4話 そのたゆんたゆんには男の夢と希望が詰まってる
ルルの世界…アールゥケーミュス
三大陸の一つ、レガリアの最南方に位置する神都エデール。
主神 オウーラデイファナリーディンの大神殿と彼の元に集う15の大神の大神殿が建てられてある聖地であり、どの国にも属さない完全なる中立非武装独立都市である。
神々の加護で守られてる故に軍は必要としない…侵略しようと思う愚かな国も無いのであった。
ここに住む正式な住民は神官と司祭のみだが
イビルゲートというダンジョンに潜る冒険者やそこから入手出来る素材を求めにくる商人も滞在している。
その16の大神殿の一つ、破壊を司る女神の大神殿。
「女神 ルナファナリールカ様…我々を導いて下さい…」
司祭が女神像の前で祈りを捧げている。
黒い神官服にブロンドの長い髪、落ち着いたお姉さんのような雰囲気の女性…。
「イッセリナ司祭長…おはようございます!」
「あら…ラネース司祭…おはようございます!」
「相変わらず早いですね…」
「この神都エデールは皆さん早いのですよ」
「ですが…訪ねて来る信徒もいないし…たまに来るのは怪我した極一部の亜人の冒険者ぐらいじゃないですか…」
「祈りを捧げて助けを求める者を待つのは我々の仕事です」
「分かってますが…皆んな他の神殿に行くし…」
ラネースという女司祭は不満気に頬を膨らませた。彼女は黒い羽が生えている翼人であった。
元気そうで活発な雰囲気のラネース。
「この神殿は、昔は王族や貴族から平民まで足跡が途絶えないほど栄えたました…しかし、2000年前の聖魔戦争で女神ルナファナリールカ様が亜人達を救う為4人の大神との戦いで敗れ、封印されてから、衰退しました…だが、その誇り高い意志を守るためにも、私達は頑張らないといけませんよ?」
っと説教する司祭長イッセリナ。
「分かってますよ…私もルカファナリールカ様を尊敬してますし…亜人の私が司祭になれたのはイッセリナ司祭長のお陰で、この神殿に配属されたのも私の望んだ事です……ですが!!あまりも暇過ぎますぅぅ!!」
「あら…では神殿周りの掃除を頼めますか?」
「ふっ…綺麗サッパリやっておきましたよ…」
「では…壁や…」
「壁、床、天井、屋根までピッカピカに磨きました……」
「あらあら…」
暗い雰囲気に司祭長に尋ねるラネース
「ねぇ…司祭長様…本当はもうルナファナリールカ様は…」
「それ以上言ってはなりません!!」
穏やかな顔のイッセリナが怖い顔でラネースを睨みつけた…。
「ひぃーごめんなさい…」
「ふぅ…気持ちは分かりますが…きっとルナファナリールカ様は健在です……私達は信じて祈ればきっと……さあ一緒に祈りましょ!」
「はい……」
聖魔戦争…それは
主神ファナリー歴1709年に亜人に対し差別や虐待に訴えるある人物が立ち上がる事から始った。
その名は、魔人族のレナートレイズ…亜人達の自由と人権の為に、彼等をまとめ人族の国に交渉し、様々な努力をした。
だが、上手くいかず…人族は彼らを奴隷にしてその労働力で莫大な利益を得る…それを簡単に手放す訳がない。
最後に彼女は神都で神々に助力を求めて来たが、神を崇める事がなかった亜人には、どの神々も力を貸さ無かった…。
絶望した彼女に唯一破壊の女神が彼女に亜人達を守れる為の加護を与える。
その加護を授かったレナートは群れる事も協調性もない亜人達を献身的な努力で、彼等を説得しまとめ、一国家まで勢力を拡大出来たのであった。
集結した亜人達は凄まじく、敵対する国を次々滅ぼし、3大陸の中一つマムンティアの7割を占領するまでに至る。
その後、彼女は[魔王レナート]と呼ばれるようになった。
そして、魔王レナートは亜人を救う為に加護を与えくれた破壊の女神ルナファナリールカを崇めるようにする。
それを、亜人達も喜んで受け入れた。
だが、これほど大勢力になると予想してなかった神々…その中4人の神(芸術の神、虚無の神、美の女神、創造の女神)はこの事を面白く無いと思い、これを崩そうと企みを働いた。
創造の女神を主に崇めレガリス大陸の聖王国カランディアを中心にドワーフやエルフを加え戦争が始まる。
魔王を警戒する各小国や滅びた国の王族、貴族まで団結しカランディア連盟が誕生し、魔王国と激突した。
連盟は大軍率いて侵攻したが4人の神の加護の元といえ相手は戦いに特化した破壊の加護…それに身体的に優れた亜人相手に苦戦の連続であった。
