バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

5話 良い子は旅させろって?アナタ本気ですか?行方不明になりますよ?


旅先の目的地の一つ北海道。

大量の雪が積まれた場所で何故か一人で立っているルル。

「おー!一面真っ白!…」

ルルは雪を枝で突っついたり、モミモミして楽しげに遊んでる…何か思い浮かぶ表情だ。

「これなら…ヒヒ」

その一方…

僕は両親の葬式で世話になった夫婦の家に来ている。

挨拶と世話になった時のお礼も済ませたから帰るだけだ…迅速に逃げなきゃ!

「寒いから、ここでいいですよ! おじさん、おばさん!それじゃまた!」

「泊まっていけーーハルトぉー!」

「ハルトちゃん!!もうちょっと居てもいいじゃん!!」

「早くアレ持って来い!」

「わ、分かったわ」

アレって何?なんか不安だ。

中年夫婦はしがみ付き、離さなかった。

母の旧友で兄弟のように仲が良かったらしく、僕が小さな時から毎年会いに来てくれた。

両親の葬式と御通夜など大変世話になった。

それに、まだ、子供がいないせいか僕を息子のように思って養子になって欲しいと言われたが……拒否した。

「すみません!!こーのー先にー用事ーがー!」

「ハルトぉぉー!!おーい!まだか!」

「あなた!ロープ持って来たよ!!」

ち、ちょっと!!何する気?だからこの二人に会いたくなかった!

僕を生け捕りにしようとする夫婦から、何とか逃げてルル姉との待ち合わせ場所に走った。

この辺りだったよね?あっ!居た!

「ルル姉! お待たせ!」

「おー!早かったじゃないが!」

新年早々姉が出来ましたっと言えない、女神ですと?言えない…多分病院に連れて行かれる…。

それに、あの夫婦だけにはルル姉を会わせたくなかったのが本音だ…何されるか分からない予想不能な夫婦だ。

それで喫茶店で待つようしたが雪に興味深々だったルル姉は雪が沢山詰まった場所で待つと言い出して聞かない。

仕方なく、その母の旧友夫婦に挨拶を済まし…元気にやってると伝え出来るだけ早く戻って来た…生け捕りにされそうだったが…。

「おーー!すげー…いやいや!!危ないですよ!降りて下さい… いや待って!」

「…どっちだよ…ちょっと待て!…これで終わりだ!」

2メートル以上大きい四つの雪だるまの頭に乗って顔を描いている。

「よし!完成!我ながら傑作よ!うわあああ!!」

「ルル姉!!!」

滑り落ちるルル姉を走って体を受け止めた。

「あぶねー……間一髪…」

「すまんすまん…」

「怪我が無いからいいんですが…なんですか?これは?」

ふざけた顔に一人は男性で残りは女性みたいな形…何故か一つの雪だるまの胸辺りに[膨らみ0.5成長終了]と書いてあった。

「じゃーじゃん!!三バカと腹黒まな板じゃ!」

「さん…?まな板?……」

仲が良かった友達、いや神様かな?雪だるままで作ったぐらいだし、会いたいだろうな。

ルル姉はニッコリ笑って太い木どこかで拾ったの枝を…いや!立派な棍棒を手に取り全力で雪だるまに向けて振り回した。

「こんちチクショウが!その頭に詰まった腐った脳みそを取り出してウンコで入れ替えてやろう!うへへへ!!お前の見窄らしいペタンコのチチ更にすり減らしてそのままさらしてやる!あはははは!イヒヒヒヒー♩」

