ?………そうでしたね、戻ってばかりでそこまで回復してませんでしたね……ひぃーー!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぞ!バカ兄!!まじヤバイって!やめーろぉぉ!」

ピカーンっと強力に光って爆発が始まった。

「あはは………摂氏3億度…3億度だぞ!!あんた…妹殺す気か!ウギャーあっちち!!」

爆発に呑み込まれるルルは足掻き始めた。

「熱耐性最大!!神格結界最大!改変し強化!衝撃耐性最大!ええい面倒くさい!!すべての防御最大!!そして各精霊よ妾を守れ!」

ルルは何十を重ねた魔法防壁や結界、精霊まで加勢して立ち向かった。

「イヒヒ…痺れるのう!さあ来やがれ!バカ鬼め!!死んだら枕元に夜な夜な出てやる!安眠妨害しまっくてやる!!クソーー!」

しかし…どれたけの凄い防御や結界でも天地改変の超爆発には敵わなかった。

「ウーンギャーーー!!」
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全速で離脱したレイラと僕は無事に結界外まで着いた。

「凄まじい、これが無限光…」

「ルル姉ぇー!!!」

爆発した光は一つの柱のように結界に包まれ空の果てに飛んで消えた…。

「危なかった……巻き込まれたらひとたまりもない」

無限光が消えて間も無く結界が解けると焼け溶けて、何もかも消し飛んだ大地が修復された。

正に神業だった。

その光景を目の当たりにした僕はまだこれが現実か夢か疑う程だった。

そして、急ぎ戻るレイラさんと僕は痺れたカエルの足のようにビックビック痙攣するルル姉を発見した。

「た…た…え切ったぞーー!イヒヒ!」

仰向けのままぶつぶつ呟くルル姉…無事とは言えないが生きているのを確認して一安心した。

空から降りてルル姉の前に跪くレイラさん

「おお!…ご無事で何よりです!主様!」

「あっ?…貴様はこれが…無事に見えるか?」

「も、申し訳ありません…お許しを…」

「ルル姉ぇー!!」

僕はルル姉の前にまで走った…ボロボロになっている姿に涙が出てしまった。

「良し良し、もう大丈夫だ…男の子がそう易々泣くでない…本当に涙脆いのう…」

僕を優しく抱き込みささやくルル姉…。

「ん?なんですかね…この扱いの差は…」

「あ?今何か言ったか?」

「いいえ、何も…」

僕を睨みつけるレイラさんの視線が…痛い。

「いいか…ハルト君…私はバカ鬼のせいで力尽きて、眠りに付かないといけなくなった…安心せい…死ぬわけじゃない…」

普通の睡眠とは違うとすぐ気付いた。

「どれ…ぐらい?」

涙をぽとぽと落としながらルル姉の手を握った。

「賢い子じゃな、現状正確には分からない…ああ、もうダメだな…あとはレイラよ」

「はっ!」

「この子を頼んだぞ…」

「拝命!承りました」

ルル姉の体が光り姿が消えてた。

そこには一つの剣の形のペンダントが残った。

「これは…一体?」

「それは神の器…神の力が弱体した時、その器に入り精と体を癒すと聞いている…」

「…これでルル姉はもう大丈夫ですか?」

「それだけではだめだ…ルナ様の聖地の玉座の間に神の器を置かないと、回復できない…無論、人と子の君は聖地に足を踏み入れるのは出来ない…さあ、その神の器を…」

その神器を渡す事を躊躇した…中にはルルが眠っている。

それを知らない者にぽいっと渡すのに抵抗があった。

「一緒に聖地に行けないんですか?」

「その方が主様も喜ぶと思うが…」

「では!!」

「聖地に入る前に、神地の門番が君をミンチにするぞ?」

…優秀なガードマンだな、うちに毎日くる訪問セールス防止に雇いたいくらいだ。

「……中々バイオレンス的な方ですね…他の方法はないんですか?」

「主神に認められて資格を頂ければ無事に通れる」

「その資格とは?」

「数々の偉業を成し遂げ、名誉と財の頂点に立てば、謁見…ああ、その程度じゃ足らないな」

「はい、分かりました!ルル姉を頼みます」

その資格を取る為にどれ程時間がかかる?出来るかどうか分からない…いや、無理だ。

無理ゲーも程があるわ…これは、仕方ない。

それに早くルルを回復させたいと思い、器をレイラに渡す事にした。

その時、落雷が落レイラの前に叩き込まれた。

「きゃー!!」

「だ、大丈夫ですか!」

「これは一体?こ、これは!主神の勅命!」

落雷した場所には見たことない文字が書かれ
レイラはそれの前に跪いた。

「拝見いたしました、承りました…くっ!」

レイラは歯を食いしばり険しい表情をした。

嫌な予感しかしない。

「な、なんと書いてますか?」

「主様の器を君の自力で、君の手で玉座の間に届けるように!正式な手段でな…それに手助け厳禁だ!そうだ…」

予感的中…その無理ゲーに挑む事になった。

「えっ…えーーー!!」

「ついて来なさい、まず君に色々話しが聞きたい…それから君が天界に行ける方法を考えよう」

ルル姉を主と呼ぶレイラを信用していいと判断して彼女について行った。

「もう日が暮れる、近くに人族の村があるからそこで話を聞こう…」


これからルルを救う為、そして、興味半分で飛び込んだ異世界の生活が始まるハルトであった。

しおり