無論、魔王国も被害は甚大であった。様々な技術や文化に劣る彼等は食料問題や長引く戦争で伝染病が広がるなど深刻な状態に落ちる。
これ以上長引く訳にはいけないと判断した魔王は総力を挙げた決戦を挑む。
苦戦の日々に疲れ果てたカランティア連盟は勝ち目が無いように見えた。
だが、4人の神は禁忌中の禁忌を犯し破壊の女神を異界に封印する事に成功する。
その事に加護を失った魔王国は動揺し崩れ始め、その隙を逃さず聖王国の王子と賢者や勇者と歴戦英雄達が特攻を掛けた。
結果、魔王を打ち取る事に成功した。
しかし、疲憊した連盟は魔王国を滅ぼす事は叶わず、解散しざる負えなかった
そして、禁忌を犯した4神も主神の逆鱗に触れ各自の聖地に幽廃される事になった。
魔王国も魔王を失った亜人達は各地にバラバラになり国の領土もマムンティアの片隅の一角になってしまう。
勝者も敗者も無くあやふやに2000の時が経つ…これが聖魔戦争である。
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現在、日本…。
ルルさんが我が家に来てから四日が経った。
昨日は夜中まで一緒にゲームをやって寝るのが遅くなった。
環境適用能力が高いのか、無神経なのか…ルルさんはもう大分慣れて兄弟のように自然に生活している。
その方が女性に慣れてない僕としては助かった。
「ルルさん?朝ですよ!起きて下さい」
ノックしても呼んでも返事が無いから部屋に突入した。
起こそうと呼びかけても布団から出ないルルさん…仕方なく布団を取り上げた。
大きいウサギ一匹がベッドにしがみ付いている。
「むー!!まだ眠い…あと50年…」
「はっ?あ、あと50年って…起きたら世界が変わってますよ……僕ヨボヨボおじさんになってますよ!」
時間感覚がどんでもなく擦れている。
「うーん何時だ?」
「もう11時半です」
「もうそんな時間か、昨日寝るの遅かったからな…あと5年…」
ゼロを一つ減らす大出血サービス!それでも長い…長すぎる!!
「だめです!」
「むっ!わかったっば…」
僕の催促に渋々諦めてくれた。
「今からルルさんに必要な物を買いに行くんですが…何か欲しい物があったら言って下さい」
そろそろ店が正常営業を始めで年始初売りが始まる…それで買い物に出かけると思った。
引き篭もりなのに…ルルさんの為にだ。
人は人と出会い…変わって成長して行くか…どこかで読んだ話しが頭に浮かんでふっと笑ってしまった。
「か、か、買い物!!」
興味深々な顔で見つめてる…あの輝く瞳……連れて行けってパターンだ。
「あ、私も行く!絶対行く!!」
正解!…だが、困ったな…
「母の普段着で…いいですか?僕は構いませんが…ルルさんの服は薄過ぎるし…」
お母さんに慣れてるから僕は全く構わない。
「………何かないか探せ!今すぐ…」
お母さんには敵わないようだ。
ルルさんの為に慌ただしく母の私物を荒らす僕…
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「お買い物〜♩おっ買い物ー♩」
ルルさんは楽しそうに僕の隣を歩いて行く。
はぁ…まともな普段着もあって良かった!
ふわふわな白いロングニットワンピースに
白いニーハイソックス、黒いサンダル…少し子供ぽいコーディだ
しかし、ボンキュッボン!のルルさんが着る事で大人の魅力が漂う。
まだ思春期の僕には刺激過ぎるルルさんのナイスボディー
気にならない訳がなくチラチラ見てしまった。
「ふふーん どうじゃ?似合うかい?」
「は、はい! ど、とても…」
「そ、そうであろう!そうであろう!私は何を着ても似合うのだぁーオホホ〜♩」
褒められて嬉しいそうなルルさん。
まずルルさんの洋服を買い揃えると決めた。
試着しで僕に見せつけて反応を楽しむようだ
「んーーー胸が…キツイなこの服…」
今でも千切れそうな胸元…凄い!
パッチ!と音にボタンが凄い勢いで飛んで行く…何と凄い弾力なんだ!
「あっ!いやーん♪エッチ!」
体を反対に逸らし顔を上に向け首をトントン叩く……それを何十回か繰り返して…顔が青白くなった。
なんとか生きて買い揃えた!
ある店の前のショーウィンドーから興味深々と見つめるルルさん
おぉ…神よ!次はランゼリーショップですよ!