女神に有るまじき言葉…フィルタリングを要求します。

ルル姉はとても楽しいげに崩れた雪だるまを踏んだり蹴ったりした。

なるほど…とても仲が宜しくないようです。

「ふぅ〜♩しばし物を壊す事がなくってさぁーストレス溜まってたよねースッキリした!♩」

さすが…壊の神、帰ったら家にサンドバッグでも設置して置こう。

そろそろ昼時だ

「ルル姉、カニ食べに行きません?ここのカニ美味しいですよ!」

「行くぅぅ!!楽しみじゃー♩」

相変わらず食い物には目がない。

ルル姉は枝を子供みたいに枝をブンブン回しながらの僕の隣に付いて来てる

…当たったら痛そう、捨てて貰いたい。

しかし、なんだか…その枝がえらく気に入った見たい。

「あのルル姉、その凶器捨てませんか? それ持って店に入れませんよ…」

「嫌じゃ!私のムョルニル!太くて硬い…ふふふ…」

ああ、アニメ見過ぎたか…。

旅の準備と訪問先の都合で、一週間ほど時間が空いてしまい、まだ返してないアニメDVDを見て過ごした。

暇そうなルル姉も一緒に見てたが意外と興味深々で超ハマってしまった。

その結果僕達は一週間ほぼ徹夜でアニメ観賞になった。

「おー空飛ぶステーキ!」

「なに!どこたぁぁ!」

凄い反応だ…。

心を鬼にした僕はその隙に棍棒を取り上げ、川沿いに捨てた。

「あ、私のミョルニルが!!あぁあぁあぁ!」

必死に取り戻そうとするルル姉…橋から川に飛び込もうとした。

ギリギリ阻止して体を掴み引っ張って店に入った。

まさか、冬の川に飛び込もうとするとは…凄い執着だ。

「むぅ!美味しくなかったら口聞かないからな…」

そのせいか、口あたり膨らみご機嫌斜めなルル姉。

食欲魔人には美味しい焼きカニを捧げてお怒りを鎮めて頂こう。

「出来ましたよ!」

「むむ…食べづらい…」

カニ食べた事無さそう…。

「あっ!ちょっと待てて」

丁寧にハサミでカニの殻を切り食べやすくしてルル姉に渡した。

「ん?もくもく……ほぅ!はむはむはむはむ……むぅ?なにじっとしてる!はよー切らんか!」

「はいはい…」

まだ機嫌は悪いけど美味しいらしい。

「うーん♪もくもくはむはむ…」

気に召したようで、いつもの無邪気な笑顔のルルに戻る。

よぉしー!機嫌治ったな!チョロッ!

あっという間に山の盛りのカニの殻…満足したような顔でお茶を啜る。

「次はどこに行くんだ?随分あちこち行ったが…」

「ええ…最後で両親の墓参りして温泉で一泊して終わりって感じです」

葬式から一度も墓参りに行ってない。

僕のせいで事故が起きたと思い込んでたので合わせる顔がなかったからだ…でも、もう大丈夫!

「ふむふむ…そうか!旅でなんか変われた気がしたか?」

「うーん、特に変わってないですが、でも…生きているって悪くない?と思いました」

「悪くないか…上出来だ!生き物として生の執着は何かを成し遂げる為の糧になる、ハルト君一皮むけたね!」

ルル姉はニコニコして、僕の成長を喜ぶ目で見つめていた。

うーーん、何か母のような眼差し、複雑な気分だ

そして、最後の目的地の為に乗った飛行機

「うほうーー♪たかぁい!早ー♪」

「前回乗った時、ルル姉…凄かったよ」

「むぅ! 忘れた方が…身の為だぞ!」

初めて飛行機に乗ったルル姉はこんな鉄の塊が飛ぶはずがないとか、機体が揺れると落ちるーと叫び出して、周りに迷惑かけてしまった。

30分程経って上空から目的地が見えてきた。

「見えて来ましたよ!ルル姉、あそこです!……ルル姉?」

今まで見て事がない真剣な表情で外を見ていた。

「み、見つけた、原点…ははは、この気配は…」

原点?…珍しく一人でボソボソ喋ってる。

「ルル姉?」

「ハルト君あそこの場所に行く方分かるかい?」

ルル姉が指を指した場所は泊まる旅館の近い場所で、大昔からの心霊スポットで有名だ。

「はい、あそこの地理は詳しいですよ」

最近、雑誌に紹介されで面白げに来る人が増えてるのが僕としては不愉快だ。

空港から出たルル表情は益々固くて何か悩みを抱えてる表情…きっと、あの時呟いた原点の事だろうと思った。

「ルル姉?」

「ん?…ああ、大丈夫!体調が悪い訳ではない…」

「ならいいんですが…」

旅館でチェックインして温泉に入ってから墓参りに来た。

長く来てない志村家の墓には草が長く生えていた…ご先祖様に合わせる顔が無い。

「父さん、母さん…僕、元気だよ、遅くなってごめん!もう心配しなくていいよ!ルル姉のお陰で悩みもさっぱり解決してる…これから…頑張って生きて行けそう、だから安心してね」

墓を綺麗に磨きその周りの除草作業をしてるが放置し過ぎて中々片付かない…。

帰ったら業者さんに頼むとしよ…。

ルル姉も両手を合わせて両親の墓で何か話しでもしてるような様子だった。

汗を掻いて風邪引きそう…早く帰ってまた温泉に入ろう…。

「ルル姉…帰ろう…」

「うん…」

「あっ!そう、ルル姉が指差してた場所はここだよ」

「うん、分かってる…」

「…そう?」

日が落ち始まる…僕達は沈黙の中で旅館に戻った。

ルル姉は部屋に篭り、僕はまた温泉に入った。

ふぅ、疲れた!除草作業って大変だった…今後からはまめに来てやって置こう。

しかし、ルル姉…どうしたんだろ?今まで見た事ない深刻な顔して…死の前すらノリノリだったのに…原点、原点ね…。

僕はその言葉に何か引っかかって繰り返し呟きながら考えた。

まさか!それって…。

焦って温泉から出ようとするが体がフラフラして転んでしまった。

痛い!あれ?逆上せたかな?体も怠いし、力が入らない 。

でも、それより僕の推測が正しければその原点っていうのはルル姉の世界の帰り道!

焦った僕はフラつく体を何とか持たせて部屋に向かった。
.
.

ルルはお酒を飲みながら月を眺めていた。

(今なら元の世界に戻れる…だが、ハルト君と別れるのは…辛いな…)

ハルトと過ごした心地よい日々を思い出す。

(これ以上、人と関わりを持つ訳にはいかないが、でも、ああ……ハルト君…)

辛い表情で何か決断をしたようなルル。
.
.
やっと部屋に着いた僕はルル姉を見て安心した。

「ルル姉、良かった…まだ…」

なんとか部屋に着き力尽きてそのまま倒れてしまった。

何故か体が上手く動かない…。

「は、ハルト君!!」

ルル姉は全力を振り絞り僕を布団の上に置いてくれた。

その顔は普通の状態だったらきっと爆笑するに違いない。

「……ルル姉…ごめん…長風呂で逆上せた見たい…怠くて気持ち悪い」

「逆上せた?…違う…これは?」

目をじっと見て胸に手を置く。

(そんな!この症状は魔力欠損症状!!!過度にマナを作り続けた魔力に異常が起きてる!でも…そのような膨大なマナ一体どこに?)

ルル姉は自分の体を見下ろして震えて始めた。

「ま、まさか!!そうだったか…今までの不可解な出来事…全てアストラルラインによるマナ共有!」

…その言葉で全てが繋がった。

何故ルル姉が消滅しなかったか、霊体から実体の再構築…そして、今の僕の現状…。

「力が尽きた私に、その移植したアストラルラインが母体に強制的にマナを送り込む…ああ!私、なんて事を!!ごめん、ごめんなさい…ハルト君!」

涙目で謝り続けるルル姉…だが責める筋合いもない、そして何よりルル姉がそれで助かったからそれで良かった。

「そいう事だったんですか?…」

「ごめん…ハルト君!ごめんなさい…うぅぅ…」

謝り続けるルル姉の涙を拭いてあげた。

「泣かないでください、もし、ルル姉にアストラルラインを移植してもらえなかったら僕はもう死んでたかもしれませんよ?」

「しかし…私の不覚でまた、君の命を危険にさらしてしまった…」

「そんなにヤバイんですか?…」

「ああ…君が死に至るまでそのアストラルラインは私にマナを転送する…もう止める方法は私が…」

「ダメです…絶対許しませんよ…」

ルル姉の性格なら自害してもおかしくない。

続きを聞きたくない僕はルル姉の話しを折った。

「私、ルル姉が居なくなったら…生きたくありませんよ、どこでも一緒に…はぁはぁ…」

息するのも辛くなって、目の前がボヤけて来た。

「ハルト君!!しっかり!」

「他の方法はありせんか?はぁはぁ…」

正直、まだ死にたくないし、諦めてもない。

「一つだけ、方法が有るが君の…この世界の…いや…私にはそのような資格がない…」

「はぁはぁ…ルル姉の世界に行く事ですか?」

「なぜ…それを?」

「…そんな気がしただけですよ」

僕の推測は当たった。

それならいずれルル姉は居なくなる…それだけは考えたくもない、だから僕は決めた。

「僕も、ルル姉の世界に連れて下さい…」

「な、何を言ってる!だめだ!それは君の全てがなくなるんだぞ!向こうに行けば、この世界にいったすべてが消えるんだ!人々から忘れられる!存在した事すら無かった事になるんだ! 軽々しくいうでない!!」