「ほぉ!!色々あるな!さぁー入るぞ♪ハルト君!!」
死を恐れぬ勇者になるか、生き恥を晒すヘタレになるか…
このままでは、僕の寿命は後数分だろう…
「許して下さい!勘弁して下さい!助けて下さい!」
後者を選んで土下座して許しを請う。
貧血に青白い顔……それに免じ一人で入るルルさん。
しかし、2時間たっても、中々出て来ない…
気になって死を覚悟して中に入って見た。
「なんだ?脆いのう?一体何回目だ?」
ルルさんの周りにはベルトとストラップが切れたブラジャーの山が出来ていた。
とーーても困ってる店員さん達…新年初売りから災難だな…
「あっ!このカップ、変な形になってしまったよ?」
胸の弾力にワイヤーが耐え切れなかったようだ…
何たる胸…生命の起源より不思議な神秘だ!
そして、僕は鼻血を大量に流して仰向けに倒れた。
「は、ハルト君!!!!」
あ…勇者の真似何かするんじゃなかった。
これ以上迷惑かける訳にはいかないので下着はオーダーメイドする事にした。
次は休憩を兼ね、ゲームセンターで遊ぶ…
ふふふ、僕ゲームに関しては全力だ…例え相手が五歳児たとしても、手を抜かない!
「う、上手いな…ハルト君」
僕に格闘ゲームを挑み完敗したルルさんは別のゲームの所に行った。
リズムに合わせ踏み台に足を置く音ゲーをやり始めたルルさん…しばらくして周りは男の群れに囲まれた。
ああぁ…ボイン!ボイン!たゆんたゆん!波打つ胸よ!何と!美しやら…
観ていた皆も全員涙流しそれを拭く。
終わった後皆んなは歓声の後、手を合わせて成仏しそうな至福に満ちた顔になった。
「私、そんなに凄かったかい?」
喜んでるルルさんに真実を伝える事はできない。
「はい…一生忘れられないほと刺激でしたよ……」
うむ!決して嘘を付いてない!
「シッシシ!!そうかい、そうかい!中々楽しかったぞ!」
それに喜ぶルルさん、互いにウィンウィンで宜しいではないか?
動いたせいかお腹が空いて来た。
食事をする事にしてルルさんにリクエストした。
「肉だ!お肉がいい!肉にしよ!」
なんと…女の子に有るまじき即答。
ステーキ400グラム5皿を軽く片付けるうちの女神様…中々の男前です
「ふぅ……食べた食べたー♩」
その包み隠さないルルさんが僕は好きなんだろうか…見てるだけで口がニヤけてしまう。
ルルさんを見てると何だかこれから自分自身にちゃんと向き合って行かないといけない気がした。
「ルルさん二つ程、提案があるんですが…」
「なんじゃ?言うてみよ」
「旅行をしようと思ってますが…一緒にどうですか?」
「ほう?引きこもりはもう卒業かい?」
相変わらず容赦ないツッコミ。
「なぜ急に旅行など?」
前から行こうと思ってはいたが実行出来る程気持ちの整理が出来なかった。
でも今は違う…ルルさんがいる。
ルルさんとなら自分を取り戻せるような気がした。
「まず…長く行ってない両親の墓参りと、世話になってた方々に挨拶を兼ねてです」
「良い心がけだ!反対する理由も無かろう…次の提案は?」
これが一番大事だ…よっし
「えーと、これが一番重要で…二人で同居してるには人目もあるし、旅先に宿泊する時とか家族としておけば便利かなと…」
「つまり私とハルト君…兄弟と設定し振る舞えば良いって事だな?」
「はい!私が兄で…」
「そうかいそうかい…ハルト君がお兄ちゃんか……ん?」
お兄ちゃん…生で聞けるとは!何たる甘美な響き!とろけるー♪
「ちょっと待てい!なぜハルト君が兄だ!どう考えても私が姉であろう!!」
…その通りだが、何とか折れて欲しい。
「妹が欲しかったです…!!お兄ちゃんと呼んでください!!妹がいってたら、妹がいってたら…はぁはぁ…あれや…それや…むふふ」
ああ…興奮し過ぎて言葉が上手く出ないや。
この時は土下座して頼み込みしかあるまい!
「もし、君に妹が居たら、間違いなく怖くて家出するわ…」
…決してそんな事はない!っと兄と姉の関係をかけて論議を始め2時間時…ルルさんの勝ちでこれから「ルルさん」が「ルル姉」に変更することになった。
妹…欲しいっす…空から落ちてくれないかな?