ルル姉は怒りを怒鳴って来た。理由は分かる、分かるが僕としてはそれはどうでもいい。

「そんなの、構いませんよ…」

この気持ちに偽りなどない、時々寂しそうなルル姉の顔、きっと帰りたいだろ…それに二人が助かるならそれでいい。

それに前聞いたルル姉の世界、そのファンタジーな、ゲームの中のようなその世界に僕は憧れてた。

「な、なぜ、そこまで?」

うーーん、両親から受け継いだ思い出の家と財産、ちょっと勿体無いが…ルル姉には代え難い、ああ…そうか、僕はルル姉が好きなんだ…ならば!

「僕、ルル姉が…大好きです!全て捨てもいいです、離れたくありません…」

ヘタレのくせに良く頑張った!

そして、その一言でルル姉も迷いを振り払ったようだ。

「…ああ、私もだよ!ハルト君、ああ!行こう!二人の為に!」

ルル姉は僕を背負ってその原点に向かった。

「はぁはぁ…お、重い、だが、この私がこれしきの事でまけてたまるか!ウンギャー!」

道中…重さに耐えきれず何十回も倒れ傷だらけになっだ。

「ああー!倒れる!あわわわ!」

フラつく体は後ろに倒れ始めた。

「る、ルル姉!危な…かっ!」

後頭部に何か硬い物に打つかった感触から目の前が真っ白になった

うーん、そうだな、これは、意識を失った感じだ。
.
.

ルルは死力を尽くしてやっと原点に到着した。

「はぁはぁ……や、やっと着いた!」

微かな光る丸い発光たいがルルとハルトに近づいて来た。

「…お主ら、まだ成仏しとらんかったか?」

[私達の息子を宜しくお願いします…]

「心配症だな…分かっておる!誓って立派な男に育ってみせよ!」

[はい…信じております、頼みましたよ?]

「うむ…輪廻の巡りにまた会えるよう祈ろう…」

[元気に…頑張って…ハルトちゃん…]

ハルトの両親の魂は空を向かって飛びながら消えて行く…

「行ったか……あの着ぐるみ…本当に普段着だった!死に装束まで……すげー!」

ルルの目にははっきりと魂の姿が見えるようだ

「さって……居るであろう!門番…ガウル、ヤヌースよ!」

「はい…ここに」

黒づくめの鎧姿…顔半分仮面を付けてる不気味な男が現れた。

「……いつからこの世界に来た?」

「貴方様がここへ飛ばされてから主神の命ですぐに…」

「……貴様も長年の退屈だったであろ…亀裂の維持…大儀であった…」

「いいえ…長くはありましたが退屈ではなかったですよ」

「ん?」

「ここを通らないよう、人々を脅かしたのですが…次々来る人が増えて…それはそれは楽しい時間でしたー!!」

「ハルト君が言ってた心霊スポットの原因は…貴様だったのかい!!」

「それに神々も恐れる破壊の女神様の転ぶ姿…その必死な表情…2000年程払う価値がありました!いやはや…記録して何回みても飽きないほどでしたね…」

腹を抱えて笑うガウルヤヌース。

「見てたなら助けろや…この外道…!」

「主神の命で「手助け禁止」と厳命されておりまして…」

「ちっ…相変わらずだな…あの鬼…もういい…帰る、開けろ…」

「御意…」

「あと少しだ…ハルト君!頑張れ!」

ハルトはまだ意識が無いように見える。

「おや?その少年も連れ行かれるですか?」

「ああ…文句あるか?」

「私は構いませんが…主神は激怒するでしょうね……」

「ふん!その程度!慣れておる!」

隠された空間の亀裂が姿を現わす…その中はブラックホールようなものだった。

「到着場所は分かるか?」

「いいえ…場所はランダムです」

「ふん!だと思った…」

「良い旅を…ではお気をつけてお帰り下さい」

不気味に笑うガウルヤヌース。

「ああ……」

ルルはハルトを抱き込み空間の亀裂に飛び込んだ
.
.
「ひーー!この感じ気持ち悪ー」

ルル姉の声が聞こえて目を開けた。

光もない暗い空間にただ身を任せ流れ落ちようだった。

ルル姉の言葉通り、気持ち悪い…初めてエレベーターに乗った時の感じだ

僕の後ろから腰をしっかりと抱きしめて離れないようにしてる

その背中きら伝わる胸の感触に胸が爆発しそうだ。

実はルル姉がガウルヤヌースだったけ?喋ってる声で目が覚めてたが…そいつからヤバイ雰囲気がプンプンしてたからそのまま気絶したフリをしてた。

勿論、神霊スポットの真相も聞いた…許すまじ!私有地無断侵入で訴えてやる!

それにしてもそろそろ気絶したフリも辛くなって来た…うん、前のルル姉の気持ち良く分かる気がしたよ。

さてさて、起きるとしますか…。

「…ルル姉?」

「おーー!ハルト君、意識が戻ったかい?」

嬉しそうに僕の顔にそのスベスベで柔らかい頬をすり付けて来た。

うん、こっちに行く決心して良かったよ。

「うおー!なんですか?ここ?」

暗いが…全く見えない訳ではなく微かな光もあって姉の姿は見えた。

「ああ…時空の亀裂じゃ…」

「……なんか凄い名前ですね」

「本当はこんなのあってはならない物だが…あの三馬鹿がね…」

その時、ルル姉の後ろから何かが近づいて来るのが見えた。

ピカピカっと光る何かが…どんどん近づいて来た…本能的に危険だと感じる。

「ルルさんなんか変な光がこっち来てるですが……」

「ん?時空の亀裂に動く光?何かの異物が入り込んだ?ガウルヤヌースが守って居たからにはあり得ないが……」

ルルもその光を確認した。

「ん?あれは……雷獣?あの雷獣は…メルディア(美の女神)の使い魔!向こうから入って来たか!」

門番ガウルヤヌースの最後の言葉を思い出した。

「そういう事か…あのブス!やってくれる…奴にやられるのが早いか到着が早いか…だが!!ここでやられてたまるか!!」

襲い掛かる雷獣に僕を抱えて間一髪ギリギリ避けた。

「…守ると誓ったんだ!こんな所でくだばってたまるか!」

必死に避け続けるが雷獣の爪に引っかかって傷だらけになってるが、僕には傷一つ負わせなかった。

「ああ!ルル姉、傷が…」

「大丈夫だ!こんなの向こうに着けば一瞬で治るから!」

そう言われても…心配にならない訳ない…動物が好きな僕だが…アレは許さない!

「出口だ!亀裂の原点!やったぞ!ハルト君!」

穴が空いたような空間から光が見える。

「ルル姉!危ない!!」

出口に気を取られて雷獣がすぐ近くまで来た事に気付かなかった。

雷獣は雷を全身に纏い、突進して来た。

これは避けれないな、間に合わない……チクショウ!!!!

「しまった!原点の前に油断…えっ?ハルト君?」

「ルル姉、ごめんね」

ルル姉を守るため、襲い掛かる雷獣に体当たりした。

雷を全身浴びてしまった…めっちゃ痺れた。

「うわああああぁぁ!!」

「ハルトぉぉ!!!!」
.
.

亀裂から抜け出した二人…

「ハルト君!しっかり!…ああぁぁぁ!!」

返事はない…黒く焦げた体はビックとも動かない。

ハルトは即死してしまった。

「……ルト君、こんな事、こんな事…あってたまるかぁ!!ああああぁぁぁああ!!」

怒り狂うルル、そして亀裂から雷獣も出て来た。

しかし、先と違って今は凄く怯えてる様子でルルから離れ、隙を見て逃げようとしていた。

「ああ?貴様、私から逃げられると思うかぁぁ!」

今までのルルとまるで別人のように尋常じゃない気迫で一歩一歩、歩く度、地面が揺れ割れた。



しおり